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同じ空の下で  作者: 桜油
3章
32/140

27話

こんにちは。


一気に時間が飛びますが、その間の出来事については本編完結後に番外で補足する予定です。


では、どうぞ。

『軍』加入から2年後。


宥も『軍』の任務には慣れていたが、怜たちは変わらず、戦線に出されることもなく諜報、探索、支援や一般人への対応を任されていた。今日は『国際魔術連合』への書類の提出を指示されたので、怜から燿へ連絡をとって『ソーサリータクト』で待ち合わせ、書類提出のついでに情報交換をしていた。

尚、宥は執務室にて提督の秘書のような仕事をしている。


その情報交換中の、


「小耳に挟んだ情報だが、『教会』の実験体2人が脱走したらしい」


という燿の言葉に、怜と唯笑に緊張が走った。

間違いなく、一条有希と日向紗季のことだと感じたからだ。


「……それは間違いないの?」

「勿論。毎周起こっていることだろう?」

「そうだけど……いつもより何か早くない?」


と唯笑が訝しげに聞き返したが、燿は静かに首を横に振った。


「確かに『前回』より数カ月は早い。しかし、『教会』の戦力によって時期が前後する以上、それはあまりあてにはできないだろう」

「いや、特に干渉してないから『教会』の戦力に大差ないはずだけど」

「む、そうか……『彼奴』は真白の差し金ではないのか……」

「え、何その言い草、怖ッ」


怯える仕草をする唯笑を横目に、「じゃあ燿はどう判断してるんだ?」と尋ねる怜に燿は一瞬考え込み、口を開いた。


「『教会』は自軍の戦力が不充分であればあるほどあの実験体を長く利用する。逆に自軍の戦力が充実していれば、早めに切り捨てる傾向にある。所詮、半分趣味のような実験でしかなく、自身の目的に何ら関係ない代物だからな。わざわざ実験体を利用する価値をどれだけ長く認められるかだ」

「『今回』は『前回』よりも充実している、ということか」

「その通り。『前回』は『放蕩の茶会』が極限まで弱体化させていたから切り捨てるまでだいぶ遅かったが、『今回』はむしろ幹部レベルの実力者が1人多い。その結果、数ヶ月という差になって現れたのだろう」

「幹部レベルの実力者が1人多いのか……」

「そして、幾度の周回で法則があることに気づいた。毎回、『処分される前日』に『特定の人物が手引する』ことでこの脱走は発生するようだ」

「『特定の人物』って、逃がした人物も分かっているのか」

「ああ。彼も幹部レベルの実力者だ」


なぜ『教会』にいるかわからないくらい善人だが、と燿は苦笑を浮かべた。

それなら仲間に引き入れられないだろうか、と怜が思案するも、燿はその考えは否定した。


「基本的に彼は毎回捕まるし、その脱走の影響で処分されている。『今回』は特にそういった内容は聞かないが、まあ碌な目にあってないだろう。生きてる保証はない」

「そうか……いや、せめて見つけ出して、その2人と再会させられればと思ったんだが、それすら難しいのか?」

「……否、一応可能性がないではない。毎回、夜中にこの事件は発生する。特定の人物が良心の呵責に耐えられなくなったが為だと自分は推測しているが。『今回』は、夕方から発生した」

「夕方?」

「どうも、『彼奴』……先ほども言った『前回』はいなかった実力者と直前まで話していたようで。焚き付けたのかもしれない、と噂になっている。真意は定かでないが、十中八九彼が煽ったと見て間違いないだろう」

「ちなみに、その脱走を手引した魔術師の様子はどうだったんだ?」

「……実に不可解なことだが」


と燿は眉間を抑えた。


「いつも目が死んでいるのに、その時だけはどこか目に光が灯っていたな」

「はあ?」

「それと、ある程度までは監視カメラに映っていたのだが、その後は痕跡が何も無い。いつもなら死ぬ瞬間まで映っているのだが」

「……まあ、分かった」


怜がそう言って会話を切り上げると、唯笑が「ちなみにその『彼奴』、何で私の差し金だと思ったの?」と燿に聞き、それに燿が「そりゃ、」と口を開いたところで怜の端末から通知音が鳴る。


「おっと、失礼」


怜がその端末の画面を見ると、提督から『割と真面目な相談がある。今の会談を早めに切り上げて執務室に至急集合してくれ』とのメールだった。これは重大案件だろうか。

怜が席を立ち、同じくメールを受け取ったのか訝しげにしながらも端末を操作する唯笑と共に、自分の料金だけ机に置く。「気をつけて」と手を軽くひらひら振る燿に見送られながら店を後にし、怜たちは『軍』本部へ向かう。


「何の相談なんだ?これ」

「うーん、時期的に弟くんの離脱かな?それでスケジュールに穴が開いて私達にフォロー頼みたいんじゃない?」

「ああ、確かに前、執行との交渉でそんなこと言ってたな。多分それだろうが、離脱するような原因あったか?」

「識名ちゃんの発明した機械が軍事利用されるのが毎回きっかけになってるし、『今回』も同じ理由でしょ」

「マジか。俺たちは何も利用してないと思うが」

「私達が利用しなくても『教会』が悪用しまくるでしょ。もしくは『軍』のどこぞの馬鹿かな?」

「それもそうか。『教会』の場合、誰か横流ししたのか?」

「いや……遺体から回収しただけだと思うけど」


そうやりとりしながら走っていた怜たちの背後から、「あの!!!」と大声がした。

周囲は閑散とした住宅街。もしかせずとも自分たちが呼び止められている、と2人が振り返り、目を瞠った。


白髪に緋色の瞳、右頬にバーコードが刺青されていて、若干黄ばんだ白の長袖のTシャツとズボン、裸足の少年と、同じく白髪の何もケアされている様子もなくボサボサのロングに緋色の瞳、左頬にバーコードの刺青があり、ところどころ解れた白のワンピースを身に着けている裸足の少女が、息を切らし、肩を激しく上下させていながらも互いに手を固く繋いでいた。


怜も、唯笑だって知っている。先程まで燿と話していた、『教会』から脱走してきた少年兵、一条有希と日向紗季だ。


そんな2人は、『前回』は深く人間不信だったはずだが、なぜか、今はどこか期待を孕んだ目を怜たちに向けている。


唯笑が『伝達魔術』で怜に、『嘘でしょ、早すぎる』と信じられない気持ちを吐露した。

怜は唯笑の手を握り、落ち着くように、と自身も深呼吸をしてから、2人に問いかけた。


「俺を呼んだか?」

「え、っと、貴方が、城月怜、ですよね?」

「……そうだが」


おかしい。怜は違和感に気づいた。

なぜ初対面のはずなのに、この少年ー一条有希と思われるーは怜の名前を、外見を知っているのか。

しかも、少年は更に唯笑に、「それなら、そちらの貴女が、真白唯笑、ですね?」と尋ねていた。強まる不安からか、唯笑の手を握る力が強くなるのを怜は感じながら、いつでも魔術式を展開できるように警戒しながら少年たちに問いかけた。


「……俺達に、何の用だ」

「おねがい、」


怜の言葉に食い気味に、今度は少女ー日向紗季と思われるーが答えた。


「あたしたちを、たすけて」


そう深々と頭を下げた2人に、呆気に取られる怜たちだったが、2人は続けた。


「城月怜と真白唯笑を頼るといい、って恩人から言われました」

「『教会』に追われてて。匿ってほしいの、事情なら説明するから」


と必死に縋る2人の対応に困っていると、唯笑が『伝達』で語りかけた。


『ねえ、『教会』の人が近づいてきてるし、一旦連れ帰ろ?一応その2人は敵意ないの分かったし、どんなイレギュラーが発生してるかも含めて情報収集できそうだし』

『……ああ、分かった。まったく、提督に怒られるな』


怜が2人に目で合図を送ると、2人も『教会』の存在に気づいているのか若干顔を青くしながら、必死に頷いていた。怜はよし、と『身体強化』『隠蔽』を展開し、即座に距離を取った。

色々『前回』とは変化が起きてて二人とも困惑しています。


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