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同じ空の下で  作者: 桜油
序章・1章
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プロローグ

初めましての方は初めまして、前作『弱くなってニューゲーム』を読んで頂いた方はお久しぶりです。


『弱くなってニューゲーム』という作品を数年前に投稿しましたが、

ここ数年でシリーズ全体を通して設定を多く改変しましたし、

前もっていたものよりも性能がいいPCというよりタブレットも手に入ったので

この度、正式版を投稿することにしました。


拙作をお楽しみいただけますと幸いです。


簡易版:https://ncode.syosetu.com/n2640gx/

↑簡易版のURLです。尚、設定が全然異なるので、読んでいなくても問題はほぼないです。


気がつくといつの間にか、見知らぬ部屋の中にいた。


彼の頭の中は困惑で満たされたが、なんとか平静を保つべく、視線を右往左往させて現状把握に努めた。

乱雑にものが置かれ、お世辞にも片付いているとは言えない部屋。塗装が剥がれかけた壁。隙間風が入り込んでいて、どこか薄ら寒いことや、長年使用されているお下がりのような風体の机に置かれたカレンダーから察するに、季節は初冬あたりと思われる。二段ベッドが複数置かれていて、新品に近しいランドセルが複数机に提げられているので、おそらく孤児院の低学年児童が使用する寝室であろう。

もっとも、彼本人は孤児院にいた試しなどなかったが。


そして、それらすべてを観察したときに、自身の視点の異様な低さに彼は気付いた。

彼は決して低身長などではない。至って普通の家庭で普通に育った、高校三年生男子の平均身長ほどはある青少年だったと記憶しているが、今のこの視点から考えると、どう見繕っても6から7歳程度と推測される。

先ほど季節を確認するためだけに少しだけ視線を向けたカレンダーを今度は注視する。……おかしい。最後の記憶より12年ほど前に遡っている。


彼は近くに鏡がないだろうかと部屋の少し建付けが悪い扉を開き、ギシギシと異音を立てる床などお構いなく洗面所を探す。周囲の児童が、「なんだこいつ」と奇人を見るような目で彼を見ているが、それよりも現状を確かめたかった彼はそれに意識を向けもしない。

特に時間は要さず洗面所を見つけたので鏡を見てみれば、そこには自分の幼少期そっくりな顔があった。


どうも、自分は間違いなく『逆行』というものをしてしまったらしい。

それも、顔は自分そっくりといえど、記憶とは全く異なる環境に置かれている以上、別人として、になるだろうか?


彼は最初にいた自室らしいところに戻り、自分が気がついたときに最も近くにあった机を確認する。

案外答えは早く手に入れることができた。引き出しに入っていた名札には、『じょうげつ れん』と書いてあったのだ。


それを見て、彼には心当たりがあった。


彼は『軍』という組織のエージェントであった。高校生と兼業するような形だが、割と重宝される程度には優秀であったと自負している。その上司からいつものようにテロ組織の抹殺任務が言い渡された。その任務をこなしていたところ、組織の代表だと名乗る人物から『仲間を殺すな。どうしてもというのなら、決闘を申し込む』というメッセージが届いた。承諾の意と細かい日時、場所をその送り主に返答したのだが、その送り主こそが『じょうげつ れん』……すなわち城月怜(じょうげつれん)だったのだ。


ならば、自分は『城月怜』の幼少期に憑依したのだろうか。それとも、『城月怜』と入れ替わりつつ逆行したのだろうか?


どちらなのかはわからない。城月怜の仕業かもしれないし、偶然の賜物かもしれない。一応城月怜の自我はいないだろうかと心の中で城月怜へ呼びかけてみるも反応はなく、気配すら感じない。


ならば。

彼は一旦、入れ替わった前提で考えることにした。憑依なら後でまた考えればいいだろう、と。


そうと決まれば、次にすべきは城月怜の過去の経歴の確認、現在彼、ー否、自身が置かれている状況の情報収集である。怜はそう考え、椅子に座ってノートを引き出しから取り出し、記憶の限り書き出していく。


城月怜。5歳の頃に両親を亡くす。双子の妹も『教会』に拉致され消息不明。以降、孤児院で生活をしていたが12歳の頃に孤児院を脱走。その後は、ホームレス生活をしていた魔術師や一般人、ネグレクトを受けていた児童などを集めて、魔術師に対する反抗組織『JoHN』を設立。『JoHN』の意味は『Justice of Hated Notably―明白に嫌われた正義―』。その後仲間を増やしていたが、魔術師業界から脅威と思われるテロ組織だと判断されたため、『国際魔術連合』から正式に抹殺任務が指名で降りた。その処刑人こそが自分、『高式暁(たかしききょう)』である。『JoHN』一人ひとりはそこまで脅威ではないので他の術師でも問題なかったが、厄介なことに城月怜は世界でも稀な『異常性』を保有する人物であり、その『異常性』の影響で魔術ではほぼ影響を与えられない。しかし、似たような現象が自身、高式暁の魔術で時々確認されていた。そのため、城月怜を処分するのにもっとも優勢に戦闘可能と判断され、自身が選ばれていた。


これで自分が知る情報は全てだ。怜はそう判断し、ノートを誰にも見られないように『隠蔽』の魔術で隠してから情報収集へ移行した。


とは言っても、しばらくは孤児院で生活する以上、悪目立ちをするのも不都合だ。怜は聞き込みではなく、新聞記事やニュースから情報を得ようと、右往左往して孤児院の中で少し迷いながらも、なんとかラウンジまで到着した。施設のスタッフが清掃をしていたので、邪魔にならないように避けながら新聞を手に取り、目を通す。


特にめぼしい記事はあまり見つからなかったが、一つだけ『前回』との差異……認識漏れかもしれないが、とにかく怜の認識とは異なる内容を見つけた。

どうも、孤児院に預けられたのは最近で、両親を亡くした事故から一年間は怜は失踪していたらしい。

怜の中ではすぐ、法的手続きがあったとしても数ヶ月以内で孤児院での生活を始めていた印象だったので、意外な事実であった。

消息を絶っていた原因は不明だが、今はそれを考えても結論は出ないだろう。


できる範囲での現状把握も終了し、近日中に近辺の図書館で情報媒体によるさらなる情報収集をする予定を脳内で立てた怜は、新聞を下の場所に戻して自室へと戻った。

そして再度ノートを取り出し、先程記憶の限り書き出した経歴の下に軽く今集めた情報をまとめ、その次のページに書き殴る。


6歳として違和感のない行動など不可能だろう。幸いにも孤児院に入ったばかりのようだし、施設のスタッフからの好感度も意識して大人びたこども、ギフテッドと思ってもらえるよう立ち回るべきか。

そして、もっと情報がほしい。誰がどういった意図で時間を巻き戻したのか。空白の一年は何なのか。妹が消息不明なのは変わりないが、妹の安否、『教会』が妹を拉致した理由も探るべきか。前回は標的の妹になど興味がないからと調べていなかったが、こうなるのなら調べておけばよかっただろうか。予測できるわけないが。


更に、今のところ孤児院を抜けるつもりはほぼないが、それはそれとして自衛手段はほしい。魔術で十分だろうが、個人的に城月怜が保有していた『異常性』も自衛に大いに役立てられそうだ。発動方法や具体的な効果が全くわからないまま巻き戻ったので、まずは発動できるようにならないと。

と、そこまで書きなぐったあとノートを再度隠す。

そして、怜は軽くため息をつき、ぼそりとつぶやいた。


「ああ、面倒だな」

これから毎日1話ずつ投稿していきますので、よろしくお願いします。


評価、感想もいただけるとすごく嬉しいです。


作者X:@IjiGamerR

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