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同じ空の下で  作者: 桜油
2章
28/140

24話

こんにちは。


今回は名前だけは出ていた彼の初登場です。


では、どうぞ。

宥関連での騒動から数日後。

怜、唯笑、宥の3人で改めて『軍』提督へ挨拶に行くことになった。


あの騒動の後に一旦拠点に戻って荷物を整理し、『軍』構成員の宿舎に移動したのだが、やはり『軍』というだけあって清潔で、孤児院や秘密基地どころか、怜の『前回』の実家より豪華であり、まるで一流ホテルのようだと感嘆していた怜、今までとは生活環境が違いすぎて恐縮気味だった宥とは違い、唯笑は平然と自宅の庭のように散策していた。恐らく、『前回』以前に『軍』に所属していたこともあったのだろうと怜は1人納得していた。


交渉の結果、『軍』では唯笑、怜、宥の3人は提督の直属部隊『JoHN』―『決して嫌われることのない正義《Justice of Hated Never》』として、提督から直接任務を受けて執行する部隊となるらしい。

正直平から始まると思っていた怜は破格の待遇に目を瞠っていたが、唯笑は「まあ色々情報を開示したからね」とドヤ顔していた上に、聞いてもいないが交渉の内容を自慢するように怜に聞かせていた。


「とりあえず、私の正体、目的を先に明かしたんだ。勿論疑われたけど、公表されてない、『教会』との戦争における勝敗とかの詳細、被害状況、『教会』相手の今後の作戦を当てたら信じてくれたよ。で、まだ情報隠してるし、これでも一介の魔術師として活動してたから、私や私の協力者の一部を『軍』で受け入れてくれれば、緊急時の戦力や戦略にも繋がる重要な情報の提供、刹那さんの個人的な要望に応えることもできますよって売り込んだら、幹部以上にいい感じの立場と役職くれたから、早速怜たちのとこに行くのに軍隊借りたって感じかな。まあ戦闘落ち着いてたから軍隊いらなかった説もあるけど、軍隊あったから『軍』側ってアピールにつなかったと思えば無意味でもなかったね」

「お、おう」


と怜はあまりもの勢いに引き気味だったが、唯笑が、『どこまでなら提督に話をしていいのか』という点で情報共有を兼ねての報告だと察していたので、特に止めることもなく最後まで聞いていた。『御伽学院』との交渉の件はさすがに伏せつつある程度の結果は報告済みとのことだった。


怜も『前回』何度か対面で話したことがあるため、今回宥のみが初対面となる。


「大丈夫でしょうか……」

「刹那さん、物静かだけどいい人だよ。だから緊張しなくても大丈夫!」

「いや普通緊張するんじゃないか?むしろ初手で正体話す唯笑がコミュニケーション力高すぎだろ」


とやりとりしている間に、提督の執務室の前に到着する。

宥が深呼吸しようと胸元に手を当てていたが、唯笑はそれを待つこともなく、ドアを無遠慮に開けていた。


「おいおい、宥に対して配慮なしか。というかノックぐらいしておけ……」


と怜もげんなりしながら、背に宥を隠すよう位置取り入室する。


中は怜が『前回』数度かみた執務室とそこまで大差はないので、部屋を見回すこともなく、待ち構えていた人物4人を観察する。

ちょうど報告中だったのか、怜に背を向ける形で1人の少年が立っていて、その奥に1人の男性が腰掛けている。執務机の横に事務用の机が2つ並び、2人の男女が向かい合ってパソコンとにらめっこをしている。

唯笑はその中をすいすい進み、奥の男性に、「やっほー刹那。仲間2人連れてきたよー」と友人のようなノリで話しかけては「ああ、わかった。もう少し待ってろ」と返されていた。


「……あんな無礼なことをしても怒らないなら、たしかにいい人ですね……」


と怜の後ろで深呼吸し続けていた宥が少し落ち着いた様子で独り言ちた。


「……その方は?」


立っていた少年がそう尋ねると、ああ、と男性が唯笑を指差し、唯笑は少年に向けてウインクしていた。


「まだ采和は知らなかったな。彼女は真白唯笑。直属部隊『JoHN』の1人として活動する魔術師だ。彼女のおかげで人材不足は解消できる見込みだ。お前はもう人材を探さなくていいから昨日のメカニックを教育していろ」

「……そうですか。では、そうします」


とその少年―采和と呼ばれた男は振り返り、怜たちを一瞥すると「この人たちもか」とつぶやく。「そうだよー」と唯笑の肯定に何も言わずに執務室を去っていった。


再び萎縮してしまった宥を背に、怜は考え込んでいた。


あの少年は黒守采和(くろすとわ)。提督―黒守刹那の実弟にして、『史上最悪の殺人鬼』などと恐れられるほどの実力派の魔術師。『教会』との戦争においても大活躍している少年兵。軍師としての戦績も素晴らしいと噂である。常葉綺人の元の姿でもある。噂とは裏腹に争いを好まない人格であることも、常葉との付き合いを通して怜は把握している。

そして、メカニックという言葉が出てきたあたり、識名宇海ともどうやら既に出会っているようだ、とも。

識名宇海。一般家庭の出身であり彼女も魔術師としての教養は皆無だが、『前回』彼女が有名だったのは、科学技術の面からである。

どんな機械でも作り上げる天才なのである。自律性、自我などを持つアンドロイドを彼女が開発し、数年後にはアンドロイドが普及していたほどだ。


そこまで思い返したところで怜は思考を中断し、宥の手を引いて執務机の近くまで歩を進めた。

男性が怜の方を見てわずかに目を瞠ったが、一瞬で戻り、男性はそのまま口を開いた。


「すまない、待たせたな。初めまして、俺は『軍』全権代行、俗に言う『提督』を7年前より務める、黒守刹那だ。そして、先程は俺の弟が失礼した。あいつは采和、前は前線で指揮を頼んでいたが一身上の都合で今は人事を任せている。もっとも、少年の方はどうやら知っているようだが」

「はい、『以前』にそちらに所属していたというご縁もあり、お会いしてお話を何度かしましたので。魔術知識が豊富で、とても有意義な時間でした」

「そうか。なら良かった。あいつも同年代の同性の友人で話が釣り合う者もいないからな、よろしくしてやってくれ」

「こちらこそ是非に。あ、申し遅れました。自分は城月怜といいます。唯笑とは6年近い付き合いになります。唯笑が今後も無礼な言動をするようであれば、情報量から言い難いでしょうから自分に申し付けください。自分から唯笑に苦言しておきます」

「社交辞令も問題なしか、面白い。では何かあれば城月に報告するとしようか。よろしく頼む」


怜がそう提督―黒守刹那と話していると、唯笑から「え、めっちゃビジネスって感じのやり取りじゃん。裏切られた気分」と茶々が入り、「やかましい。むしろこうであるべきだろ、お前はこの5回で何を学んだんだ」と怜は軽く唯笑の頭を叩いた。ちなみに怜のこれは『前回』の両親から礼儀について厳しく指導があったから身についたものである。


「そして、少女の方は不慣れなようだな。真白、ちゃんと配慮してやれ。城月のほうが一応経験が少ないんだろ?これではどちらがベテランなのか分かったものじゃない」

「他の魔術師に舐められるよ?」

「確かに弱々しい態度はそう取られることも多いが、真白たちは独立して1つのチームでやる以上、素の状態で仕事をしてもらって問題ない。情報漏洩と緩んだ雰囲気による不注意で任務を失敗するような事さえなければ良い」


そう唯笑を諭した提督は、宥に対し微笑みながら穏やかに声をかけた。


「君のペースで構わない。それに、大体の事情は真白から聞いているから、大したことを言う必要もない。ただ、君の名前くらいは君の声で改めて聞かせてもらえると俺は嬉しい」

「……え、えっと」


その提督の言葉に、今まで怜の背に隠れっぱなしだった宥が少しだけ前に進んで怜の隣にたった。


「あ、あの、汐宮宥、です。2人ほど戦闘得意じゃないですけど、この度、私を引き受けて頂いた恩を返せるように精一杯頑張ります。よ、よろしくお願いします」

「ありがとう、汐宮。こちらこそよろしく頼む。何、君は君ができる限りのことに全力で取り組んでもらえればいいし、難易度が低い任務から任せる。君の実力もある程度保証があるし、2人や真白の知人のサポートも受けられる以上、きっと慣れるのも早いだろう。気負わず頑張ってくれ」

「あ、ありがとうございます」


と汐宮も自己紹介を済ませたところで、提督が唯笑を怜の隣に並ぶよう指示する。


「さて。任務については真白を通じて君たちに通達するが、任務関係なくとも、困ったことがあれば気軽にここに来て、俺に何でも聞いてくれ。俺がいなかったら、ここの2人に報告してくれれば後日返答するか、直接話す時間を設けよう」


と提督が横に控えていた2人を指すと、2人も合わせて席から立つ。


桜乃喜更(はるのきさら)です。よろしくおねがいね?」

桜乃真宙(はるのまひろ)だ。喜更とは夫婦で、実はお前らと同じくらいの息子と5つ下の娘がいるんだ。今度写真でも見せてやるよ」


こうして、終始穏やかな雰囲気で初の顔合わせは終わった。




「……帰ったな」

「ええ。提督、お疲れ様」

「せっくんおつー」

「やめろ、もう子どもではない」

「いや、成人はたしかにしてるけど子どもみたいなもんだろ。いつまで経ってもオレ達にとっちゃ子どもなんだぜ?」

「でも、『軍』に入ってきてからもう10年経つのね。感慨深いわ」

「……城月、と言ったか」

「そうね。……怜くん、あんなに大きくなってたのね……」

「すっげー探し回って、でも見つからなくて諦めてたけど。……坊主から来てくれるとはな」

「そうだな、それに無事で良かった。今からは見守ってみせる。……前提督のように、俺はなれると思うか?」

「勿論、なれると思うわ。貴方なら、きっと」

「お前さんも入ったときよりずっと成長してるしな。まあ、せっくんが変な方向に行ってたらぶん殴ってやるから大丈夫だろ」

「……ああ。今後とも、よろしくな」

1章で一部既出ではありますが補足。

国会、内閣などの政治に関わる機関は、とある事情により解体されており、

その代わりに黒守刹那、桜乃喜更、桜乃真宙などの『軍』の上層部が政治を担っています。


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