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同じ空の下で  作者: 桜油
2章
27/140

23話

こんにちは。


兄妹喧嘩で投げられた爪切りが目元に当たって以降、

目の付近に刃物を近づけるのが怖くて、眉を整えるのが苦手な民です。

昨晩、久々に眉を整えたんですけど、やっぱり血の気が引いて目眩がしましたね。


そんなトラウマ(笑)はさておいて、今話で2章の大筋は終わりです。

では、どうぞ。

汐宮の魔術だ、と怜は確信していた。燿にはそんなことをする理由が全く無いからだ。


どうやら汐宮が『略式』で展開したらしい。怜がこの数週間で教えた知識の1つだ。


そして、燿はわからないだろうな、と怜は苦笑した。


燿は怜の魔術の発動、魔力の行使を禁じただけで、汐宮のそれは禁じていない。そして汐宮の『停止』の起動中、汐宮と一定の条件を満たす者(・・・・・・・・・・)以外はそこで発生した事象を認識しない。

そして、怜はその一定の条件を満たす者(・・・・・・・・・・)に該当するという前提があるから、汐宮は『停止』を起動したのだろうと怜は推測していた。


結論、これは汐宮なりに、『助かる意思があり、助かるために自身が最大限考えた最善の策を行使した』事実にほかならず、怜へ助けを求めたのだと。


『決意』を行使し、怜は行動を始めた。


『発光』で自らの拘束を解き、『縮地』で()に接近し、『障壁』を展開。万が一に備えて宥の手を掴んだうえで、汐宮に目配せをする。

目が合うことはなかったが、状況は理解していたのか、宥は小声で『解除』とつぶやき、『停止』が解除された。

宥に放たれていた魔術は『障壁』に弾かれ、怜はそのまま宥を連れて距離を取った。


「……は?」


燿が呆然とする中、怜は自身が受けた傷を回復してから、燿に向き直る。


「で、どうするんだ?お前の言った話が真実かどうかはさておいて、流石に仲間1人殺そうとされるのは御免なんだが」

「……」

「規定違反だから殺すか?じゃあ、規定違反じゃなくすればいいんだよな?」

「……」

「だんまりか。それとも俺にはどうせ出来ないと思ってるか?残念だったな、俺には最高の相棒がいる。きっと今頃―」

「おまたせ、怜」


怜が燿を詰めていると、背後から唯笑の声がして振り返る。

そこには唯笑が、『軍』の大勢を引き連れて、不敵な笑みを浮かべていた。


「交渉はうまくいったようだな」

「勿論、バッチリ。怜こそ宥ちゃんの保護ナイス。……ところで、そちらの人は?」

「ああ、彼女は古白曜……いや、今は別人格の燿心白か?知っての通り『国際魔術連合』常任理事で、どうも『御伽学院』が宥を指名手配申請して、彼女が以前から俺に興味があったから直々に消しに来たらしいぞ」

「え、よく生き延びれたね。……それに、今『燿心白』って言った?」

「え、ああ。言ったが」


怜がそう返すと、唯笑はガッツポーズまでして歓喜している様子だった。


「どうした?」

「いや、怜マジナイスじゃん!私もそれは綴ちゃんから聞いてたんだけど、それを吐かせたってことでしょ!?これですっとぼけられないから手っ取り早く交渉できるなあ!ありがとう怜!後は私に任せてね、絶対宥ちゃんの指名手配を安全に解除するよ!」


と興奮した様子の唯笑に怜は「ま、まあ嬉しそうで良かった」と宥を連れて下がった。


「えっと、あの、名前……」

「なんだ、だめか?まだ何か不安なことでもあるか?」

「……名前呼びでいいの?」

「何だそれ。むしろ苗字で呼ぶとか仲間に対して余所余所しいだろ」

「……で、でも私は、」

「あー疫病神とかだっけ?そうだな、解除するって話だったな。ほら」


怜がそう言って『決意』で『心象操作』の付与をあっさり解除し、宥が呆気に取られる中、唯笑と燿の交渉が始まった。


「どうも。怜がさっきまで世話になったね。怜の相棒やってる真白唯笑という者だよ。もっとも、怜に興味があったなら私のことも観察してたかもだけど」

「……そうだが」

「それでさあ、私、実は君のことは結構前から知ってたんだよね。それこそ、『前回』とかにね」

「それは……っ!?」

「君は不思議に思わなかった?何でここ数回は正史から大きく変化があるんだろうって。それ、私や他の協力者が介入した結果だよ」

「……じゃあ、本当に、」

「うん。これで……君もうんざりしてたであろう繰り返しは終わるよ。ちゃんとハッピーエンドになる予定」

「……」

「でもねー、感激してるところ悪いんだけど。君、よりによって私の相棒……世界救済の鍵に、ひどいことしたでしょ?眼の前で仲間殺すとか」

「え、……っと」

「言い訳いらないよ?それとも惚ける?無駄だよー無駄無駄。宥ちゃんすっかり怯えてんじゃんね。で、怜が怒ってんのも聞いちゃったからさあ。君は『御伽学院』首席でもあるんだから、指名手配申請なんか却下してやれば良かったのにね。てか、永世中立を謳う『国際魔術連合』常任理事が『御伽学院』に所属してて、こういう緊急時もそちらに有利になるよう動くとかどんなお笑い草なのって話。そっちの方が規定違反だけど分かってんの?馬鹿なの?死んどく?」

「……ぐ、」

「カーバンクルかってのちゃんと言語を喋ってくんない?『ぐ』じゃなくて『愚』なんだよね、意味分かる?愚かって言ってんだよ、何自分からボロ出してるの?面白すぎるけどもしかして腹筋から殺しに来てるの?怜のセリフとるようだけど、助けてほしいならそれ相応の態度を取ってくれないかな。正直、君が何を思おうとどうでもいいけど、君の事情に私達を巻き込まないでくれない?私達、世界救済に忙しいんだ」

「……」

「で?あとなんだっけ、指名手配申請されてる宥ちゃんを『軍』に加入させるのが規定違反とかなんとか?」

「え、あ、はい」

「じゃあこうしよっか。君は君なりに『御伽学院』に潜入しなきゃいけない上にある程度『御伽学院』に利がある行動を取らなきゃいけないのは分からんでもない。そうした方が『教会』の動きがわかりやすいもんね。だから、①この契約締結時を以て、『御伽学院』は汐宮宥の指名手配申請を解除し、『国際魔術連合』として同人の『軍』所属を認めること、②『心象魔術』に関する一切の著作権を放棄し、スクロールを真白唯笑に直ちに提供すること、③今後、『国際魔術連合』や『御伽学院』で入手する『教会』『評議会』『御伽学院』に関する情報は全て真白唯笑に通達すること、④真白唯笑及び真白唯笑が仲間と認識する一定の人物ー以下私達とするーには今後一切敵対行動を取らないこと、④情報漏洩が発覚した場合、責任は君が1人で背負って一切私達の情報を漏洩しないこと、⑤以上の条件が全て満たされている間に限り、私達は君に関する情報を君が不利になるような内容で使用することはないし、私達が『今回』の間に目的を達成した暁には、君がその恩恵を受けられるよう尽力する。この契約を結んでくれるなら黙っててあげるよ?」

「これは不平等条約ー」

「交渉じゃなくて脅迫だけど。君に拒否権はないも同然だよ。伝わってないかな?かな?」

「アッハイ、承諾シマスデス、ハイ……」

「よし、じゃあ契約書今から書くから待っててね。待たなかったら……わかるよね?」

「ハイ……」

「ん。怜、一応『影縫』をお願いできる?」

「あ、ああ。分かった」


否、交渉ではなく脅迫だったが、怜もまだ燿に言っていなかったことをずばりと言ってくれたので、スルーした。

そのまま書き上がった契約書にサインし、解散した。

去り際に燿が、「……人は予想を超えてくるって、こういうことなんだね。曜……」と遠い目で呟いていたのが怜には印象的だった。


多分違うと思う、とは言えなかった。たしかに怜の予想を超えて唯笑は怒っていたので。

というわけで、古白改め燿は仲間になりましたとさ。

もちろん彼女の中では、唯笑との交渉はトラウマ案件になりましたけど。


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