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同じ空の下で  作者: 桜油
2章
19/140

15話

こんにちは。


この場にて謝罪をば。

昨日投稿分ですが、話数を誤っていました。

すでに修正させていただきましたが、お詫びいたします。

これが真の15話です。


では、どうぞ。

汐宮らしき少女をベッドに横たえ、荷物の搬入を怜が進めていると、「え、何これ、何が起きたの!?」と聞き慣れた声がした。入口へ怜が出迎える。


「唯笑。荷物の搬入は終わったぞ」

「ああ、うん、ありがとう。……じゃなくてさ、何でこんな荒れてんの?」

「それはクリアリングに手間取ったからだな」

「クリアリングにしたって豪快にやりすぎでしょ……?」

「抵抗されたからな。なかなか手ごわくて無力化が大変だった」


怜の言葉に唯笑が、「ああ、中に人がいたなら仕方ないね。それにしても手こずるとか珍しいね。というか処分じゃなくて無力化?」と疑問の尽きない様子ながらも持っていたコンビニの袋を下ろし、奥へと歩を進めた。


「唯笑も知ってる人だな。仲間にする予定だったし、個人的な理由で興味もあったから、極力傷はつけないように最善は尽くしたんだ」

「私でも知ってる人?仲間にする予定?……まさか」


と唯笑が広間の扉を急に開けてあたりを見回し、ベッドで寝ている少女を視界にいれると彼女のもとへ駆け寄った。


「な、宥ちゃんが何でここに……」

「ああ、やっぱり汐宮か」


怜がつぶやく間も唯笑は頻りに脈や瞳孔を確認し、やがて「良かった、生きてる」と胸をなでおろした。


「言っただろ、無力化するに留めたって」

「ああうん、そうだけど……抵抗されたっていうから、てっきり」


「宥ちゃん、優しいから自分から手を出すなんて相当だよ?」と話す唯笑に、怜はようやっと現状を説明した。


「未だ『御伽学院』に追われてるらしい。俺達が外でしてた会話も中途半端に聞こえてて、俺達のことを『教会』の手先と誤解していたな。取り付く島もなかった」

「……よく無力化に留めたね。大変だったんじゃない?」

「ああ。おかげで『循環』も『決意』も使用するぐらいには追い込まれた」

「え、そんなに!?」


唯笑が意外そうに唯笑を見る。怜は「『毎回』こんな強いわけじゃないのか?」と興味本位で尋ねた。

唯笑は少し困ったように頭を掻いて口を開く。


「一応ランダムだけど……魔術について学ぶ機会ないから……どうしても独学になっちゃうんだよね」

「そうだよな。影縫いとか言葉は知ってるのに解除法は知らなかったし。……独学の割には『魔装』使えてたのは何なんだ……?」

「……バタフライ・エフェクトってこと?」


唯笑がそうぼそりとつぶやく。


「バタフライ・エフェクト?」

「そう。私、『今回』に関してはそこまで大きな介入をしてないはずなんだ。強いて言えば、幼少期から怜のそばで幼馴染やってるってことと、怜や暁が『前回』の記憶を持っているってことくらいで。それは蝶の羽ばたきくらい些細なことだと思う。でも、人は生きている以上誰かに影響を与えるし与えられるでしょ?私の知らないところで私を知っている誰かが干渉した結果、私の知ってる情報とは差異が生まれるかもしれない」

「それこそ、俺達を知ってる誰かが汐宮に『魔装』の魔術式や『影縫い』という言葉について教えててもおかしくないってことか」

「Exactly。もしかしたら違うところにも影響してくるかもね」

「厄介だな……」


怜と唯笑がそう会話をしていたところ、汐宮が微かに身じろぎをし、「ん、んん……」とうっすら目を開く。

すぐに会話を中断し、汐宮の顔を覗き込むと、汐宮は怜の顔を認識した途端にそれまで寝ぼけたような顔つきだったのを険しく一変させた。また魔術式を再度展開されたので、即座に反応した怜がその魔術式を書き換えて無効化した。それを見て、汐宮は諦観を顔に浮かべた。


「……私もこれまでですね。最後にあの子に謝れなかったのだけが心残りですが、どうぞ一思いにやってください」

「ああ、まだ誤解してる!?なんとかしろよ唯笑もん!」

「あー、思った以上に深刻だね……未来のロボットみたいに私を呼ぶのやめようか、うん」


唯笑も頭を抱えたが、すう、はあ、と深呼吸をすると、気持ちを切り替えたのか表情が引き締まった。


「ねえ。何で死んでないんだと思う?何で君の知ってる部屋に留まってるんだと思う?拘束すらしてないのは何でだろうね」


そう諭す唯笑だったが、「それ、は……拘束なんかしなくてもいつでも殺せるから……?」と少し疑問には思いつつも怜を疑う姿勢は変化していない。怜がどう説得したものかと悩んでいたところで、唯笑が「あーーーーーーもう!」と大声を上げる。


「めんどくさい、じれったい!怜、あれ始めるよ!」

「あれ?あれって」

「あれはあれだよ!初めて会った日の夜にもやったでしょ!」


意図が読めずに首をかしげた怜に唯笑が憤慨した。唯笑の言葉に、怜は「ああ、あれか。懐かしいな。たしかにやったほうが早そうだ」と微笑む。

未だなんの話かわかっていない汐宮を置いてきぼりにして、ヤケクソ気味な笑みを浮かべて唯笑は宣言した。


「互いのこと知らなきゃ何も始まんないっしょ!というわけで自己紹介兼ねて暴露大会始めるよ!第二回暴露大会!司会進行は前回と同じく私、真白唯笑!よろしくおねがいします!」

「おー」

「え、え?なんですかいきなり、何が始まるんですか?」

「とりま付き合ってくれ。アイツから順に暴露するし俺も暴露するから、お前もちゃんと言いたいこと言ってくれればそれでいい」

「は、はあ」


唯笑の宣言に軽くノる怜とは対照的に、全く話についていけない汐宮に怜が解説をする中、唯笑は暴露し始める。


「えー、では暴露します!私は真白唯笑。旧友に頼まれて、あと私のエゴもあって『世界救済』を目指す普通の魔術師だよ。私達が元々いた孤児院は『教会』の支配下だって情報握ったから、今は脱走してきたとこさ」

「……脱走?」

「うん、ついでにリークしてやって孤児院としての運営をできなくしてやろうと思って。これから『軍』に加入する予定だね。勿論『御伽学院』のこともリークして、君を追っかけられないようにするから安心してね、宥ちゃん」

「えっ、私まだ名乗ってな」

「はい!次は怜ね!」


唯笑の強引な話の進め方に苦笑を浮かべた怜も、自己紹介を始めた。


「俺は城月怜。気づいたら時間を遡行していて、協力してくれって唯笑から必死に頼まれたんで協力してる、そんな普通の魔術師だ。唯笑とは幼馴染のような関係だ。……勿論俺も、昔からお前のことは知ってるぞ、汐宮」

「……」

「俺も、唯笑も、お前には幸せになって欲しいと考えているんだ」


そう怜が汐宮を安心させるよう穏やかに笑うと、汐宮はしばらく黙り込んでいたが、やがてその沈黙を破った。


「……じゃあ、どうして、『御伽学院』に私の体がいじられて疫病神になる前に、私を救ってくれなかったんですか」


唯笑がそれに口を開くが、先に答えたのは怜だった。


「『神様』じゃないから、かな」

「『神様』じゃない……?」


眉間に皺を寄せた汐宮に、怜は続けた。


「そうだ。人間、誰だって神様になれやしない。誰かの神様になりたいとか、心臓になりたいとか、そう思っていたとしても、結局人は、自分で勝手に自分のやり方で幸せになれるからな」

「はあ……」

「ましてや、俺はお前の神様じゃないから、お前を救ってやることは出来ない。お前を救ったら、きっと他の大切ななにかを取り零すから」

「……っじゃあ、無責任に幸せになって欲しいなんて、」

「でも。汐宮の神様じゃないから、今から少しの間、一緒にいてあげるくらいはしてあげられる。……そうだろう?唯笑」


と怜が同意を求めると、唯笑は静かに頷いた。

それを見た汐宮は、「……適当な言い訳をされなかっただけ、マシですね」と独り言ちた。未だ不満げだが、険悪な空気が少し緩和される。

汐宮は観念したように、自己紹介を始めた。


「皆さんもう既にご存知のようですが、汐宮宥です。『御伽学院』に人体実験されて以降、疫病神みたいに周りの人を不幸にしますし、そのせいで家族は喪い友人も疎遠になりました。通りすがりの親切な人に護身に役立ちそうな魔術や知識を少し教えていただき、その知識と血の滲むような努力で魔術を自作して、それを頼りに生きてきました。そんな、普通になりたかった魔術師です。……幸せにしたいというのなら、一緒にいてくれるというのなら、とことん付き合っていただきますよ。疫病神のせいで死んでも知りませんからね」


若干微妙な関係から始まったが、大丈夫だろうか?

そんな一抹の不安を残しつつ、一旦誤解を解くような形で暴露大会は幕を閉じた。

評価、感想などいただけますと幸いです。

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