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同じ空の下で  作者: 桜油
序章・1章
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11話

こんにちは。


最近は『メアリスケルター』シリーズの攻略と執筆を並行して行っています。

私は浅く広く趣味を嗜む人なので、時間が足りないです。

地球の自転が少し遅くなって、1日30時間とかにならないかな…なんて。


では、どうぞ。

小学5年の夏休み。

怜も唯笑も、どうせ簡単だからと宿題は初日に終わらせていたのだが、今年はラスボスがいた。その難攻不落のラスボスに、怜も唯笑も苦しめられて現在最終日。全く着手できていないまま始業式を迎えようとしている。

しかし、だからといってズル休みや宿題をすっぽかすという考えは両人共に無い。小学生に負けたような気がするからだ。

その名も自由研究である。


「自由研究って、何を研究すればいいのか分かんなくない?」

「それな」


何か使えそうなネタはないのか、と怜も唯笑も2人そろって朝早くから図書館へ駆け込んだが、いまいち面白そうなネタも浮かばず数時間。何も進まず机に突っ伏していた唯笑の一言に、怜は激しく同意を示した。


怜には、正直ネタはある。自由研究なんて、紙粘土で適当に貯金箱やおもちゃでも作れば、もしくは地球の構造とかを模造紙に資料のまま纏めておけば、それでクリアできるのだ。唯笑は学生としてまともに生活したことがないが怜は『前回』の記憶を参照できる。それが2人の違いであった。

だが、怜は『それでは小学生と同等だ』とその楽な攻略法を放棄し、『学会に出すほどでは無いけどそこそこ有意義な研究』を考えるという暴挙に出た。

そして、今こうして2人で机で突っ伏しているのだが。

そんな陰鬱な雰囲気を醸し出している中、2人の男女が声をかけてきた。


「孤児院にいないと思ったらこんなとこにいたか。何をそんなに悩んでるんだ?」

「めっちゃ雰囲気暗いけど。もしかして計画が結構やばい?相談乗ろうか?」

「……あー、綺人くんに千早ちゃんじゃん。お久ー……」


2人の言葉に唯笑が力無く手を振った。

常葉綺人(ときわあやと)寿乃千早(ことのちはや)。どちらも椎名の仲間の魔術師だ。黒髪に黄色のメッシュをした男性、常葉は魔術の研究が趣味ということで怜はよく論文をやりとりしていたし、その論文にツッコミや考察、検証が出来るくらい寿乃も魔術研究に傾倒している。怜にとっては、この3人で集まることが多かった印象だ。

怜が代わりに答えた。


「自由研究、ネタが全く浮かばないんだ」

「はあ……自由研究……そんなの初めて聞くな」

「今どきの小学生って論文も書かなきゃいけないの?大変だねー」


と全くもって戦力外な回答が出揃った。

ああ、そうだった、この人たちも唯笑と同じくまともな学生経験ないんだった、と怜は悩みを打ち明けたことを後悔した。頭が痛いとこめかみを押さえる怜に、もう1人声をかけてくる男性が。


「どうしたの?皆で話し込んで」

「……ああ、白星くんもいたんだ」


唯笑が死んだ魚のような目をして、その男性の方を見た。男性、秩佐白星(つかさしらせ)は「うわ、DHA豊富そう……」と感想を漏らした後に手元の課題に視線を向けた。


「うーん、ごめん。僕もやったことないな、自由研究。期待に添えず申し訳ない」

「まあうん、そんな気はしてた。予想通りだし秩佐は何も裏切ってないから気にしないで」


と怜もおざなりに対応する。

そんな時だった。寿乃が名案を思いついたとばかりに手槌をつく。


「あ、そうじゃん。怜、なんか面白そうな魔術開発したって綴から聞いたよ。スクロール見せてくんない?」

「うん?なんのことだ?」

「またまたー。時間巻き戻せる魔術開発したらしいじゃん?検証させてよ。そんでそれ記録して、提出しちゃえばいいよね?」

「ああ、あれか。確かにオレも興味深いと思っていたところなんだ」

「あー……。『循環』のことか」


怜はそう呟いて、『循環』の魔術式を展開する。魔術式をジロジロと3人が監察した後、常葉が「起動したらどうなる?」と次を促すと、唯笑が近くに置いていた消しゴムを落とす。起動すると、落下中だった消しゴムがぐんと上に押し上げられ、天井にぶつかった。


「ほー。ベクトル操作がメインって感じね」

「そうだな。血流、重力、運動、熱はこの魔術で色々変えられる。時間も理論上できるが、現実的な範囲だと、」


怜は説明しながら、財布から徐に千円札を取り出しては破り、それを対象に『循環』を使用した。千円札は元に戻った。


「……こんな短時間しか戻せないな」

「魔術式見てて思ったけど、これって巻き戻したいと思えば思うほど、必要な魔力量がえげつないことにならない?」

「ああ。指数関数のグラフを想像してほしい。正直、30秒ほどが限界だ」

「それに、これ魔術式展開するときにだいぶ脳のリソース持っていかれる感じがするな」

「対人戦には結構強そうだけど、連発は難しそうね」

「正直、さっきのでも結構頭痛がしている。狙った対象だけ巻き戻すのがどうも難しくて、少しでも制御をミスったら周囲も巻き戻ってしまう」

「難しいな……」


怜、秩佐、常葉、寿乃の4人で揃ってウンウン唸っていたところ、唯笑がふと思い出したように言った。


「制御面はともかく、魔力量については『決意』でなんとかなるんじゃない?」

「『決意』で?」

「うん。だってほら、現に『決意』で巻き戻せてるわけだし。それにさ、怜に初めて会った時、魔力も魔術式もなしで『回復』使ってたし。それと同じ原理でできそうじゃない?」


唯笑はそう怜を指さしながら話し、秩佐が「ああ、『循環』を使用して『決意』でブーストをかけるとか、『決意』で魔力消費せずに『循環』を使うのか」と補足する。


「だが、負担を軽くしたところで今から5年以上前には遡れないだろう?『決意』で巻き戻せてる以上、更に先を目指す意味もないんじゃないか」

「うん?遡れないのか?」

「そうだね。暁の記憶の限り巻き戻るからかな、これ以上遡ることは厳しいらしいよ。もっと前まで遡れていたら、いろんなことに介入できたんだけどね……」

「もしそうなったら綴も喉から手が出るほどスクロールが欲しいだろうね」


そう秩佐も苦笑いを浮かべる。怜は今までの唯笑の話からして、たしかにそうか、と納得していた。


「戦闘で使用するにしても、『決意』を使いすぎたら自滅につながるし、『決意』はどちらかというと切り札かなあ」


と続いた寿乃に唯笑が「いや、そりゃそうだけど、」と切り返した。


「負担さえ和らげば、もっと前まで巻き戻せるかもしれないじゃん。記憶にない範囲だって、ちゃんと」

「唯笑。それができたとして、俺はあまりやる気はない」

「……えっと、どうして?」

「巻き戻ったとして、だ。それは限りなく似た、言わば並行世界に転移するだけじゃないのか?ならば、俺の知る俺の両親に会うことはできないだろうな」

「……そうかもね」

「それに、俺はそうまでして『前回』まで戻る理由がないんだ。『今回』、『前回』よりも充実しているし、巻き戻したら、今のこの充実した毎日までなくなるってことじゃないか。それで同じようにしたって、きっとそれはもう違う」


怜にそう言われて唯笑は一瞬表情を歪めたが、すぐに「そっか、」となんでもないように笑った。

が、怜は続けた。


「それでも巻き戻すのなら、それはきっと、『決意』『循環』を完全に制御できる時だろうな」


怜はそれだけ言って模造紙に『循環』の魔術についての論文を書き始めた。常葉は怜の下書きを添削しては修正し、それを秩佐や寿乃がなぞって清書し始める。

唯笑はそれに、先ほどとは違った声色で「そっか」と漏らす。怜は、どんな表情をしていたかは確かめていない。

自由研究、だいたいワンパターンになりがちですよね。


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