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同じ空の下で  作者: 桜油
序章・1章
13/140

10話

こんにちは。


昨日はバス運行見合わせ、車は積雪対策してなくて通勤手段に困ってましたが、

電車が動いてたので渋々出勤しました。混んでてやばかったです。

いっそのこと電車も止まってたら有給とって休んだのに、残念。


では、どうぞ。

小学五年の夏のある休日。孤児院の私室で暇な時間を自堕落に過ごしていた昼下がり。

怜はある記事を見つけてぎょっと目を瞠り、慌てて隣でスマホの前で百面相していた唯笑に声を掛ける。


「おい、唯笑。この記事やばくね?」

「えー?今は綴ちゃんのいつもの強火担に付き合うのに忙しんだけど」

「そんなのどうでも良いくらいやばいから、見ろって」

「はあ、どれどれ」


と唯笑が渋々画面を覗き込むので、怜は見やすいように画面を唯笑の方へ傾けた。


記事はとある魔術論文のことだ。最近、魔術学会にてある魔術が複数発表されたのだが、危険性が高すぎてスクロール公開が『国際魔術連合』の決議により保留になっているらしい。

『国際魔術連合』……魔術に関する記録、魔術師の経歴や魔術組織の実績やそれに比較した援助などを管理している組織が設定した要件を一定以上のラインでクリアしたもののみスクロールが公開されるのだとか。

正直そういった危険な魔術を規制したところで内輪で見せ合うだろうから無意味であり対策するために公開するべきだとする考え方はあるが、怜にとっては魔術式なんぞ略式化されるかアレンジされて極力他人が書き換えしにくいような構成になるのが落ちなので、公開されても意味がない以上、脅威度が目に見えてわかりやすい現行の制度のほうが良いと考えている。ここまでの規制が入るなら、まず間違いなく影響範囲が絶大すぎるとかのレベルだろう。


そんな規制が入った魔術の名前は『心象魔術』。制作者は『御伽学院(おとぎがくいん)』所属のようだ。『御伽学院』も『評議会』も最近『教会』に協力的な動きが散見される、今要警戒の魔術組織である。


『心象魔術』は『心象操作』『心象掌握』『心象破壊』の三本立て。効果はそれぞれ、『対象の任意の感情を増幅、減衰させる』『対象へ任意の記憶(存在しないものに限定される)を植え付けたり、思考回路を一時停止させ、情報処理が不可能な状態にする』『対象の意識を喪失させ、任意の期間だけ脳死状態にする』ものである。これに関しては、さすがに効果が凶悪すぎてスクロールなど一切公開されないほうが世のためだというコメントが多数派である。怜が軽く使い道を考えてみるが、『心象操作』は人を自殺に追いやることができるだろうし、『心象掌握』は人を洗脳、廃人にできるという意味でしかないし、『心象破壊』に関してはもはや初見殺しである。魔術が正常に機能したら、怜の『決意』のように魔術の効果を打ち消せる手段がなければ即死も同然なのだ。

そんなのが『教会』『評議会』『御伽学院』に共有されるなど、絶望的すぎるだろう。怜はもはや笑うしかない。


だが、問題はそこではない。その後に申し訳程度に実験データが列挙されているが、サンプルデータの経歴や観察日誌の抜粋部分が特に怜が突っ込みたかった部分である。


『構成員の実子の提供を受けたため、出生後1年で手術実施。『心象操作』を付与。実験結果の採取の確実性が必須のため『負の感情』であれば無条件で増幅させ、『生の感情』であれば無条件で減衰させるように設定』

『施術から4年後、構成員であった両親が互いに絞殺、心中。対象は逃亡したものの、データの観察に関しては問題ない』

『舞月財閥と被検対象が親しかった可能性あり、被検対象の捜索をしている模様。観察終了時点で保護を検討していたが、『御伽学院』全体の利益、周囲の安全性を考慮し殺処分とする』

『現在未知の魔術を利用して逃亡するため、なかなか捕獲できていない。存在するだけで周囲に危害を与える存在である。見つけ次第殺処分し『御伽学院』に報告したうえで遺体を提供するように』


内容がほぼ汐宮宥の経歴だったのだ。

舞月財閥……世界中であらゆる分野の事業をしている、世界でも片手に入るほどの資本家との関係性はわからないが、両親が互いに絞殺など他にあるまい。怜はこれは汐宮宥のことだと確信している。

それに、問題はそれだけではない。汐宮は『心象操作』の術式、つまり他にも『心象掌握』『心象破壊』を付与された人物もいるはずである。この論文で議題に上がっていないのが不可解だが。


唯笑は目を通し終え、「うん、何回見ても胸糞だよねこの魔術」と、ウゲェーッ!と嘔吐するような仕草をして顔をしかめた。


「感想ってそれだけか?汐宮も巻き込まれてるじゃないか」

「毎回彼女は巻き込まれてるよ。『前回』だって怜が興味ないか宥ちゃんのこと知らなかっただけで、普通にこの記事は出てたし」

「……」


怜は何も言い返せなかった。唯笑の言葉が図星だったのもあるが、それ以上に、唯笑の顔色の悪さが尋常でなく、それでいてなぜか自然に笑顔を浮かべているのが、よくわからなかったから。


「こんな胸糞魔術のせいで、世界が滅ぶんだ。私が一番キライな魔術だよ。人の心を何だと思ってるんだろうね。さらっと人体実験してるのも気分悪いし、それにここも加担してるのが本当無理」


と手に持っているスマホを、画面を割りかねないほどの力で握り込む唯笑に、気になる発言があったものの怜が何も言えずにいると、唯笑はふと気づいたように話を再開した。


「もう言っていっか。まず1つ、秘密兵器のうちの一つがこれで出来上がった。出来上がってしまった。これは回避できないよ、だって私達が時間遡行したときにはすべて終わってる。私達が逆行したのは5年前でしょ?その5年前よりも前に『心象掌握』『心象破壊』の実験は終わってるし、『心象操作』も仕込みが終わってて、宥ちゃんを助けたくても、対策してなければミイラ取りがミイラになるだけ、対策してても宥ちゃんが逃げる場所はその周で違う、絶対同じになんてならない。そして、宥ちゃんを追っかけてる間に他の仕込みを進められるんだよ」

「……」

「私は無力だ。誰かが『人生はクソゲー』とか『人生とか分が悪い博打でしかない』とか『燃えるゴミの日に捨てたい』とか言ってたけど、これを初めて知った時の私はこれの意味がよくわかった気がしたよ。結局、希望を祈れば祈るほど、絶望が舞い込んでくるもんだって、だから私は、本当に大切な場面でしか改変しないって決めた」

「……汐宮宥が俺と出会うまで死なないのは確定しているからか?」

「そういうこと。私が関わる人すべてが幸せであれば良い、なんてきっと絵空事なんだよね」

「……」

「2つ目。ここの孤児院がクソな理由。『教会』の支部に該当し、定期的にモルモットや少年兵を他組織に提供しているからだよ。『教会』に私達の作戦を気取られないように距離を置くのと、それでも割と『教会』にデータ取られているだろうから、利用される前に逃げなきゃってわけ。さもないと、拝郷本音の幼馴染が『心象掌握』の実験体になったせいであらゆる人に存在しない記憶を植え付けてレイプやら虐めやら虐待やらされまくって結局自殺したように、最悪な目に合わされる」


そこまで早口で語り終えた唯笑は、最後にか細い声で「……ほんと、やだ」というと、体育座りになって顔を伏せた。体は震えていて、冷や汗がべっとりと背中についていた。

怜は、ぎこちなく手を伸ばし、慎重に、壊れないように手を握り、ずっと静かに傍に寄り添っていた。


何分ほどそうしていただろうか。


「……ありがと、もう大丈夫」とくしゃくしゃした笑顔をあげた唯笑が、「ちなみに『心象破壊』を植え付けられた人は無事だよ。ずっと『評議会』で管理されてたからっていうのと、イレギュラーが発生したからだね。でも彼女を利用されるのは困るから、致命的なことが起こる前につてを作って保護してもらうつもり」とヘラヘラしていたが。


「……そっか。俺が笑っていた間、唯笑はずっと苦しんで苦しんで、それでも約束を果たすために必死に頑張ったんだな。唯笑のその努力が報われるよう、俺も最善を尽くそう……だから、その、今は無理して笑わないで欲しいんだが」


と怜が先程よりもしっかり、優しく手を握るのをやめないまま一言いうと、「……怜ってば気障だね」とまた、今度は自ら怜の胸に顔を埋めた。

外の雨音と泣き声だけがずっと部屋中に響いていた。

簡易版を読んで頂いた方は、多分この時点で


「簡易版と本作が設定改変されすぎてて、もはや別作品じゃん」


と思ってることでしょう。実際、知人にも言われましたし。


数年間シリーズ続編をかけずに放置してたら、書きたい設定がどんどん生えて、

だんだん簡易版の設定とかとは矛盾してきて、

いっそ書き直そうかな、と考えた結果、今に至ります。


評価・感想などいただけますと幸いです。

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