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同じ空の下で  作者: 桜油
序章・1章
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9話

こんにちは。


福岡の方に住んでいますが、雪のせいで出勤できなそうで困ってます。

今日消化したいタスク、あるのにな…


それはさておき、やっと登場人物が増えます。

では、どうぞ。

小学4年に進学した春。


怜や唯笑が通っている学校では遠足が開催されていた。行き、帰りは徒歩で、1年は6年、2年は5年、3年は4年とペアになって2列縦隊で移動するうえ、到着してもしばらくはクラスでまとまって食事。普段は周囲から恐れられて自然にハブられている二人だが、その時だけは渋々と仲間に入れられる。それ以外、平常時や他の行事では二人だけ抜け出して魔術談義などいくらでもできるだけにこの遠足はひどく窮屈であり、怜や唯笑にとってはサボりたい行事ナンバーワンであった。


しかし今年は少し事情が異なる。食事が終わるまで窮屈なのは変わりないが、その食事が終わった後に数時間ほど自由時間が保証されているのだ。『軍』『教会』が開戦した都合上治安が悪化したため、移動手段が徒歩からバスに変更されたからだ。

そして唯笑はその自由時間に、唯笑の協力者と怜の顔合わせの予定を入れたようで、怜は前日にそれを知らされた。


怜にとっての知人との再会とも言えるこの顔合わせ。怜は柄にもなく胸を躍らせていた。

自由時間、待ち合わせ場所に指定した休憩スペースにて、唯笑が「なんか、今日の怜は楽しそうだね」と話しかける。


「昔の俺を知っている人にやっと会えるからな」

「まあ、そんなに楽しみにしててもらえるなら重畳かな。もう少し早く予定組めるはずだったんだけど、表で大きく動けない分やりたいことがあったっぽくてね。それがやっと落ち着いたから」

「へえ。……そういえば『前回』は『放蕩の茶会(ほうとうのちゃかい)』なんて組織なかったと思うが、そいつらだったりするのか?」

「うん、そうだよ。よくわかったね」

「あんな面白そうな魔術組織、『前回』あったら絶対目をつけてるからな」


と怜は最近孤児院から支給されたスマホに『放蕩の茶会』のSNS公式アカウントのプロフィール画面を表示させた。


『放蕩の茶会』。『前回』には存在しなかった魔術組織。近年発足し、表向きには『世界中を探索して遺跡などを探索するサークル』と紹介されているが、特筆すべき点は、4人という少数精鋭であること、魔術師業界では構成員全員の情報をどんなに探っても見つけられないということである。それだけでも、諜報、戦闘面において相当の実力者であることが窺える。そんな魔術組織『放蕩の茶会』だが、永世中立主義を謳っていて、今回の『軍』『教会』の戦争にも不干渉を早々と宣言していた。


話題は先週ニュースで流れた今話題の時事問題に変わる。


「『軍』と『教会』の戦争、『教会』側が先に仕掛けた割には『軍』が『前回』は圧勝していて、あとは降伏するのを待っているだけのような状態だったが……『今回』はやっぱり違ってくるか?」

「そうだね。『前回』は『軍』『教会』の戦争を止めたかった知人が頑張って介入したからああなっただけで、ほぼ『毎回』接戦で、それこそ今から8年後まで戦争は終わらない」

「そんなに長引くのか……ちなみにどちらが勝ちそうな状態だったんだ?」

「んー、本当に接戦だからね……あ、でも最後の最後で『教会』の勝利がほぼ確定してたね」

「『教会』が?」

「刹那さんが殉職しちゃったのが決め手だね」

「刹那さんが殉職!?!?」


予想外の言葉に目を白黒させる怜に、唯笑も「まあ気持ちはわかるけど」と苦笑いを浮かべた。


「ほら、前に言ったじゃん。『教会』と『評議会』、『御伽学院』が連携して、『教会』の秘密兵器の下準備のために『軍』本部を襲うって。その時に多勢に無勢でやられちゃうんだよね」

「いや、まあ確かにそうだが……幹部とか、こう、色々いるだろ?」

「『軍』に潜入してたっぽい『教会』スパイに情報操作をされて、その幹部の人たちと分断されちゃってたんだよねえ……ただでさえ多勢に無勢なのに、分断してからの各個撃破。正しい戦術ではあるよね」

「うわあ……え、スパイの正体は?」

「知ってるけど、」


と唯笑はそこで言葉を止めて、怜の方……ではなく、その背後に視線を向けた。

直後、その背後から、


「対処可能な範囲ではないから、今は何もできないわ」


と、大人の女性の、怜にとっては聞き覚えがある声がして振り返る。

黒髪に緑色のメッシュが入った三つ編み。暗めの緑色の瞳。『前回』は基本私服姿だったが、今は『放蕩の茶会』の紋章が入った、外側は黒く内側が緑色のマントを私服の上から身につけている。

怜の記憶が正しければ、たしか、


「椎名か。久しぶりだな」

「そちらこそ久しぶり。会えて光栄ね」


怜に対し、椎名綴(しいなつづり)はそう口にした。

椎名綴。本名は識名宇海(しきなうみ)。『前回』はかつて『軍』に所属していた人物で、怜は経歴の詳細は知らなかったが、『面白そうな魔術師を紹介してくれないか?』という怜の興味本位の依頼に対して拝郷本音が彼女を紹介したことがきっかけで知り合った。もっとも、彼女自身は魔術師ではなく『至高』と称される『メカニック』……機工学者なのだが、だからこそ魔術師とは異なる視点から語られる魔術理論が当時の怜にとっては興味深く、ほか三人の彼女の仲間の魔術師の実力も相まって時々任務の合間を縫って連絡をとり、プライベートで時々あって会話をしていた。


「お前が唯笑の協力者だったのか」

「予想外だったかしら?」

「いや、なんか、納得した」


だって人生2周目かってくらい大人びていたし。怜が心の中でつぶやく中、ふと気になったことを口にした。


「そういや秩佐(つかさ)常葉(ときわ)寿乃(ことの)はどうなってる?来ていないのか?」

「『今回』については唯笑に協力するってことで同意してくれているわ。今日は別件があって無理だけれど、3人とも貴方に会いたがっていたし、近いうちに顔を出しには行くんじゃないかしら」

「そうか。よろしく言っておいてくれ。あとそうだな、……どうして大人の姿のままなんだ?」


怜のその疑問に「それは」と椎名が口を開いたが、今まで会話を黙って聞いていた唯笑が「あー、私から説明するよ」と会話に参加した。


「普通、私や怜みたいに体も逆行するんだけど。綴ちゃんはちょっと私達とは違う方法で時間遡行してるからか、そのままの肉体で来ちゃったんだ」

「ええ。『前回』はそんなことなかったのだけど。不思議よね」

「それだけなら『前回』と同じように介入をお願いしようかな、と思ってたんだけどね。だって、大人として最初から動けるなら、『前回』みたいな無茶しなくてもなんとかなりそうだし。でもさあ……」


唯笑はそういうと、がっくり肩を下げて落ち込んでいた。首を傾げた怜に椎名が説明を続ける。


「原因は不明だけど。どうも、大人の『識名宇海』と子供の『識名宇海』がいる状態らしいわ」

「うん?」

「つまり、『椎名綴』と名乗っている識名宇海と、この世界で普通のこどもとして生きている識名宇海がいるのよ」

「え、そんなことありえるのか?」

「いやありえないよ?原因精査してるけどマジで意味不明だし……」


と唯笑が会話に戻ってきた。椎名は肩を竦めて、「他の3人も同様の状況よ」と自身の説明を補足した。

唯笑の話は続く。


「原因がわからないと最悪、『今回』の綴ちゃんに会った瞬間、ドッペルゲンガーってことで片方消えるとかも起こりかねないから、表でも分かるような派手な行動はお願いできなくて。マジで痛手だよこれ。私の計画の大幅な変更を迫られたよね」

「まあいいじゃない。大幅とはいうけど、なんだかんだ大筋は変わっていないし」

「そうだけどさー!交渉回数は増えるわ確実性が減るわで散々だよもう……はあ……」


とまた落ち込んでしまった唯笑に、椎名が「それに、私はこうなってよかったと思っているのよ」と穏やかな、晴れ晴れとした表情を浮かべる。


「だって、『前回』はたしかに大切な人の命は救えたけど、結局無茶をさせた上に『今回』巻き込んでしまったし……私、『今回』なら『彼』が私の元々知っている『彼』らしく幸せになれると思うの」


「だからそんな『今回』のわたしたちが不都合みたいな言い方しないで頂戴」という椎名の意見に、唯笑が「ごめん、でも私も『今回』しかないから……」と返していた。怜にはよくわからない話もあったが、怜は唯笑の背中に手をおいて言った。


「正直、話がよくみえない部分もあるけど。『今回』はその分、俺という仲間がいるだろ?じゃあ何とかなる。いや、なんとかしてみせるから、そんな不安がるな」


怜なりに励ましたが、唯笑は「……うん」と少しぎこちなく笑い、それとは対照的に椎名が意外なものを見るように怜を凝視したあと空に視線を向けた。


「椎名、どうした?そんなに意外か?」

「ええ、意外も意外よ。貴方、そんなに人に対して同情的になれたのね。たしかに唯笑の境遇に同情するのは私も同意だけれど、それにしたって怜が励ますとは露ほども思っていなかったわ。明日は槍でも降るかしら?」

「おいコラ。もう少しオブラートに包んで言えや」

「事実なのは認めるのね」


椎名と怜のやりとりに唯笑が可笑しくてたまらないといった様子で吹き出して、ようやく唯笑の様子が戻ったことに怜も椎名も安堵した。

こうして、怜は唯笑の協力者、椎名との初の対面……というよりは再会を済ませたのだった。


「どうだった?私の『ヒーロー』の印象」

「……どうやったの?彼、人に対してそんなに感情移入できるような人ではなかったと思うのだけど」

「まあ、昔より確かに感情的にはなったと思うけど。私がやった事なんて特にないよ?」

「嘘、冗談やめてよ。ロボットが人の皮被ったような性格だったでしょう?あれはもはや別人じゃない」

「辛辣だなぁ」

「当然よ。正直、今日会うまで唯笑の約束をすっぽかしてやろうと何回思ったか」

「……やっぱ、信用出来ない?」

「……勿論。少しは見直したけど、まだまだね」

「彼は……愛は無いかもしれないけど、情がないわけじゃないよ」

「それはもう今日分かったわ。けど、同情なんかじゃ世界は救えないし、大切な人は守れない」

「……そうだね。でも、私は怜のこと信じてるから」

「唯笑はそう言うでしょうね。だからその代わり、私はとことん疑わせてもらうわ」

「そっか。信用はしなくていいから、見守っていてね?」

「……まあ、それは『前回』からの約束だし。いいわ、賭けは一旦貴女の勝ち。協力関係は継続しましょう」

「うん。これからもよろしく」

「……ええ、こちらこそ」

簡易版ではこの4人(椎名とその仲間たち)は全く登場していません。

簡易版完結後に思いついた設定だからですね。


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