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同じ空の下で  作者: 桜油
序章・1章
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8話

こんにちは。


今回は初詣回ですね。

本当にただ日常とか行事をピックアップして書いてます。

まだ登場人物が2人しかいませんからね。


では、どうぞ。

孤児院では、毎年正月はおせち料理やお雑煮を食べることになっている。


それは大変結構なのだが、どうも怜や唯笑は嫌われすぎたのか、最近はガラスの破片などが食事に混ざるようになってきた。一応避けて食べているし、今のところ毒は入れられていないが、これではいつ毒を入れられてもおかしくないだろうと怜は考えている。

唯笑が数年前の暴露大会で話していた、「孤児院はやばいところ」というのも信憑性を帯びてきた。

そう思い、唯笑の計画にも使えそうだからと孤児院の後ろめたい証拠を抑える手段を怜は本気で検討し始めていた。


なにはともあれ今は小学三年の冬、正月早々そんな暗い気持ちになりたくないからと怜はいつものように唯笑を連れ出して初詣に来ていた。

とは言っても初めてのクリスマスほど唯笑が乗り気でない訳ではなく、正月にもあまりいい思い出がないが怜と一緒なら、と唯笑は不機嫌にならずに付いてきてくれていた。

怜としては、お賽銭のことを「神様税」などと揶揄される可能性も考慮していたので、これには大いに安心していた。


もっとも、それは初回の初詣の時点で、愚考だったと感じることになったが。


「今年も相変わらず人が多いね」


ここ数年でだいぶ大人しくなった唯笑のコメントを聞き流し、怜は参道に並ぶ露店を眺めながら長蛇の列に並ぶ。初回は「人がゴミのようだ」と表現していたことを思えば、随分成長したものだ。怜は唯笑の成長を見守る父親のような感想を抱いていた。


一応唯笑のほうが繰り返した回数が多い分精神年齢が上なのだが、唯笑は今まで甘えられる環境にいなかったからか、怜に甘えたがりな一面があった。怜としても、唯笑がそれで気が楽ならそれでいいと感じていたし、何より怜も唯笑が落ち着いて素をさらけ出しているのを見るとどこかほっとする感じだった。奇妙な感情だと思いながら、しかし温かいそれを怜は捨てるよりも理解したかった。誰が言ったか、『大人とは裏切られ続けた青年の姿である』という格言があるが、言いえて妙である。


列に並んでいる間は『伝達魔術』で魔術に関する議論をして時間を潰していた怜と唯笑だが、やがて自分たちの番が来て、それぞれ賽銭を投げ入れて二礼二拍手をした。怜は『今年も平穏に過ごせますように』とだけ祈って一礼で終わるのだが、唯笑はいつも長いので端によって待機することになった。


「ごめん、待たせたよね」

「大して待ってないぞ」


やがて一礼を済ませて唯笑が怜の下に駆け寄り、毎回やっているやりとりを消化する。

ふと、怜は気になって、


「ちなみに、何をお願いしてきたんだ?」


と尋ねた。


「え、言っちゃうと叶わなくなっちゃうじゃん」

「それもそうか」


どうしても聞きたかったわけではない怜はあっさり諦めて切り上げ、はぐれないように唯笑の手を握ったが、唯笑が歩き出さないため、怜も立ち止まった。


「どうした?」

「……ううん。やっぱなんでもない。ほら、行こう?」

「いや、今言いたかったんだろ?遠慮せず言ってくれ」


唯笑が遠慮したように笑うので、怜はそう返す。唯笑は目をパチクリとさせた後、「えっと、じゃあ」と口を開いた。


「こんなとこで言うことじゃないと思うけど、私、神様が嫌いなんだ」

「……」

「昔は興味なかったんだけど、今は嫌い。だって、世界が大変な時、助けてなんかくれないし。ああ、でも全ての神様が嫌いってわけじゃないよ?」

「捨てる神あれば拾う神あり、ということか」

「そうだね。それに、怜と初詣に行くようになってからは、『間が悪かっただけ』なんじゃないかって思うようにもなったよ。まあそれはそれとして全知全能名乗ってる神はぶん殴りたくなっちゃうけど」

「なるほど。クリスマスが嫌いな理由ってそれもあるのか」

「Exactly」


と唯笑がいつもの調子に戻ってきたような軽口で肯定を返した後、神妙な顔で続けた。


「今回は泣いても笑っても最後。最善を尽くしてきたけれど、神頼みしてだって約束を果たしたい。私は、確かな明日がほしい」

「……」

「なんてね。さ、おみくじでも買おう?お守りは怜がくれたので充分だしっ」


怜は唯笑の言葉に何も返せず、そのまま勢いに負けておみくじコーナーにやってきてしまった。

普段なら即答していたが、まだ詳細を聞いていない以上、何を答えたらよいのか怜にはわからなかった。何を言っても気休めにしかならない気がした。今の自分では、知識とかから拾ってきた上っ面な言葉しか言えないだろう、と。


どう返答したらよかったかわからない。そんな迷いもありつつおみくじを引いた怜に、唯笑は先程までの暗い表情は何だったのか、陰を一切感じさせない様子で、「おみくじ見せ合いっこしようよ!」と提案する。


こんなに感情が揺れるなんて、ましてや引きずるなんて柄でもないだろう。

怜は自分を律し、こちらも何も気にしてないという体で「じゃあおみくじの結果が悪かったほうがぜんざいを奢ろう」と便乗する。

そしておみくじを同時に開くと、怜は大吉、唯笑は吉だった。特に『待ち人』の項目がよく、唯笑は賭けに負けたー!と悔しがりつつ、その項目を見て、「じゃあそろそろ顔合わせかな」とつぶやいた。


「顔合わせってことは……いよいよ唯笑の協力者とご対面か」

「うん。ちゃんとセッティングしとくから、楽しみにしててね」


「じゃ、ぜんざい買ってくるからちょっとまっててね」と言い残して売店へと去っていった唯笑を傍目に、怜は再度お参りの列に並んだ。今度はそこまで並んでいなかったので、大して待たずに本坪鈴のところまで辿り着いた。怜は再度賽銭を、合計が2525円になるようにと2520円だけ賽銭箱に入れ、二礼二拍手。少時間祈ってから一礼して去り、すぐ近くの売店で絵馬を買う。

唯笑が「ぜんざい買ったよ、怜!一緒に食べよー」と呼ぶ声が聞こえたので、怜は「待っててくれ、今すぐ行く」とだけ答えて絵馬に急いで書いて提げて、駆け足で唯笑の元に向かう。


「はい、ぜんざい。何しに行ってたの?」

「ああ、ありがとう。……実は、神社にはあまり行ったことがないんだが」

「そうなの?その割には結構慣れた感じでお参りしてたじゃん」

「まあ、知識はあるからな。だが、少し興味を引いたものがあったから、それをやってみたんだ」

「え、私も誘ってくれればいいのに」

「いや、本当に大したことではないから気にしないでくれ。……ん、このぜんざい美味いな」

「でしょー?このぜんざいね、神主さんが毎年作ってるんだ。代々神主が作る伝統があって、神社も厄除けがメインだから、このぜんざい食べたら厄除けになるとかなんとかで結構人気らしいよ」

「そうか……」

「でも、多分10年後にはこの神社、潰れちゃうね。神主は家族で継いでってるけど、今のおばあちゃん神主の後継者はいないし……潰れるわけにもいかない神社なんだけどなあ……」

「潰れるわけにはいかない?」

「ああ、こっちの話。……こればっかりは、世界を救済したってどうしようもないかあ」

「……難しいな」

「うん、本当、難しい」


そう言って、唯笑は猫舌だからと少し放置して温くなったぜんざいを口に運んだ。怜は半分ほどまでに減った自分のぜんざいを眺めていた。

ちなみに『神様税』とは父の受け売りです。

神社の人混みの中で言う勇気はありません(父は堂々と大声で言える人なので、全力で他人の振りをしますが)。


神社の仕組みはさっぱりわかりませんが、これはあくまで創作なので、この神社はそういう運営方式になっているということでお願いします()


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