101話
こんにちは。
昨日の戦闘シーンの続きです。
ではどうぞ。
冷や汗を拭っている間にも、高式は『魔力撃』を撃ち込んできた。『障壁』を展開して防ぎ、更に『土遁』を起動して俺のいる床を隆起させることで、追撃で放たれた『魔力撃』を防ぐ。
『魔装』を展開して剣を再度構え、その隆起した床を滑って降り、途中で跳躍して身体を回転させながら剣を横に薙いで斬りかかる。高式はナイフで受け止め、俺が着地して右、左と剣を振り下ろす。右はナイフで受け流して左をバック転で避けようとしたので、バック転の軌道を読んでもう一閃したが『決意』で軌道を逸らされた。
体勢を整えた高式が左、右とナイフを振り、それを剣で受け止めてから再度横に薙ぐと、高式もそれに合わせてナイフを構える。『魔力撃』を付与しているのを見て、『加速』を2倍指定で展開。剣を素早く振って連撃を繰り出し、大きく高式を弾く。
高式は身体を反らせながら着地して跳ね、俺も『魔力撃』を展開しながら跳ねる。俺に組付こうとした高式を『魔力撃』で突き放し、更に蹴飛ばす。ダメ押しに『身体強化』を再度起動してから距離を詰めて剣を振りかぶった。
高式は後ろに吹っ飛びながらもナイフを持ち替え、俺が振るった剣を受け止めた。『魔力撃』を互いに付与していたので、お互いに吹っ飛んでは『身体強化』『風来』『浮遊』を駆使して距離を戻して剣とナイフをぶつけ合う繰り返しが始まる。剣戟だけだったそれは、次第に体術も入り交じるようになる。
俺が『循環』を展開して高式を壁に叩きつけ、『魔装』で剣を飛ばす。紙一重で避けた高式に『魔力撃』の弾幕を大量に展開しながら距離を詰める。高式も難なく避けながら接近してくる。
まだ高式は笑みを浮かべている。
まだだ。まだ届いていない。もっと、もっと、
「もっとだ!」
雄叫びを上げて、俺が剣を横で薙ぐ。高式は後ろに跳んで躱し、『縮地』で更に距離を詰めてくる。ナイフを大きく振りかぶり、俺は剣で受け流してもう片方の剣で斬りかかる。ナイフを防いでいたほうの剣で再度斬る。
高式は跳躍して俺を飛び越し、俺の背後に着地したので瞬時に向き直り、高式が上、下とナイフを振っていたのを剣でまた防ぐ。『風来』で勢いを更につけて、互いに上下左右、縦横無尽に駆けながらがむしゃらに剣戟を響かせる。
その最中に高式が笑みを深め、悪寒がしたので『加速』を4倍指定で展開、高式の背後に回って剣を振り下ろす。『魔力撃』の効果で衝撃波が生じ、高式が吹っ飛んだ後、衝撃波で崩れた床の瓦礫を伝って移動し始めた。『風来』『浮遊』『循環』を同時に展開して剣で薙ぐが、これはナイフで受け止められる。『循環』をすかさず付与して別の瓦礫に叩きつけ、別の瓦礫に着地した。
目眩は益々ひどくなる。頭痛で思わず眉間を摘む。
……まだ舞える。だが、もうそろそろ決着をつけないと。
『循環』で何度も高式の身体を別の瓦礫に叩きつけるが、高式は受け身をとって『魔力撃』で斬撃を飛ばす。俺が跳んだ瞬間、俺が足場にしていた瓦礫は消し飛んだ。高式は更に別の瓦礫を足場にして跳びながら『魔力撃』を4つ飛ばすので、 『障壁』を展開して『浮遊』をその障壁に付与、それを足場にして空中を移動する。
『魔力撃』は俺を追尾しているのでしばらく逃げ続け、高式が俺へと距離を詰める時にこちらも接近するようルートを調整して、直撃するルートだったのを『決意』で介入してぎりぎりすれ違うよう改変する。追尾してきた『魔力撃』は目論見通り高式に直撃したが、高式は咄嗟に『障壁』を展開していたので無傷だった。
その後、高式は『稲光』を展開して他の残存するほぼ全ての瓦礫を消し飛ばし、大きく煙を立たせた。姿が視認しにくかったが、上から殺気を感じたので本能のままに急いで跳ぶと、足場にしていた『障壁』が斬られて、制御を失った魔術式が暴発して爆発した。高式は別の残っていた瓦礫を足場にして着地するが、俺に背を向けた構図になった。
俺も瓦礫に着地し、『魔力撃』を展開、付与した『魔装』の剣を構えて『縮地』『加速』2倍指定で突進する。ナイフで剣を受け止められた瞬間、『魔力撃』が起動して大きく爆発する。突進の勢いもあって思いっきり床に叩きつけられた高式の影に目掛けて手に持っていた剣の片方を投げ、『影縫い』で身動きを取れなくした。
そして、最後の切り札を使うことにした。
高式は鼻血を雑に拭って『影縫い』を解除すべく発光魔術を展開したが、不発に終わる。焦りを顕にして『実現』を使ったが、それすら不発に終わる。
そう。『覚悟』『決意』を併用して、『心象操作』で無意識で魔術、『異常性』を正しく使えないようにしたのだ。
これで、どう足掻いても身動きが取れないままだ。
「これで終わりにしよう」
もう魔力は尽きている。今から繰り出す攻撃を凌がれた場合、俺の勝ち筋はなくなる。
だが、これなら勝てる。そんな自信があった。
「動きは封じた。魔術も、『決意』も、『実現』まで封じた。お前のお得意の復活もこれなら出来ないだろ」
笑いながら、俺は、高式が咄嗟に構えたナイフを『稲光』で弾き飛ばす。高式は、冷や汗を流し、目を瞠っていた。
「チェックメイト」
そして、ひどい頭痛に耐えながら必死に構築していた、数千もの魔術式を一斉に展開、起動した。
100ほどの『循環』で地球の何十倍もの重力で高式を床に這いつくばるように叩きつけ、200ほどある『土遁』の柱を高式の周囲から高式の急所目掛けて勢いよく生やし、300ぐらいの『紅蓮』と『稲光』、200の『魔力撃』、100ほどの『魔装』の投剣で四方八方から高式を攻撃し尽くした。
大きく爆ぜて、煙が立った。俺はそれを見ながらひどい頭痛に苛まれ、しゃがみこんだ。
この攻撃で、魔力は本当に空になった。安定して魔術式を構築はできないだろう。
……だが、無事勝ててよかった。ふう、と安堵して、唯笑の元へとよろよろと近づいていく。
「唯笑。無事、勝てたぞ。少し休んでからにはなるが、どう世界を救うかこれから考えよう」
結界を解除し、『影縫い』も解除して、唯笑を安心させるべくそう声をかけた。
……が、唯笑の様子はおかしい。どうしようもない不安に襲われているようだ。
なんとかそれを取り除こうと、唯笑を抱きしめるべく更に歩を進めて。
「何を安心してるのかな?」
俺は目を見開いた。
煙が立ち上っている方を見れば、人影がよろよろとナイフを拾い、煙を薙いでいた。高式だ。高式が、なぜか復活している。
「……なんで、」
「まさか、この『僕』がここまで追い詰められるとは思わなかった」
呆然、愕然とする俺を置いて、高式はそう独り言ちた。
そして、「なんで、か。ま、冥土の土産に教えてあげようかな。もう対策しようがないだろうし」と話し始めた。
「真白は思い出せていなかったようだけど。『実現』には、『克服』という効果があってね」
その言葉だけで、俺はもう理解できてしまった。
嘘だ。
だって、それが真実ならば。
「『覚悟』を沢山受けたから、『克服』して無効化出来ちゃった。だから、『実現』で復活は可能だった」
やめろ。
もう、やめてくれ。
それじゃあ、提督、桜乃さんたち、拝郷の犠牲は。
司のショーも、黒守の覚悟も、拝郷の作戦まで。
「感謝しよう。君たちのこの作戦のお陰で、僕は無敵の存在となった。結局のところ、僕に『克服』される前に止めを刺さないといけなかったのさ。ま、一歩遅かったんだけどね」
「……」
「さっきから反応しないね。心折れたのかな?ま、いっか。どうせもう終わりだし」
高式はそう締めくくって、『身体強化』『風来』『魔力撃』『魔装』を同時に展開する。姿が見えなくなり、気づくと俺のすぐ背後まで接近してきていた。
魔力がないなりになんとかしなくては、と後ずさるも、高式は俺の胸ぐらを掴んでナイフを振りかぶった。
「チェックメイト」
そうニヤニヤしながら呟いた高式は、高笑いしながらナイフを俺の心臓目掛けて勢いよく突く。
魔力がろくに残っていない、どころか『実現』を使っているのか『決意』で軌道を曲げることも拘束を解くことすら叶わない俺には打つ手がない。『実現』の効果で『回復』すら使えないようにしているに違いない。
詰みだ。
俺は、来る痛みに備えて目を瞑った。
ー白く、温かい光を背から感じた。
今日は諸事情でそんな早く起きる必要もなかったけど、
なんとなく起きたのでもう投稿しちゃおうってなりました。
ちなみに、唯笑が何故『克服』について覚えていなかったのか解説。
『克服』は『毎回』発動される訳じゃなく、真白も1回しか見てない。それも体感『65年前』だった。つまり、情報の希薄さと風化のせいだね。
じゃあ覚えてたらどうなってたかといえば、拝郷の作戦を本気で止めただろうというくらい。
拝郷もそういった明確な根拠を聞いたら作戦変更はしただろうけど、逆に今度は代替案が浮かばなくてタイムリミットになっていたと思われる。




