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同じ空の下で  作者: 桜油
8章・終章
102/140

96話

こんにちは。


執筆が全く進みません。

時間がなかなか作れないんですよね。

なんならゲーム攻略すらできてませんし。


では、どうぞ。

夕方頃まで待機した後、俺と唯笑は指定されたポイントー国会議事堂跡地まで足を運んだ。

今回、司たちのショーの会場は桜坂駅付近の広場である。そこから近く、襲撃されても遮蔽物の多さから自衛しやすく、なおかつ接敵しても周囲への被害が軽微になりやすい、というのが理由になっている。

……『実現の魔女』を人類が打破し、封印を果たした所縁の地であるという歴史ある建物だし、俺の先祖がそこから政治を立て直したとか、他にも様々な験担ぎでここを指定しているような気もするし、案外『ここってラスボス戦の雰囲気にはめっちゃ合うよな』なんて理由のほうが拝郷らしくて笑える。


『配置についたか?』


拝郷からの『伝達』が入り、是と答えれば、桜乃さん達からも『大丈夫……覚悟はできているわ』『おうよ。やっちまえ』と返答があった。


『よし。……じゃ、ちょっくら世界でも救っちまおうかね』


という言葉と同時に、黄昏の空に大規模な魔術式が展開される。

間違いなく『心象操作』で、魔術式の内容を見れば、全員を攻撃的な性格に半永久的に変更するものだった。これなら暴動は起こるだろう。

俺たちが巻き込まれても無意味なので、俺も唯笑も『精神防護』を展開する。一応俺達を対象外にするとは言っていたが、念の為だ。


そして、案の定、そこら中で暴動が起こった。


『おい。とにかく今は隠れるからな』

『ぜひともそうしてくれ。怜たちが消耗するのが一番よくねえんだわ』

『1時間暇なのかあ……』

『ちゃんと周囲警戒しておくのよ?自衛くらいはしてなさいな』

『ま、極力近づけさせねーけどな。『実現』が来たら惹きつけつつそっちに誘導する。その時は合図出すから聞いとけよ?』

『了解』

『オレはもうちょい司達の様子を見てから怜たちのとこにでも行きますかね』

『来る時は連絡しろよ。お前がトレインしてきた時に備えるから』

『モーマンタイよ』


その言葉と同時に『伝達』が途切れ、外は騒々しくなった。

『隠蔽』を展開して気配を薄くして近くの瓦礫に隠れると、唯笑が欠伸をしてから俺と目があって、恥ずかしそうに視線を逸らした。苦笑を浮かべて、俺は言葉をかける。


「やっぱ作戦前であまり寝られなかったか?」

「うん……まあ。やっぱ心配とか緊張とか不安がね」

「そうか……少し休むか?俺が代わりに見張っておこう」

「いや、大丈夫だよ」

「眠気があったら存分に戦えないだろ?」

「正直、眠れる気がしないから。意味ないと思うんだよね」


たはは、なんて唯笑は笑うが、目の下の隈はそこそこ濃い。作戦前に限らず、眠れなかった夜が幾度もあったのだろうか。


「じゃあせめて目でも瞑っとけ。だいぶマシだろ」

「……うん。じゃ、お言葉に甘えて」


唯笑はそう言って座ったまま目を瞑る。俺が隣に腰掛けると、隣から「ねえ」と呼びかけられる。


「どうした?」

「ちょっと、話でもしよ」

「勿論。気の済むまで付き合おう」


唯笑の問いかけにそう即答すれば、「ありがと」なんて言って唯笑はぽつり、ぽつりと独り言ちる。


「5回。5回、私は独りで立ち尽くした。……もう、立ち尽くさなくていいんだよね?」

「そうだな。世界は救えるし、俺も傍にいる」

「数え切れない犠牲は出た。幸せに成ってほしかった人も一部、夢を捨てたり、亡くなってしまったりしたよね」

「……」

「けれど……約束は、誓いはしっかり果たせる。これ以上の結末なんて、きっと高望みかな」

「繰り返しはもう出来ないらしいしな。やぶ蛇だろう……ここから俺達ができることは、その犠牲を乗り越えて、想いを背負って、充実した人生を過ごすことくらいだ」

「うん……そうだね」


そこで会話は一旦途切れ、沈黙が流れる。唯笑は俺の肩に自身の頭を預けるように凭れてはいるが、まだ起きているようで。俺は唯笑の背中に腕を回して身体を支えつつ、口を開く。


「そういや、俺からも聞きたいことあったんだった」

「なあに?」

「数年前に言ってただろ?俺が世界を救う英雄と見立てたわけじゃないとか何とか。世界を救うなら、それこそ別の人の近くにいる選択肢もあったんじゃないか」

「うん?」

「俺は……唯笑がいてくれて、本当に良かったと思ってる。唯笑がいなかったら、今頃の俺はもっと空っぽだっただろう。今の俺がいるのは、間違いなく唯笑のおかげだ。……でも、俺の傍にいて、それで助けられる人を助けられなかったのなら」

「怜」


その声は、どこか張っていて。俺が声の方向を見れば、唯笑が俺をじとっと睨みつけていた。


「怒るよ?」

「え、……なんか、すまん」

「『なんかすまん』じゃないよ。何で怒ってるか分かってないでしょ?」

「う、」


たしかになぜ怒っているかはよくわからなかった。

言葉に詰まった俺に、やれやれ、とばかりにため息をついた唯笑が話を続けた。


「ちゃんと、説明するね。確かに、違う誰かを救えたかもしれないよ」

「……」

「けれど、私は怜と過ごしたこと、後悔してない。むしろ、『今回』は……色んな理由があるけれど、一番の理由は怜の傍にいたかったっていう私の我儘なんだよ」

「……俺、偽物なんだが。本物はどうでもいいのか?」

「怜が本当に始まった時。そこを起点にして考えなよ」


という言葉に、今一度考えてみた。

……本当の始まり。それは、『教会』幹部に襲撃されていた俺を唯笑が助けようとしてくれた日だろう。異論はあるだろうが、俺の主観ではそうなる。

もしくは、『前回』唯笑に声をかけられた時か。そこが俺のオリジンと言ってもいいからな。


「そこからの記憶は、感情は怜だけの本物。私は、今の怜を信じてる。だから、怜は自分を卑下するのはやめてね?」

「……分かった分かった。二度とそういうことは言わない」

「よろしい」


唯笑が満足げに微笑むが、「いや、答えは!?」と突っ込めば、「ありゃ、ばれてら」と悪戯がバレたように舌を出した。


「えー。結構言うの恥ずかしいんだけど。言わなきゃ駄目?」

「……逆に気になるだろ。恥ずかしい理由ってなんだよ」


「あー」「うー」と茹で蛸のようになりながら唯笑が悩むので、なぜか俺まで恥ずかしくなって、もういいと制止をしようとしたが、唯笑は意を決したように表情をきりりとした。


「確かに他の人についていけば、もっと多くの人を救えたかも。それこそ刹那さんは今頃も生きてたかもしれない、弟くんは心を病むことも無かったかもしれない、寿羽ちゃんは初恋を成就させてたかもだし、識名ちゃんも機械を悪用なんてさせなかったよね。……暁と育ちゃんのことも、ちゃんと気づいてあげられたかな……」

「……」

「でもね。それで諦めるには、怜はカッコよすぎたんだよ」


シンプルに、簡潔に、唯笑は反論を認めないような語調ではっきりと言い切った。

その言葉に俺は目を瞠り、「……何だソレ」と笑みを無理やり浮かべた。笑い飛ばそうと思ったが、存外難しかったのだ。油断すれば、忽ちだらしない顔になってしまいそうだった。


「怜。私、伝えたいことがあるの。だから、ちゃんと生きて世界を救おうね」


俺は黙って頷くので、精一杯だった。

外の喧騒が今だけは幸いに感じた。

やけに煩い心臓の鼓動の音を、聞かれずに済むと安心できたから。

筆者は恋愛経験皆無なので、いちゃいちゃシーンが戦闘描写と同じくらい書くのが難しく感じます。

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