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同じ空の下で  作者: 桜油
序章・1章
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7話

こんにちは。


今回は授業風景ですね。

異世界転生ものならともかく、普通に同じ世界に転生しただけの場合、

体は子ども、頭脳は大人な人からすれば、

普段の授業って、退屈だと感じるか別の視点から楽しむかの二択だと思います。


では、どうぞ。

それは、小学二年のとある授業時間中のことだった。


唐突に後ろから投げられてきた紙くずを、視認することもなくキャッチした怜は、中身を開いては「あー、いつものね。はいはい」といった態度で、らくがき帳を手元に用意した。


怜が唯笑と出会ってもう一年が経過した頃。精神年齢高校生以上である二人にとって小学校低学年の授業は退屈が過ぎるものである。それでも怜は一応真面目に受けようという意識があるのだが、唯笑は初回『教会』の少年兵をしていたことを考慮してもこれで六度目の小学校生活である。実際はもっと少ないかもしれないが、それにしたって唯笑にとっては怜以上に退屈であろうことは怜からしても想像に難くなく、案の定こうして唯笑の授業中の手紙でのやりとりにつきあわされるのだ。それも教諭に怒られないように見ていない隙を狙って、他の児童に迷惑がかからないようキャッチボール方式で。


なお、唯笑と怜は学校からも問題児扱いされているのか、担任直々に『お前らはずっと同じクラスな』と宣言されているし、職員室では『問題児トップツー』として恐れられているとか。怜は真面目に受けているつもりなので心外、解せないので今度抗議に行こうか悩んでいるが、抗議したところで論破されそうな気もしている今日この頃である。


そういうわけで、手紙のやり取りにノートを使うのはもったいないため裏紙やらくがき帳を使用している怜だったが、この日は違った。


『ファミチキください』

「ぶっっっっっっっっふぉ!?」


突然脳内で響いた声に、怜は思わず声を上げて爆笑してしまい、台パンを数回してしまった。


当然そんなことをすればクラス中から注目を浴びるわけで、教諭が目を三角にして、「おだまり!」とチョークを投げてくるのだが、今の怜は面白すぎてそれどころではなく、台パンを繰り返しつつも『障壁』の略式を展開、起動してチョークを弾いていた。


魔術を堂々と使用した上に、小学生ではまだ略式など取り扱わないので、ますますザワザワしだすのだが、やがて去年からの同級生や同じ孤児院の子供が「あんな人外見ちゃいけません、めっ!」と未だ騒ぐ子供に声をかけてやがて教室は怜の笑い声だけが響くようになった。教諭も相手をするだけ無駄と思ったのか、笑い声に負けないよう大きな声で授業を再開した。


やがて落ち着いた怜が深呼吸をし、事の元凶、唯笑に『伝達魔術』で話しかけた。


『いきなり『伝達』で遊ぶな!いきなりすぎて笑っちゃって悪目立ちしたじゃないか!』

『えー?でも『伝達』のほうがサボりはバレにくいじゃん?あと悪目立ち云々は今更じゃないかな?』


怜が唯笑の方を見てみれば、唯笑は肩を竦めていた。


『伝達』魔術。俗に言うテレパシーであり、魔術師御用達の魔術である。これができなければ、学問以外の分野で魔術師稼業はできないと言われるほどだ。魔術師以外でも、一般で『伝達』魔術の応用で拡声器や放送として使用される例もある。現にこの授業の教諭も、怜の笑い声を超える声量で授業を継続するべく、『伝達』魔術を使用しているのが見て取れる。

そしてこの魔術は密談や交渉にも使われるのだが、注意点が一つだけある。それは、やろうと思えば誰でも傍聴することができるということだ。傍聴対策をとらないことには密談には向いていない魔術であるのは共通認識なので、それこそ拝郷本音ほどのレベルでなければ抜けないほどの傍聴対策を取る魔術師が多いのだが、今回の『伝達』は全くそんな対策はされていなかった。


もっとも、このクラスの中にそんな技術を持っているやつなどいない。そう思っての唯笑の悪戯なのだろう。しかし、怜はたまたま見えてしまった。自分のすぐ前の席の男子が、唯笑の悪戯の『伝達』以降、どこか肩を震わせているのを。


あ、聞いてたやつだこれ。

怜がそう思い当たるまでにそう時間はかからなかった。


そう。『伝達』はその重要性、使用頻度の高さ故に、魔術師を本気で目指していれば6歳で習得している場合があり、その中で更に諜報の分野を目指していたら、塾の講師や親が出来心で傍聴の技術を教えていることもある。

7歳にして傍聴を使えるとは、なかなかやる。そう心の中で怜が彼を評価していた時、彼が魔術式をーそれも見る限り『伝達』魔術を、傍聴対策の設定はなかったものの、唯笑と怜を対象に指定されたものを展開し、瞬間、脳内に少年の声で、『ファミマください』と響いた。

怜は先程の唯笑の悪戯で耐性ができていた上に魔術式も見えていて予測可能だったので無反応を貫いたが、唯笑が『あれ聞こえてたの!?』と驚いている声が怜の脳内に、ーおそらく彼の脳内にも聞こえ、二人揃ってそちらで爆笑した。

結果、怜と少年は二人揃ってチョークを投げられ、とっさに『障壁』魔術を二人揃って起動したはいいものの少年が間に合わずにチョークがあたって気絶し、思わず怜と同類の扱いを少年にした結果怪我をさせた教諭が青ざめながら「衛生兵!衛生兵ー!」と騒いだ為、授業は敢え無く中断。怜はアーメンととりあえず合掌しておいた。


なお、翌日登校したところ、少年は『教会』の少年兵となったため転校措置となっていた。低学年では珍しいが高学年以降増えてくる光景である。もっとも、『教会』に勧誘されたのか親に入れられたのか塾の講師が『教会』と縁があったのかは不明だが、あのチョークの防御が間に合わないなら『教会』では十中八九数年以内に殉職するだろう。怜は割と心から御冥福をお祈りした。


これ以降、唯笑は必ず『伝達』魔術には傍聴対策の設定を入れるようになった。教訓である。

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