失職した。同棲中の彼女に追い出された。その後幼馴染に拾われた。結果、幸せになった
「汐崎くん。君、明日から来なくて良いから」
定時になったので、退社しようとした直前に、俺・汐崎仁は部長からそう告げられる。
突然の解雇通告に、俺の頭の中は真っ白になった。
……え? それって、要はクビってこと?
確かに営業成績が良いわけじゃないけど、全く会社に貢献していないわけじゃない。ミスだって、ここ数ヶ月していないし。
どうしてクビになるのか、全く見に覚えがない。すると部長は、申し訳なさそうに解雇の理由を話し始めた。
「実は主要取引先の一つが、倒産しちゃったんだよね。お陰で我が社も少なからず影響を受けることになってさ。そこで大々的なリストラを行なうことになって、汐崎くんもそのリストに入っちゃったってわけよ」
いや、そんな業務連絡みたいなノリで説明されても、困るんだけど。こっちはその業務連絡を、明日から出来なくなるんだよ?
会社を存続させる為にはやむを得ない決断とはいえ、いきなりリストラだなんて理不尽さを否めない。
リストラ以外に、方法はなかったのか? 俺じゃなきゃいけなかったのか? ……なんて、今更考えるだけ無駄だよな。
俺がどれだけ嘆いたところで、会社の方針は変わらない。俺が失職するという事実は、免れないのだ。
意気消沈しながら、俺は帰路に立つ。
俺には現在、同棲中の恋人がいる。果たしてリストラの件を、彼女にどうやって伝えるべきか?
いつもは長く感じる約1時間の通勤時間が、今日に限っては短く感じた。
結局妙案なんて浮かばない状態で、俺は自宅のドアの前に立った。
……悩んだってしょうがない。「リストラされました」と、素直に伝えるとしよう。
彼女なら一緒にこの窮地を乗り越えようと、優しく俺を励ましてくれる筈だ。
鍵を開け、俺は玄関の中に入る。
「ただいまー」
しかし恋人からの「おかえり」は、一向に聞こえてこない。
……テレビでも観ているのかな? それで俺の声が聞こえなかったとか?
リビングに向かうが、恋人の姿はなかった。キッチンも然り。
もしかして、買い物に行っているのか? そう思い始めた、その時……寝室の方から、声がするのが聞こえた。
まだ7時を回ったところだというのに、こんな時間から寝室に? もしかして、体調を崩しているのか?
俺が寝室のドアを開くと――ダブルベッドの中で、恋人が見知らぬ男と口付けを交わしていた。
『……』
流れる静寂。最初に口を開いたのは、恋人だった。
「……あんたが悪いのよ!」
俺を指差しながら、恋人は叫ぶ。
「仕事ばっかで、ろくにデートもしてくれない! 誕生日やクリスマスだって、ダサいプレゼントしか用意しない! あと給料が安くて全然贅沢させてくれない! そんな時、イケメンでお金持ちで優しい男の人と出逢ったら、そりゃあ浮気もしちゃうでしょうに! だから、あんたが悪いのよ!!!」
いやいや、そんなこと言われても……。
仕事ばっかなのは、生活費を賄う為だ。恋人のわがままで相場より家賃の高い部屋を借りているわけだし、やたらブランド物をせがまれるし。
その資金を、働いて稼がなければならない。
プレゼントがダサいのは、まぁごめんなさいなんだけど……よくよく考えてみたら、俺、誕生日もクリスマスもプレゼント貰ったことないよ?
給料が安いのは、会社に文句を言ってくれ。もうリストラされたけど。
それらを理由に浮気を正当化されても、正直罪悪感なんて微塵も抱かなかった。
「……いつから浮気してたんだ?」
「……半年くらい前から」
俺が彼女と同棲し始めたのは、およそ1年前。一緒に暮らし始めて半年で、俺は恋人を寝取られていたのか。
生活を共有して、二人の距離は少しずつでも縮まっていると思っていたんだけどな。どうやらそれは俺の勘違いだったようだ。
「……出てってよ」
恋人はそんなことを言い始める。
「もうあんたと一緒に生活するなんて無理! あんたの彼女でいるのなんて無理! だから今すぐ出て行って! そして二度と私の前に現れないで!」
浮気現場を目撃された恋人は、逆ギレして俺を糾弾し、俺の(ありもしない)非を理由に別れ話を持ちかける。
その上どさくさに紛れて俺を家から追い出そうとする。……ここの家賃、今まで俺が払っていたんだけど。
こうして俺は、職を失い、恋人を失い、挙句の果てに家まで失った。どれもこれも、理不尽な理由で。
つい昨日までは幸せな日常を送っていたのに……たった一日で全てを失うとか、本当、人生何が起こるかわかったもんじゃない。
最高だった昨日まで。最悪の今日。それじゃあ明日は、どうなるのだろうか?
明日どころか、数秒先の未来だって不透明だ。
今晩泊まる宿を探さなきゃいけないけれど……傷心しきった今の状態で、そんな気力が湧くわけもなく。俺は電柱に座り込み、コンビニで買ったビールを飲んでいた。
毎日多忙な業務に追われ、少しは自分の人生を見つめ直す時間が欲しいと思っていた。まさかその望みが、こんな形で叶うことになるなんて……なんとも皮肉なものだ。
ようやく手に入れた自由な時間を持て余していると、俺の目の前で一人の女性が立ち止まった。
見せ物じゃねーんだよ。冷やかしなら、どっか行ってくれ。
そう言おうと顔を上げると……
「あれ、仁くん?」
「……悠子か?」
そこにいたのは、数年来の幼馴染・四谷悠子だった。
「やっぱり、仁くんだ!」と言いながら、俺と目線を合わせるべく悠子はしゃがみ込む。
しかしすぐに鼻を摘んで、俺から距離を取った。
「うわっ、酒臭っ! 仁くん、どんだけ飲んだの?」
「……ちょっとだけだ」
「ちょっとって……」
悠子は俺のそばに置かれている空き缶の山を見る。積まれた空き缶は、10個を超えていた。
「この数がちょっとだったら、確実に一文なしになるよ。……ていうか、何で電柱の下なんかでお酒を飲んでいるの? それもこんな時間に? 普通なら、家に帰っていてもおかしくない時間だよね?」
「……色々あったんだよ」
「もしかして、彼女さんと喧嘩しちゃったとか?」
どうして嬉しそうに言うんだよ?
ニヤケ顔が癪に触ったので、俺はどこか棘のある口調で返した。
「……喧嘩じゃない。三行半を叩きつけられたんだ」
「……」
思っていた以上に深刻な事情だと察したのか、悠子はニヤつくのも俺を揶揄うのもやめた。
「えーと……取り敢えず、ウチで良かったら来る?」
職を失い、宿代も勿体ないと思い始めていた頃合いだ。俺は幼馴染の厚意に、素直に甘えることにした。
◇
悠子の自宅に着いた。
悠子の勧めで、まずはシャワー浴びて今日一日の疲れと嫌なことを洗い流す。
蛇口を捻ると水が出る。こんな当たり前のことでも、全てを失った後だととてもありがたく感じた。
シャワーを終え、リビングに向かうと、悠子が夕食を用意してくれていた。
「余り物ばっかりだけど、ごめんね」
そんなことない。こうして食事まで用意してくれるなんて、感謝しかない。
悠子も入浴を終えてから、俺たちは晩餐に入る。
食事中、悠子はやはり俺の「事情」を尋ねてきた。
「それで、何があったの? 彼女に別れ話を持ちかけられたなら、謝ってヨリを戻せば良いんじゃない?」
「それが出来れば良いんだけどな……」
謝るも何も、俺は悪いことをしていない。浮気をして、一方的に俺を悪者にして、理不尽に俺を追い出したのは彼女の方だ。
そういった愚痴も多分に混じえて、俺は悠子にリストラから始まった不幸の連鎖を語った。
話を聞いた悠子の反応はというと――
「はあああっ!? 何それ、信じられないっ!?」
まるで自分のことのように、激昂していた。
「突然リストラする会社も会社だし、浮気した挙句非を認めない彼女も彼女だし! そんなの、仁くんがかわいそうじゃん!」
「そう言って同情してくれるのは、この世界でも悠子だけだよ。ありがとう」
「いやいやいや。どう考えてもおかしいのは仁くんの周りだから。世間一般の常識人は、みんな仁くんの肩を持つから」
だけどそういった理不尽で出来ているのが、人生である。そう言われれば、それまでで。
運が悪かった。詰まるところ、俺の事情なんてその一言で片付いてしまうのだ。
「……ねぇ、仁くん。仁くんはこれからどうするつもりなの?」
「そうだなぁ……まずは仕事を見つけないとな。お金がないと、生きていけないし」
「住む場所は? 今まで住んでいたところは、クソア……元カノが占拠しているんでしょ?」
余程ご立腹なのか、恋人(元恋人というべきか)をクソアマ呼ばわりしようとした悠子に、俺は思わず吹き出しそうになった。
「まぁな。だから当分はネカフェにでも泊まろうと思う」
駅前を探せば、安いネカフェくらい見つかるだろう。問題は、貯金もろくにない現状でどのくらい宿泊出来るのかというところか。
早急に次の再就職先を見つけないと。
「だったらさ……ウチに住む?」
「……は?」
アルコールが入っているせいなのか、悠子がとんでもないことを言い出す。
ウチに住むって……この部屋に? 悠子と一緒に!?
「別に、変な意味じゃないから! 次の仕事と部屋が見つかるまでの措置っていうか。その……幼馴染として、放っておけないんだよ」
幼馴染といってもこの数年電話のやり取りすらなかったし、ほとんど他人のようなものだと思っていた。
まさか悠子がそこまで俺を大切に思ってくれているとは……。持つべきものは、クソみたいな恋人よりも最高の幼馴染だな。
「俺からしたら願ってもない提案なんだが……本当に良いのか? 幼馴染とはいえ、俺は男だぞ?」
「その辺で野垂れ死なれるよりマシだよ。その代わり共同生活を送るにあたって、家事を手伝ってもらうことになるけど」
「それは当たり前だ」
取り敢えず、夕食の洗い物をするとしよう。お金がないなら、家賃の分働かなければ。
俺が洗い物をしている間、悠子は「やることがある」と言って寝室へ向かった。
「仁くん。いくら共同生活をするにしても、互いの距離感は大切だと思うの。過干渉はなし。だから寝室だけは絶対に覗かないでね」
寝室に行く前、悠子にそう念押しされたわけだが、女性の寝室を勝手に覗く趣味はない。
そりゃあ大人になった幼馴染の寝室に全く興味がないと言えば嘘になるけど……悠子は幼馴染として、親切にしてくれたのだ。その優しさを裏切るわけにはいかない。
俺は煩悩を消し去るように、洗い物に集中した。
洗い物を終えたは良いものの、ここで一つの問題が発生する。食器をどこに片せば良いのかわからない。
悠子の部屋はキッチン含めて整頓されているし、テキトーに置くのも悪い気がする。なので一度悠子の指示を仰ぐことにした。
俺は寝室の前に行くと、ドアをノックする。
「おーい。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、良いかー?」
それなりに声を張り上げたつもりだったが……悠子からの返事はない。
しかし物音がするので、中に悠子がいることは確実だ。
もしかして……何かアクシデントがあってドアまで来れなかったり、声が出せない状況にあるんじゃないよな?
心配になった俺は、「ごめん!」と謝ってから、ドアを開けた。
「悠子、大丈夫か!?」
するとそこには――
「グヘヘヘヘヘ。仁くんと同棲だ。仁くんと同棲だぁ!」
なんともまぁだらしない表情の幼馴染の姿があった。
悠子が手に持っているのは、高校時代に失くしたはずの俺の体操着。
悠子は体操着に顔を埋めると、深呼吸をする。それも息を吸う割合の方が多いやつ。
「スーーーーハーー。ヤバい、幸せすぎてどうかしちゃいそう」
もう十分、どうかしてますけど?
俺はそっとドアを閉める。
過干渉はなしという決まりだ。今の光景は、見なかったことにしよう。
◇
悠子との共同生活は、びっくりするくらい上手くいっていた。
平日の日中は俺は就職活動に励み、悠子は仕事へ行く。
時間的余裕は俺の方があるので、炊事や洗濯、掃除は俺が積極的に行なっている。
元カノは働かないくせに家事もろくにしなかったけど、悠子は違う。
折角の休日なんだから休んで良いと言っているのに、「二人でやれば、早く終わるでしょ? 早く終わったら、余った時間でゲームでもしようよ」と言って無理矢理にでも手伝ってくる。
本当、良い女だ。悠子と生活を共にしていると、どうしてあの元カノと同棲していたのか不思議になってくる。
悠子と一緒に生活し始めて、早1ヶ月。俺には先週あたりから、薄々感じていることがあった。
悠子は多分、俺のことが好きなんだと思う。
俺の体操着をクンカクンカしたことは言うまでもなく、その他にも悠子は沢山の奇行をしている。
何かにつけて「可愛い」と言わせようとしてきたりとか、異常なまでにスキンシップが多かったりとか。
客観的に見ても、悠子は俺に好意を抱いてくれている。99パーセント間違いない。
しかし1パーセントの確率で、俺のことをただの幼馴染としか見ていない可能性が残されている。
だけどそれを直接確かめることは出来ない。悠子の胸の内を問いただすなんて、そんなの過干渉だ。
それからも悠子の気持ちを察していながら確かめることの出来ない日々が続き、やがて気持ちがモヤモヤし始めた。
この感情はあれだ。元カノと会ったばかりの頃に抱いていた感情だ。
要するに、俺は悠子に恋をしているのだ。
ミイラ取りがミイラになるじゃないけれど、まさか悠子の気持ちを確認する前に、俺の方が彼女に恋慕してしまうなんて。本当、人生ってのは何が起こるかわからない。
自身の恋心を自覚したならば、悠子の気持ちを確実に確かめる方法が生まれる。――そう、告白だ。
今晩もどうせゲームで対戦するんだろうし、彼女に勝てたらそのタイミングで告白するとしようかな。そう思っていた矢先に、一通のメールが入った。
メールの送信主は、元カノだった。
『許してあげるから、戻って来なさいよ』
許してあげるだと? ふざけんな。元カノの上から目線の物言いに、俺はカチンときた。
戻る気なんてこれっぽっちもないので、毎日のように送られてくるメッセージを無視し続けていると……元カノは、悠子の家まで押しかけてきた。
「仁、いる?」
「いるけど……どうしてここがわかったんだよ?」
「愛の力よ」
そう言う元カノの右手には、地図アプリの開かれたスマホが握られていた。……この女、いつの間に人のスマホにGPS仕掛けていたんだよ。
元カノが俺の手を握る。
「仁、戻ってきてよ」
「嫌だね」
俺は即答する。
「あの部屋はもうお前と新しい彼氏のものだろ? 俺のことなんか忘れて、新しい彼氏と思う存分イチャイチャすれば良いじゃないか」
「新しい彼氏? あれはそんなんじゃないわよ」
舌打ちしながら、元カノは言う。
「あの男、結婚していたの。その上子供までいたわ。つまり私は、あいつにとって遊び相手ってわけ。酷いと思わない?」
その酷いことと同じようなことを、お前もしていたと記憶しているが?
しかしどうして元カノが俺を呼び戻しに来たのか不思議だったが、今の彼女の発言を聞いてようやく合点がいった。
元カノは新しい恋人にフラれて、金がなくなったから、また俺に寄生しようとしているのだ。
「ねぇ、仁。私は仁のこと愛しているの。仁だって、私のこと愛しているわよね?」
瞳を潤ませながら、元カノは口先だけで俺への愛を語る。
かつての俺なら、その言葉を鵜呑みにしていたかもしれない。
だけど、今は違う。本当の意味で人に好かれることの喜びを、俺は知ってしまった。
他ならぬ悠子が教えてくれた。
「……ごめん。やっぱり戻れない」
「え? どうして……?」
「今の俺には、もっと大切なものが出来てしまったんだ」
俺が元カノの手を振り払うと、彼女の表情が一変した。
眉は吊り上がり、目つきは鋭くなる。
そして先程までの猫撫で声からは想像出来ないような声と口調で叫ぶのだった。
「ふざけんな! 今の私には、お金がないの! あんたがいなかったら、私はどうやって生活していけば良いのよ!」
いや、知らねーよ。
あまりに自分本位な主張に、怒りを通り越して呆れてくる。
「ねぇ、聞いてるの!? つべこべ言わずに、戻って来なさいよ!」
「何それ? バッカじゃないの」
我慢の限界を迎えたのか、悠子が冷ややかな言葉を元カノに向けた。
「あなた、そんな子供以下の理屈を口にして、恥ずかしくないの?」
「はあ? 私は当然の主張をしているだけだし。てか、あんた誰よ?」
「そんなの、決まってるじゃない」
悠子は俺の腕にしがみつく。
「仁くんの新しい同棲相手よ」
「……へぇ。要は泥棒猫ってこと?」
「私はあなたが捨てたものを拾っただけ。それを泥棒と呼ばれる筋合いはないよ。今更仁くんの良さに気付いたって、遅いんだから」
きっと悠子は、俺の良さにずっと前から気付いてくれていた。そこを好きになってくれた。
対して元カノは……今も俺のことを金づるとしか思っていないんだろうなぁ。
つい最近まであんなに好きだった筈なのに、今ではこれっぽっちも魅力を感じない。
「私は捨てない。一度はあんたみたいなクズ女に取られたんだ。もう二度と、仁くんを手放したりするもんか!」
ギューッと、俺の腕にしがみつく悠子の力が強くなる。俺は元カノに見せつけるように、そんな悠子の体を抱き寄せた。
「仁……絶対に後悔するよ」
「後悔ならもうしたさ。お前と付き合ったことが、俺の人生で一番の後悔だよ」
俺の言葉が火に油を注ぎ、元カノの怒りは爆発する。
「もう知らない!」という捨て台詞を残して、元カノは去っていった。
元カノが去って、もう仲良しカップルのフリなんてしなくて良いというのに、悠子は俺の腕から離れようとしなかった。
「……悠子、もう離れても良いんだぞ?」
「嫌。離さないって、言ったばかりじゃん」
その言葉は、元カノを追い出す為の方便ではなく紛れもない本心だったようだ。
「私ね、小さい頃からずっと仁くんのこと好きだったの。だけど仁くんには、他に好きな人がいて。その人と付き合って。私は……それが凄く悔しかった」
悠子は続ける。
「勇気を出せなかったから、私は仁くんの彼女になれなかった。だからもし、もう一度だけチャンスが訪れたら、その時は勇気を出すとしよう。そう心に決めてきた」
そして再びチャンスが巡ってきたというわけか。
この後に続く悠子のセリフなら、容易に想像がつく。それは――
「好きです。私を彼女にして下さい」
俺はあの日、職を失い、恋人を失い、家まで失った。その後電柱の下で、悠子に拾われた。
不幸だらけの人生だって? 確かにそうかもしれない。
でも少なくとも今の俺は、最高に幸せだった。




