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3/4

二人との思い出

そろそろ決着です


3話です

 小学校低学年の頃からの二人と遊んだ思い出を僕は覚えている範囲で振り返った。


(のぶ)君。こっちこっちー」

「明美ちゃん、ちょっと待ってよー」

「信兄ちゃん、まってー」

「危ないから手繋ごっか?」

「うん……」

「もう信君、おそいよー」

「ごめんごめん。それより優華ちゃん大丈夫?」

「あっうん、ありがとう。大丈夫……」

「これ見て!」

「あ、桜がたくさん並んでる!」

「でしょでしょ? この前家族と散歩した時に見つけたの」


 その道路の側面に並んでいる沢山の桜並木は綺麗な満開で、一面の景色がピンクに染め上げられていた。


「すごいね明美ちゃん! 僕とても感動したよ! ね、優華ちゃん、桜、綺麗だねっ」

「うん、凄い綺麗……」

「これ見つけた私凄くない?」

「え? うん、明美ちゃん凄い!」

「ふふ、そうでしょー!」


 小学校高学年の頃の思い出。


「あ、信兄ちゃん、鞄忘れてない?」

「あ、いけね。忘れてた」

「ちょっと待っててね。取ってくるから」

「早く公園行こー」

「待って、優華ちゃんが僕の忘れた鞄を取りに行ってくれてるから」

「もー、何やってんのよー」

「ごめんって」

「はーい、持ってきたよー」

「うん。ありがとう優華ちゃん」

「そんなことより早く行こー」


 そして天野家から近くにある公園に行くと、いつも遊ぶ様々な遊具がある。


「どれにする?」

「今日は私これに登りたい」

「え? これって木じゃん!」

「うん、そう」

「危ないから止めといたら?」

「大丈夫よ! 見ててっ」


 そして明美はすらすらといとも簡単に登り、すっすっと降りてきた。


「す、すげー……」

「信君もやってみて」

「え!? 出来るかな……」

「出来る出来る。私が出来たんだから大丈夫よ!」

「う、うん……」

「信兄、無理しなくて良いよ」

「なに言ってるの優華。信君は男の子だから大丈夫よ」

「でも……」

「分かった、やるよ!」

「お、さすが!」

「気をつけてね。私が近くで見てるから」


 そして子供の頃の僕はおそるおそる木の割れ目に足を引っかける。しかし50cm登った辺りだろうか、震えてしまって足を滑らせてあろうことかそこから落ちてしまった。


「わっ! いったー」

「信兄大丈夫!?」

「もー、信君どんくさーいw」

「あー! 脚から血が出てる! 待ってて。今すぐ絆創膏取ってくるから!」


 そして中学時代、僕は明美に告白され、生まれて初めての彼女が出来た。


「信君、その……好きよ。やっぱり私は貴方といると自分らしくいられるの」

「え? 本当?」

「えぇ……、だからその……付き合わない?」


 いつもマイペースに生きてる彼女の初めて恥じらう姿を見た。僕は彼女なりに勇気を振り絞って告白してくれたことにとても嬉しかったのを覚えている。


「うん、良いよ」

「ありがとう信君」


 告白に成功した彼女はとても純粋で嬉しそうだった。


「これからは互いに支え合って生きましょう」

「うん、そうだね!」


 それからの彼女の努力は凄かった。元々の才能はあったのだろうが、勉強、スポーツ、料理と彼女は自分の身の回りのことを懸命に頑張っていた。僕はその努力に感銘を受け、彼女を支えようと思ったのだ。

 一方僕が部活をしている時のことだ。


「あっ、いっつー……」

「あ、マメが出来てますね。待ってて下さい、絆創膏とサポーター持ってきますから」

「あ、ありがとう。優華ちゃん」

「良いんですよ、先輩。こういうのは持ちつ持たれつです」


 そして僕は二人の印象に残っている言葉が月日を経るように交互に蘇る。


「私良いお嫁さんになるために頑張るから」

「先輩、私といるときぐらいは気楽にいて下さい」

「信君、次はショッピングに行きたい」

「先輩、一緒に片付けしましょう」

「次はあれ取って~」

「先輩、手伝いましょうか?」

「もう、何やってんのよ! この馬鹿!」

「先輩顔色悪いですよ、大丈夫ですか?」

「早く持ってきてよ! ほんとのろ間で愚図なんだから!」

「先輩、私はいつでも先輩の味方ですからね」


 ……そうか。僕が本当に支えるべき相手は……、


「分かったよ……」

「信君……」

「先輩……?」


 嬉しそうに涙をこぼす明美と声を震わす優華ちゃん。そして決意した僕は明美に近づいてこう言った。


「やっぱり僕はお前とは付き合えない」

「…………え?」

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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