モラハラ彼女と部活の後輩ちゃん
新連載ですが、全4話予定
1話です
「信君、信君ー♪」
そう僕の名を呼び掛けるのは幼い頃の幼馴染で僕の彼女だ。天野明美、現在高校2年生。学校では人気者の超絶美少女で、綺麗な長髪の黒髪で目はぱっちりしている。勉強が出来、スポーツ万能、おまけに周りに優しく、友達の面倒見が良い。学校内では『北高の天使』と言われ、彼女への男女問わないファンがものすごく多い。だから周りから彼氏である僕こと草野信憲へのやっかみが凄い。
「いいなー、草野。あんな超絶美少女が彼女とか羨ましすぎ」
「ほんと、どんだけ徳積めば天野さんの彼氏になれるんだよ」
確かに明美は自慢すべき彼女である。僕から見ても輝かしい存在だ。しかし彼らは彼女の本当の姿を知らない。僕と二人きりの時になると、
「どうして私が20秒も待たされないといけないの!?」
「部活があって……」
「はあ!? 言い訳するなっ、この愚図!」
「ご、ごめんっっ」
「本当、あんたってほとほと使えない彼氏ねっ」
「……」
ものすごいモラハラが酷い。彼女は高校デビューして周りからの注目を浴びるようになってから、学校からのストレスからか僕に八つ当たりをするようになった。しかし僕は知っている。彼女の性格が本当は優しいことを。
「先輩大丈夫ですか?」
「優華ちゃん……」
彼女は僕の部活の後輩で、明美の従妹である。彼女は前髪長めの少し地味めな子だが、昔から優しく温厚で、彼女とも昔から僕と遊んだ仲の良い相手だ。
「本当に明美ちゃんがあんな感じで、従妹として謝ります。ごめんなさい」
「良いよ別に。明美とは恋人同士なんだから」
「……でも、ずっと前から先輩の顔色が悪いから」
「そ、そんなことないよ。いつも通りピンピンしているさ」
「……いつでも相談にのってくださいね。お伺いしますから」
「うん、ありがとう……」
けど僕には明美との約束がある。あれは中学2年の明美から告白された時に言われた言葉だ。
「これからは互いに支え合って生きましょう」
僕はそれ以来明美を甲斐甲斐しく尽くしてきた。それに明美のことを子供の頃から知っている僕だ。多分こんな状態なのは今の間だけだ。そう苦しいのは今だけ。そのうち前みたいに仲良く出来るさ。
「別れましょ?」
「え?」
明美、今なんて……。
「な、なんで……」
「なんでって、そんなことも分からないの? ここまで馬鹿だとは思わなかったわ」
「え?」
「あんたみたいなやつれて気持ち悪い男、私の近くにいるだけで目障りだし、見ているだけで不快よ」
「いままでお前のために頑張ってきたのに……」
「なら最後の奉仕として私と別れなさい。私の彼氏にいられただけで感謝してほしいわ」
「……あ、あの時お互いに支え合って生きていこうって約束したじゃないか……」
「ぷっ、そんな子供の頃の言葉を真に受けてっ、キモwww」
「……」
僕はこれ以上言う言葉が思いつかず、呆然と立ち尽くした。そして気づいたら帰り道に通る橋から夕日の映る川を眺めていた。
「僕は付き合ってからの人生を明美に尽くしてきたのに……。これから何を糧に生きていけば……」
そんな僕のちっぽけな悩みなんか関係なく夕焼けの反射でキラキラ光る川の水面を見惚れていると、横腹に衝撃が走る。
「先輩死んじゃ駄目ーー!!」
「ぐわーー!!」
僕はそのまま橋の上に倒れる。
「いてて……」
「先輩死んじゃ駄目ですー! 死んでしまったら私……」
「優華……ちゃん……?」
僕の上に乗って泣いているのは僕の後輩である優華ちゃんだった。
「死ぬって一体……」
「ずーと川見てたじゃないですか! しかもめっちゃ下の方吸い込まれるように見てたし!」
「いやいや、別に死ぬつもりはなかったさ……」
「……けど明美ちゃんから聞きました。明美ちゃんと別れたそうですね」
「! 聞いたのか」
「はい。先輩が今日部活に来なかったので、明美ちゃんに訊いたらそう返信が来たので」
「……そうか」
やっぱり夢じゃなかったのか…………。
「……」
「だから明美ちゃんにフラれたぐらいで死なないで下さい」
「大げさだよ。そこまではしないさ。……でも」
「でも?」
「これからどう生きていけば良いか……」
「それなら自分の好きなことを思い出して、好きな道に進みましょう」
「?」
「私に任せて下さい!!」
そして僕と、後輩ちゃんである土井優華との新たな関係が始まった。
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