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いやぁ、詰んだよね。あっはははは!!!!
魔法ねぇ、魔法かぁ。どうやって使うんだろう。
よく見る漫画とか、アニメとかの知識を活かして、身体の内にあるかもしれない魔力を探ろうとするけど、まず身体の内というのがよく分からないので詰み。
何?身体の内って?心臓?肝臓?膵臓?それとも骨?
分かんないや。
魔法を使えるのが大前提っぽいしなぁ、聞きづらいんだよね。しかも、なんか普通に強者と勘違いされてるような気がするし。
「んっ。トイレ行きたくなって来たわ。行ってくるわね。」
「行ってらっしゃい。」
そう言って、フェイはベットから立つと部屋の外に出て行く。まぁ、寮だもんね。見る限りではお風呂も、トイレもない。部屋が一室あるだけ。けども、狭く無い。普通に広い。
本棚だって、二、三個あるし。
……本!!!!本だ。フェイは魔女だし、本に魔法の使い方が書いてあるかもしれない!!
そう思い、私は本棚の本の背表紙を見る。
馬鹿でも分かる魔法、とかを探す。
そこで異世界だと分からされる。というか普通はもっと早くに直面する問題と直面する。
よ、読めない。象形文字?アラビア語?みたいな文字の本もあるし、筆記体のような文字の本もある。
普通に喋れるんだから、そこぐらいまでサービスしてよ!!!!
いやいや、喋れて、読めないとかほんとクソだから。どんだけ雑なの?
読めるようになってよ!なって、ほら!!さぁ!!さぁ、さぁ、さぁ!!!!
……くそっ。なんか強く願えば、それが魔法となって解読の魔法とかにならないかなぁ、と思ったけどならない。
念か?念を込めれば魔法となって、読めるようになるのか?
異世界なんだから解読の魔法くらいあるでしょ?という前提が間違っているのかな?
ってか、目の前をチラチラと横切るきキショい魔力、消えて欲しいんだけど。邪魔でしか無い。
私があぁでもない、こうでも無いと、やってるとガチャっと音がしてドアが開く。
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
「なんだか、同棲してるみたいね。」
ふふっ、と声を出してフェイが笑う。フェイがただいまと言わなければ黒い靄が体を覆っているのでフェイってことすら分からなかっただろう。
やばいなぁ。
誰が誰だか分からないって結構キツいね。もう、魔法を使えないって正直に言う?
でもなぁ、もしも魔法が使えないのなら生物ではない、とか言う価値観が有ればどんな末路が用意されてるか分かったものじゃない。
それに、そうじゃなくともフェイは私を強者と勘違いしているからこそ、ここまで良くしているのかもしれない。
そう考えると言い出せない。
「楓、この部屋の鍵を知りたいかしら?」
鍵を知る?どうゆうこと?というか鍵って安易に他人に渡していいものじゃなくない?
「えっ、そんな簡単に教えていいの?」
「普通は駄目よ。でも、楓になら襲われてもいいわ。」
……これなんて答えれば正解なの?……嬉しい?嬉しいでいいのかな?というか普通に鍵が知る、の理由を知りたいし。嬉しいって言えば、教えてくれる可能性大そうだし、そんな感じでいっか。
「そう?嬉しい。」
そう言うとフェイが息を飲む音がした。
「私も嬉しいわ、ほんと。ちょっと待ってね。」
フェイがそのまま本棚の前に立ち、とある古ぼけた本を一冊手に取る。そして、本を広げて、一枚の紙を取り出す。
その紙をテーブルの上に置く。そこには人間の心臓に蛇がとぐろを巻いて巻きついている絵。
何これ?これが鍵?
「流石に閉開の魔法くらいは知ってるわよね?」
いや、知らないです。
「いや、知らない。」
「うそっ、貴方はこれまでどうやって生活してきたのよ。考えられないわ。」
普通に生活してきましたけど?
「とんでもない山奥が実家なんだ。だから、こんなにデカい町に来たのも学校とかを除いたら始めて。」
「……凄いわね。寮生活どうしてるのよ。心配だわ。」
何で寮生活?なんでだ?
私、普通に実家暮らしなんだけど?