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き、汚い。
フェイの部屋は凄い汚い。足の踏み場はあるにはあるけど、少ない。女性用の下着、何処に使う用なのかよく分かんない人間の物では無い下着など、いろんな下着が散乱している。それに魔女の服。
それで、あの映画とか漫画とかでよく見る魔女がグツグツと煮込んでいるのが似合いそうな大きな黒い鍋がある。あと大きなベットも。テーブルがベットの前にある。
テレビや、パソコンといった電化製品がどこにも見当たらないだけで凄い印象が変わる。だけども、テントとか町には光源があったように、此処にも光源であるランプが数個、天井から吊るされている。そして、顕微鏡のような物やフラスコなども見られるので実験室という印象も受ける。
私はテントやアウトドアで使うようなランプが気になり、見ると、中に蝋燭などがあるわけでは無くて電気で付いている。
電気はあるんだ。でも、電化製品は無い。
何処に座っていいんだろう?とキョロキョロとする。
「楓。ローブと帽子は此処に置いてくれるかしら?それと適当に座っといて。カルト茶は飲める?」
此処と、フェイがローブと帽子を置いてある帽子掛けスタンドを指差す。そして、私はベットにちょこんと座る。
カルト茶?なにそれぇ。紅茶の一種かな?いや、でもそしたら飲める?って聞かな……紅茶苦手の人もいるからあるね。紅茶だろうか。
フェイが杖を……杖だ!?!?凄い!!魔女が杖、使ってる!?!?いや、魔女だから杖は使うか。
杖をひょいっとすると、火が出てきて鍋を煮立ち始める。そこに茶葉のような物を数種類入れる。
「ありがとう。飲めるよ。」
「やっぱり飲めるんだ。それだけ魔力が濃ければ余裕かしら?」
あれ?ミスった?なに?まりょく?……魔力?
……おぉ!魔力。魔法があるならそういうのもあるか。私は魔力が濃いんだ!!へぇ、いいじゃん。なんかよく分かんないけど強そう。
さぁ、どう答えよう。どうやら、飲むのに魔力の濃さ?が必要らしい。
余裕?余裕ってなんだ。お茶に余裕も難しいも無いでしょ。茶が付いてるから、きっとお茶なんだよね?そこから違うってのは無いよね?茶葉っぽいのいれてたし、大丈夫だと思うけど。
どうしよう。異世界のお茶が気になって飲めるって言ったけど、その物を知らないんだよなぁ。
「余裕だよ、私くらいになれば。」
「へぇ、どんな味に感じるの?」
どんな味!?!?
え、魔力の濃さで味が変わるの!?!?
「甘い。」
「えっ、凄いわ。あれが甘く感じるなんて凄いわね。」
おぉ?どうなんだ?これは上手くいったのかな?
「じゃあ、効果も絶大って感じなのかしら?」
……どんなお茶?効果?効果ときたかぁ。
「いや、効果はまぁ、そこそこかな。最近では飲まないから、覚えて無いかな。」
最近では、飲、ま、な、い、か、ら。飲んだこと無いやつがなんか言ってるよ。
「逆に飲んだ事があるのにビックリよ。魔女でもないと飲まないと思ってた。」
じゃあ、正直に知らないって言ってよかったじゃん。それで飲まして貰えばよかったじゃん。
「そうだよ。私が飲んでみたかったら飲んだだけだから、私がおかしいんだと思う。」
「それで飲めるのが凄いわよ。」
ジト目で呆れたように見られるけど何に呆れられているのかが分からないから、普通に怖い。どんなお茶が出てくるんだろう。でも、楽しみではある。
きっと変なお茶が出てくる事になっても、楽しめる気がする。だって、魔女とお茶するんだよ?普通に興奮してる。ハリウッド俳優とお茶できると言って興奮しない人はいないだろう。それとおんなじだ。いや、それ以上だ。
お茶が出来たようで、「はい。」とカルト茶が入ったマグカップを二つ置く。そして、二人並んでベットに座る。
私はカルト茶を見てみる。最初は茶色、と思ったが次の瞬間には紫、また次の瞬間には茶色と、どうやら光の反射で紫と茶色、どちらにも見えるらしい。おかしいけども、そう見える。
私は「いただきます。」と小声で言って、マグカップを持ち口の近くに持ってくる。匂いは甘い。砂糖が気化しているように甘い。
甘すぎるって可能性が出てきた。甘い、って適当に言ったけど本当に甘いんだ。
意を決して、口に含む。
ーーーーーーーーえ、凄い美味い。
甘すぎる匂いとは考えられない程に程よい甘さがある。カカオ五十パーセントほどのチョコレートの甘さ。そして、甘さ以外のほんのりある苦み。
これ、紅茶に近い。紅茶にチョコレートぶち込めばこうなりそう。けども、繊細さがある。ぶち込んだだけでは出来ない絶妙なバランスがある。
「美味しい。」
そう言って、横のフェイを見るとフェイが黒い靄に包まれて、黒ずくめになっている。
え!?と思って周りを見ると視界に、黒、白、赤、青などの霧状の形容し難い形をしたものがいくつも浮かんでいる。それらはゆっくりと不規則に宙を漂っている。
なにこれ、きっしょ。
効果って……これ?幻覚作用ってこと?
「凄いわね。ほんとに美味しく感じるのね。私には苦すぎるわ。」
あ、黒いのが喋った。やっぱり横にいるのはフェイだ。
「うん、美味しい。」
「それでどう?効果は。」
「あぁ、結構出てる、かな?」
これが軽い方なのか重い方なのかすら分からない。
「もしかして、色まで見えちゃう感じかしら?」
「そんな感じ。」
「……それは凄いわね。」
凄い方の効果らしい。
「私には魔力が濃いのか薄いのかがいつもよりもはっきりと分かる程度よ。」
すごっ。……あ、じゃあ、これもしかして魔力!?!?
え、きっしょ。うわぁ、知りたくなかったぁ。
効果は魔力がいつもよりもはっきりと見えるようになるって感じかな?で、見えて無かった私が此処まで見えるようになったのは、きっと魔力の濃さが影響してるんだろう。そこでしか、フェイと私に違いはないし。私は別に人外の血が入ってるわけでもないけど。きっとそこの差異だろう。
「これって効果はどれくらいで切れるっけ?」
「一回、軽い魔法でも使えば消えるわよ。魔力をやや暴走させて、眼に負担をかけてるだけだから。一回、魔法を使えば暴走が落ち着くわよ。というかなんで知らないのよ。」
馬鹿なの?とつきそうな声でフェイは言う。
ーーーーーーーーってか、あぁ、うん。詰んだ!!!!!!!!