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どうしよう。思ってた数倍は強かった。
ムキムキのマッチョを想像してたら、急にゴリラが出てきた。人の骨を抱きしめただけで折るって、もうゴリラじゃん。ゴリラ・ゴリラ・ゴリラじゃん。
え?魔女って筋肉いる?
「でしかも、人間と淫魔のハーフだったらしいわ。名前もプリティー・プリマドンナっていう可愛らしいものよ。」
キャラつっよ。強すぎて、もう魔法使いが薄れて仕方ないよ。魔法使いなんてモテないだけじゃん。
「それでね、魔法使いは魔女との子を二十二人残して、結構生活六年目のおめでたい日にテクノブレイクで死んだらしいわ。悲しい話よ。」
遠い目をして語るフェイ。
私はなんだか悲しい気持ちになった。残念すぎる。それが後世に残ってるのがかわいそうでしかない。似たような話がギリシャ神話の中にあっても私は驚かない。
「そして、お葬式が開かれることになったの。魔法使いと生前、親交があった同じようなモテない魔法使いがいっぱい来たらしいわ。そして、不思議な話だけども、魔法使いの六回忌までにまた魔女は二十二人の子を産んだらしいわ。」
「うっわ。うっわ。うっわ。……うっわぁ。」
「まぁ、それでね。魔女が生んだ子供達は何故か、二人を除いて、みんな女の子だったらしいわ。それで親が魔女なものだから、女の子はみんな立派な魔女に育ったわ。しかも美形の。」
「へぇ。」
「そしてまた六年が経つ頃には、また魔女はその間に二十二人もの子供を産んだわ。この頃にはもうちょっとした町になってたらしいわ。」
「んん!?」
私はギョッとなってフェイを見る。
いやいや、なんで二十二人もまた産まれてるの!?相手は!?まさか、まさかだけど、え……二人は男の子だったんだよね……いや、これ以上はやめておこう。
「大丈夫よ。息子との子は二人だけよ。」
何処が大丈夫なの!?!?駄目でしょ!?
「……この町ではあの、その、オーケーなの?」
「いや、流石に自分の子供との子は駄目よ。」
だよね!!あぁ、よかった。愛の形は人それぞれだし否定はしないけど、流石に、ね?
「まぁ、人間以外であれば大丈夫なんだけどね。ハーフはギリギリアウトよ。」
……人間以外ならいいんだ。
「でね、他の子供は橋を通る商人との子よ。隣国から本国に向かうならこの橋を使うのが一番だからね。そして、この橋を通った人間やエルフとか、悪魔とかと子供を作ったってわけ。」
「へぇ。」
「で、その子供達も商人とかとくっついてどんどんと町は発展していったの。工場が多いのは商人が多いからよ。」
そうやって、今に至ると。ん、でも、なんで商人もいるのに魔法使いの格好した人だらけなんだろう。私が知らないだけでこの世界では商人はみんな魔法使いの格好をするんだろうか。
「商人がいっぱいいるなら、なんで人間はみんな魔法使いっぽい格好してるの?」
「この町のボスの身内ですよっていう証明よ。人間は数は多いけど弱いじゃない。だから、後ろ盾がいるのよ。」
なるほどね。というか子孫だらけの町なら、フェイも。
「あら、気づいたかしら?私も魔女の子孫よ。孫にあたるわ。」
え?孫なの?もっと離れてるかと思った。
「何を驚いてるのよ。」
「いや、フェイは年上なのかな?と思って。」
「私は十四歳よ。……おばあちゃんは生きてるわよ?」
あれ?じゃあ、割と最近の話なの?
「こないだ、おばあちゃんの千歳の誕生日が盛大に行われたばっかなのよね。来るなら、その時に来たら良かったのに。」
……三百年前でしたかぁ。千歳ってもう、木じゃん。
「ごめん。そんな祭りがあったの知らなかったんだ。」
私は手を合わせて謝る。
「そうでしょうね。さ、着いたわよ。」
え?何処に?そう思って、フェイの指差す方を見ると、三階建てくらいの普通の屋根がオレンジ色のレンガで壁が真っ白な他と似たような細長い、アパートみたいな建物があった。大きな扉の上には、『魔女学院寮 マザーオウル』と書いてある。
「此処がどうしたの?」
私はきょとんとしてフェイに聞く。
「私が住んでる寮よ。二足歩行で二メートルほどの知性がある生き物が適正だからベットが大きいのよ。だから、二人でも寝れるわ。」
「おぉ!!」
だから、扉が大きいんだ。でも、ならなんでオウル?オウルって梟だよね?
フェイについて行き、扉に入る。
「おかえりなさい。フェイ。」
……でっか。建物に入るとみんなでかかった。扉も、玄関も、下駄箱も全てがデカい。というか土禁なんだ。天井も高い。小学生の低学年に戻った気分だ。外から見ると三階建てと思ったけど、二階建てじゃん。
それと梟がいた。エプロンつけて服を着た梟が喋って、受け付けに立っている。あと胸がデカい。確かにマザーだ。
「ただいま。マザー。友達連れてきたけどいい?」
「あらま。ほんとだ。可愛いらしい友達ね。」
二つのデカい目が私を見る。怖い。梟の眼って怖い。まん丸で引きずり込まれそうになる。
「どうも。」
そう言って、私はペコっとお辞儀する。
「さ、行くわよ。此処で靴を脱いでね。そしたら、この箱に靴を入れるの。綺麗だから、靴を脱いでも大丈夫よ。」
あ、靴を脱ぐ文化じゃないとこから来てると思われてる。ということは、他の場所だと土足の場所もあるのかもね。
私は靴を脱いで、靴をデカい下駄箱に入れる。
「壁はそんなに厚くないから、あんまり声を上げないのよ。フェイ。」
「分かってるわ。」
壁薄いからネタってこっちでもあるんだ。
「私の部屋は二階よ。階段はこっち。」
いや、階段でかっ!?
人物紹介です。人選が可笑しい二人だけだけどね。
蜥蜴のおっさん
個体名:アーカリソンJr.
分類:ドラゴン科 鎧獣族 鎧蜥蜴種
性別:オス
年齢:四十歳
紹介文:実はお嫁さんが四人もいる。一人はおっさん家の近くにある行きつけのスナックのママ(人間)。もう一人はそのスナックのママの元旦那(鎧蜥蜴)さんである。此処から分かるように、なかなかに雑食である。筋肉にがっちりと包まれたい気分の時にママの元旦那さんを誘惑してしまい一夜の過ちを犯した。それに目敏く気づいたママさんと大喧嘩の後に愛が目覚め、二人と結婚。
残りの二人は双子のエルフ(メスとオス)である。常識であるがエルフは容姿が整っており、おっさんが美少年にハマっている時にナンパした。最初はどちらもオスだと思っていた。
本作では一番性欲が強い。
年齢は人間年齢で十歳である。まだまだ成長期。これからも、おっさんはデカくなる。
大賢者ラムダルイス(松田)
分類:純粋な魔ジン亜族
性別:オス
年齢:196歳(没)
紹介文:馬鹿でクズ。お酒大好きの酒っカス。女大好き。だけども浮気したことは無い。その生涯で愛したのはプリティー・プリマドンナのみである。割と一途な男。
そして、もちろん異世界転生した社畜である。生前と転生後で顔が変わらない事にショックを受けて、六年は引きこもった。
テンプレ通りに魔法の扱いに長けており、当時ではあるが魔法使いの中で世界の十指には入るほど強かった。百歳という若さで国王から賢者の称号を与えられた天才である。もちろん天狗になってしまった。世界取れんじゃね?と調子に乗った馬鹿は世界一の魔法使いに勝負を挑み、もちろん負けて、その戦いで脊髄、左脳、下半身、右手を失った。十年間、自分に治癒魔法、聖魔法をかけ続けて全治した。馬鹿は死にかけても馬鹿なので、治った瞬間にリベンジしにいって、今度は両手両足で済んだ。これに喜んだ馬鹿は完治するたびにリベンジしに行くという狂気っぷりを見せた。
ここまで不死っぷりを見せつけたのに死因がテクノブレイクだというのはほんと馬鹿だと思う。死に顔はとてもスッキリとしており、満足気で、笑顔だったらしい。