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「大丈夫?お姉さん。もしかして、箒に乗ったの初めて?」
「う、うん。」
恐怖で震えた声でそう頷く。
「もうすぐ着くから我慢してね。」
「わ、分かった。」
するとスピードが上がったのを勘がいい目を瞑っている私は気づいた。魔女っ子からしてみれば直ぐに終わらしてあげようという親切心かもしれないけど、私からしてみれば恐怖でしかないわけで。ちびりそうなくらい怖い。
でも、不思議なことに目を開けてしまった。
「わぁ。」
感嘆の声が出た。街が見える。
いや、街というよりは橋だった。私が歩いていた道の先に底が見えない渓谷に架かるようにデカい橋がある。その橋の長さは、とても長く、ゆうに十キロ以上はありそうだ。橋の上には街が出来ていて、煙を上げる工場。オレンジ色の煉瓦が特徴的な家の屋根が橋を塗りつぶすように建っている。そして橋の中心ではモクモクと煙を上げる紅い車両の蒸気機関車が走っている。他はオレンジ色と工場の煙突で染められているのに中央の電車の線路だけはバッチリと此処からでも見える。
そしてなによりも、地球では考えられないのが此処からでは例えは悪いけども蠅の様に飛び交う箒に乗った魔女達が居る。
凄い。ほんとうに凄い景色だ。綺麗なものを見た、単純にそう思えた。
まだ写真やスマホもなにもない、昔の異国を旅する旅人もきっと今の私とおんなじ気分だろう。こんなにも違うのか、こんなにも美しいのか、と。
「ふふっ。良い景色でしょ?」
自慢げに魔女っ子が言う。
「うん。」
私は嘘偽りなく、本心から頷く。
「私は魔法使いのフェイ。貴方の名前は?」
「私は女子高生の空神 楓。よろしくね、フェイ。」
私がそう言うと白い耳ほどまでしか無い短い髪を風で靡かせて、艶かしい褐色肌のフェイは私の方を向いてニヤッと笑った。
「よろしくね、楓。」
私もニヤッと笑ってみた。
「あはは。」
「ふふふ。」
私のこの世界での初めての親友との出会いはこんな感じだった。