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「あ、なんだ。お父さんか。お仕事?」
……ま、まじかぁ。いやぁ、わっけ。若くね?
いや、でもおばあちゃんは千年生きたと言っていたし、普通なのかな?
こんな惨劇を作り出すお仕事か。なんだろう。ヤクザ?
「そうだ。本当は蛇を狩ったんだが、応援を頼まれてな。フェイは今から何処に行くんだ?」
「夜ご飯を食べに行くのよ。」
「じゃあ、ウチに来い。久々に一緒に食おう。」
「いいわよ。でも、乗るはずだった電車のチケット代を払うのと友達の分も夜ご飯があるならいいわよ。」
「……友達?」
血塗れのフェイのお父さんがギロッと此方を見る。普通に怖い。そして、上から下まで見られる。なになに?怖いんだけど。
「どうもはじめまして。
ーーーーーー男の気配が大きく変わる。細身の身体からどんどんと筋肉質の男へと変わる。人間から化け物に変質する。巨漢の男と言うには筋肉が付きすぎている。そして、それだけなのに目を惹かれる魅力的な男へと、雰囲気がそうさせる。
服が破れ、上半身が露出している。ーーーーーー
俺はプリマドンナ一家の三男坊であり、フェイの父であるシガラキと言う。よろしく頼む。」
そう言い、丁寧にお辞儀をする。
「私は風神家の楓です。フェイさんの友達をさせて頂いています。よろしくお願いします。」
私も相手が丁寧に対応するので、きちんと返す。そして、なんとなくやってみたかった左手を心臓の位置する所に置き、お辞儀をする海外の貴族みたいな挨拶をする。あってるかなんて知らないけどやってみたかった。
「辞めなさいよ、お父さん。娘の友達相手にフェロモンばら撒いて誘惑するの。」
え!?何その能力!!淫魔っぽい。
「顔が好みなやつを見つけたら誰だってするだろ、淫魔の血筋なら。」
「私はしないわよ。」
「そうか。」
シガラキさんは姿そのままに、此方へと歩いてくる。そして、私達に着いてこいとハンドサインをすると、そのまま駅から出て行く。
私達はその姿を追って駅から出る。
「ねぇ、シガラキさんってどんな仕事してるの?」
横にいるフェイに気になっている事を聞く。
「蛇類専用のハンターを本業にしながら、ウチのみかじめ料を払わないやつを血祭りにあげる仕事をしているわ。ハンターは知っているわよね?」
当然のことらしい。まぁ、大体分かるけど。字面で察せられるし。後半のやつはまんまヤクザじゃん。
「ざっくりとは知ってるけど、詳しくは知らないかな。」
「じゃあ、説明してあげるわ。ハンターは生命を脅かす存在を狩る仕事よ。そして、ハンターはだいたい一種類に狩るのを絞るわ。お父さんなら蛇類ね。けど別に蛇類以外だって狩ることもあるわ。」
へぇ。そんな仕事なんだ。うん、だいたい分かってた。
「そうだ。俺は蛇を狩る事に関してはプロだぜ。今日はウチに借金して逃げた魔女を殺してくれってことで頼まれたんだ。嫌になるよな、ほんと。魔女は生け捕りにした方がいいってのによ。」
私達もシガラキさんに追いつき、シガラキさんが会話に入って来る。
「そうなんですか。へぇ。」
生け捕りって、奴隷にするとか?
「生きたままホルマリン漬けにして魔力液にすると魔力の回復薬として売ると高く売れるんだよ。」
奴隷とどっちがいいのか分からない。どっちも嫌だけど。
「でだ、あ、楓って呼んでいいか?」
「いいですよ。」
「楓はなんでそんな魔力が濃いんだ?」
「知りませんけど。」
だって、知らないし。
「そうか、でよ、片腕とか身体の一部売らないか?もちろん、フェイが後で直すからさ。」
すっげぇ、こと言われた。