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月と私  作者: 猫田 寝巻き
蒸気機関魔女
10/14

9

あっ、そうか。

あぁ、なんか多分だけど、私が適当に言って通ってる事になってる学校が寮なのかな?そうかも知れない。

というか、さっき会ったばかりなのに優しいよね。なんだろう、なんでだろう?

私がフェイだったら、こんな怪しくて、関わったら自分の利益にならなさそうだから見捨てるのに。まず喋りかけもしない。

フェイはお人好しなんだろうね。私と違って。


「大丈夫だよ、別に。」


何が大丈夫なのか、全く分からないけども強者感を出して言う。こうやって、どんどんと自分の首を絞めて、魔法のことを聞き辛くしている。馬鹿じゃん。


「……そうなの。じゃあ、開閉の魔法の事を考えてあげるわ。まず、この魔法は鍵の仕組みを理解する必要があるわ。」


あぁ、やばい。魔法というものが全く分からない状態での講義が始まってしまった。こんなの掛け算、割り算してなのに因数分解とか微積やってるようなものでしょ。


「鍵の仕組みはいたってシンプルで扉の中にこの絵と同じものがあるわ。」


ん?扉の中に、この絵と同じものがあるって、どんな風に?


「それで、絵と同じの鉄の塊が、その、あの、穴?に嵌まってる状態だと鍵が閉まってる状態で、魔法で鉄の塊を引っ張り出すと鍵が空いてる状態よ。」


はぁ、うん。フェイは説明が下手だ。

でも、言いたいことは分かるかも知れない。つまりは扉の中に、この絵と同じものの鉄の塊があって、それが鍵の務めを果たしていて、その鉄の塊が、多分だけどきっちりと嵌る穴があって、そこに嵌まっている状態だとドアノブが動かない。その穴から鉄の塊を引っ張り出すと、邪魔する物が無くなってドアノブが動くようになる。回せるようになるって事だと思う。


「要するに、その絵を完璧に覚えて、扉を開けるときはその絵と同じ鉄の塊を引っ張る、占める時は押すって事を理解しておけば大丈夫よ。……いや、貴方にはこれも言っとかなくては駄目ね。」


なに?なにを言われるの?


「あまり推し出すイメージを強くしてしまうと扉の内側から引っ張り出されすぎて、扉に穴が空くから、人差し指ほどだけ押すってイメージに留めておいてくれるかしら?」


あぁ、なるほどね。

でも、大丈夫だよ。どうやったら魔法が発動するかも分からないから。


「それにこの魔法は慣れて来るとなにも考えずに、酔い潰れてても出来る様になるわ。しかも、扉ごとで違う像だから普通にセキュリティー面でもしっかりしてるわ。……扉ごと壊せばいいじゃないの、なんていう野蛮な想像は無しよ。」


扉ごとって。そんな事、考えないよ。私をなんだと思ってるんだ。


「それは凄いね。でも、私、魔法が下手なんだよね。」

「やめなさいよ。貴方程の魔力の濃さで下手って、嫌味でしか無いわよ。」


使った事ないんだよね、魔法。嫌味じゃないだけどなぁ。魔力が濃いって言われも分からないし。


「一回、お手本を見せてあげるわ。」


フェイは立つと、扉に杖を向ける。


「心臓にとぐろを巻いて巻きつく蛇の鉄の像を想像して、それを引っ張り出すイメージをする。そして、そのまま魔力を放出する。」


そう言った瞬間にフェイに纏わりついた魔力が杖に、移動する。そして、その魔力が杖から離れて、扉へと向かっていく。

結構、早い。杖から離れたと思った瞬間にプロ野球選手の投手が投げる球のようなスピードで扉へと向かっていく。魔力が扉に当たり、内側へと染み込むように入り込むと小さくガチャンという。


「こんな感じよ。さ、やってみて。私が扉を開けたから、今度は押すイメージでね。」



そう言って、私に紙を渡してくる。

杖も頂戴よ。というか見せられたところで無理だよ。あぁ、どうやるんだろう。とりあえず自分がしたいことをイメージするのは出来る。

けども、魔力を放出するというのがピンとこない。

魔力は見える。けども、自分が纏っている感覚が無いし、視覚的にも自分に纏わりつく魔力が見えないので分からない。

おしっこ、みたいなもん?うんこ?放出って言われたって、それくらいしか思いつかない。

一回、おしっこする感覚がやってみるか。

下半身に力を込めて、像を想像して、推し出す。

……なにも出ない。

……なんか虚しくなった。

魔力ってなに?魔法ってなんだよ。そんな訳分からないこと言われたって知らないし。はぁ、嫌だ。まず異世界ってなに?

なんか、どうにもならない現実がクソ過ぎてどうでも良くなってきた。

いきなり現実を見だすと嫌になる。嫌だな。未来のことを考えると、きっと何ヶ月後には死んでそうだし。この世界、思ったより優しくないし。

なんかこうゆう憂鬱な気持ちなら感じるし、これで一回やってみるか。

内に存在するマイナスの気持ちを魔力に見立てて、像を想像して、押し出す。

すると私の周りの魔力が私に寄ってきて、私の前で球状になると扉へと向かっていく。

そして、そのまま扉の内側へと染み込むとガチャと音がする。

……出来た。

なにこれ、魔法ってめっちゃ暗いじゃん。自分の内にあるマイナスの気持ちを放出するようにすると発動して、魔力が放出されるって。

なんか、夢がない。

私だけかな?なんだか、魔力は別に自分の身体にあるという訳じゃなそうだから、自分の想像を外に出す感覚が出来るならなんでもいいような気がする。幸せな気持ちが外に出るような感覚が分かる人はそれでやればいいし。

笑顔溢れる人が幸せな雰囲気を醸し出せるように、そんな感じで感情を出す。で、その感情に自分の想像を乗せると、自分の周りにある魔力がその想像を魔法という形で現実化してくれる。多分、その感情は何でもいい。これ。


「出来たじゃないの。おめでとう。」


出来て当然といった風な表情でフェイが言う。

あ、やっと黒い靄が消えた。それに視界の中でチラつくキショい魔力も消えた。

ふぅ、やっとだ。

あ、そうだ。フェイで遊んでみよう。ちょうど魔法っていうおもちゃが手に入ったし。


「遊ぶね。」


私はフェイの両脚が切れる想像をする。切れ口が綺麗で、日本刀で切ったようにし、血管が見え、骨も見える。膝下程度のところを想像する。

グロ映画が好きで、よく見てたから簡単に想像出来る。

そして、殺すっていう感情を外に出す。その感情に私の想像が乗って、魔力に想像が込めれられる。水風船の中に水を込めるように、想像を魔力に込める。

そして、放たれる。


「危ないじゃない。」


やっぱりフェイには魔力が見えるようだ。でも、避けない。避けてない。

両脚が切れている。綺麗に切られた両足。想像通りになった断面。けれども、想像よりも遥かにグロい。血が桁違いに溢れ出ている。

私はそれを見て、あぁ、こんなものか、と思い。こんなグロくなるのが分かっていたのに私はなんでやったんだろう?と思った。そして、沸き立つもう一つの感情は即座に消す。

子供がやりたい、と思ったら即座にその行為をやってしまうように私は幼稚に思ったことをそのままにしてしまった。


「痛くないの?」


私は思ったことをそのまま言う。


「痛いわよ。でも、私は言ったでしょ?貴方になら襲われてもいいって。」


そう言って、フェイは微笑む。するとフェイの身体から何かが出る。何かって魔力だろうね。

そして、その魔力はフェイの両脚に当たると一瞬で脚が治る。まるで、私がしたことがなくなったかのように治る。けれども、部屋に撒かれた血が消える訳ではないので違和感を感じる。

フェイは直ぐにもう一回、魔法を発動して部屋の血を消す。

すると何も無かったかのように、元に戻る。







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