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とある女性に這い寄られた話

作者: 酢だこさん

この物語はフィクションかもしれません

 最近はDVDやHDD、BDなどに飲み込まれて現世で見ることは稀になってしまったが、皆さんはビデオテープというものをご存じだろうか? 映像記憶媒体の一つにして、20年ほど前はどのご家庭でも普通に使われていたシロモノである。諸君らが子供だった頃、でっかいカセットテープみたいなやつを利用して、テレビ番組を録画したりした経験はないだろうか? あの時使っていたものがビデオテープである。20年、という数字が何気に私に精神的ダメージを与えてくるが、そんなことはどうでもいい。


 で、なぜ急にこのような古代の機械を話題に出したかというと・・・この間友人と見た映画の中でコレが登場したからである。もっと正確に言えば、コレが登場するホラー映画を、友人と深夜に見てしまったからである。

 深夜にホラー映画を見る。この行為自体はわりとよくあることだろう。怖いもの好きな人物や、深夜テンションに引っ張られたパーリーピーポーが集まった時など、高確率でこのような行為は行われる。この行為そのものについて私はとくにどうこう言う気はないが、あの日あの時あの場所で、あのホラー映画を見てしまったことは、間違いなく間違いだったと言えるだろう。


 たぶんどこで見ても間違いだったかもしれない。



 さて、『ではいったい何の映画を見たのか』というところに切り込んでいこうと思う。ホラー+ビデオテープ・・・この組み合わせで思い当たるものがないだろうか? そう、「リン○」である。

 作中では、見た者を呪い殺す「呪いのビデオ」が登場するのだ。そのビデオの内容は、井戸から【白いワンピースを着た髪の長い女性】が這い出てきて撮影者にどんどん這い寄ってくる。というものだが、恐怖はここでは終わらない。なんと、ビデオの中で登場するその女性は、カメラぎりぎりのところまで近づいてくると、ビデオを移しているテレビ画面を通して、ビデオを見ている者の前に出現し、ビデオを見たものを呪い殺すのだ。

 では、どうすれば呪いを回避できるのか、と言う点に今度は着目してみよう。真っ先に思いつくのが、『そもそもそんなビデオ見なきゃいいじゃん。』という策だ。君子危うきに近寄らず、という理屈に従う、というわけだ。一見正しいように思えるこの策だが、実は大いなる間違いだったことを、私は身をもって知ることになる。


 友人と『○ング』を視聴した日。自宅で眠りについた私はとある夢を見た。あんたが死んじまう夢―ではなく、とある和室の一室にいる夢だ。その和室は築30年はくだらなそうな年季の入りようだったが、そこはどうでもいい。真に重要だったのは、その部屋に置かれている白黒テレビだった。

 することもなかったのでテレビの前に体育座りしてみると、不意にテレビに明かりがついた。映し出されるのはとある山中にあると思われる、古い井戸。私はこの時点で、「ああ、はいはいそういうことね。」と悟った。【『リ○グ』を見たその日の夜にこんな夢をみるとは、あんたもずいぶんおこちゃまだな】とか思われていそうだが、見てしまったものは仕方がないのだ。

 テレビに井戸が移った瞬間、私は即座に立ち上がり反転。謎のダーティー和室からの逃亡を図るが、そこはホラーのお約束。謎パワーで扉があかない。真相は立てつけが悪いだけだと思うが、全ては私の夢の中のハナシなので真相は闇の中だ。


 和室の引き戸をしばらくガタガタやってみたが何の成果も得られなかったので、状況確認を、と思いテレビの状況を確認する。すると案の定、例のアイツが上半身をこの部屋まで伸ばしてきていた。白い服ではなく黒い服を着ていたらGみたいだなとか思う余裕はまったくなかった。

 そして脳裏をよぎる思考の嵐。『なぜホラーが得意じゃないのにあんなもの(『○ング』)を見てしまったのか』、『ビデオを見たわけじゃないのになぜこいつはここに来たのか』、『こいつはブリッジしながら這いまわったりするのかな』とか・・・。

さんざん迷走した挙句に『捕まったら亡き者にされそうだな』というところに思考が落ち着いた。この間、0.5秒未満だったとおもう。死に際の高速思考というやつかもしれない。

 ともあれ、捕まったらやばい、というのは間違いなさそうなので、蹴りやすい位置に頭を置いているS子(仮)の頭をまずは何のためらいもなく蹴った。サッカーボールよろしく蹴った。これでひるんで退散してくれたらよかったが、奴はこんなことではひるまないガッツの持ち主だった。

 頭を少しのけぞらせられる格好になったS子(仮)は両手を頭に添えて、のけぞった頭部の位置をもとに戻す。そして再び這いずるGのポーズに戻る。やはりお化けに物理攻撃は効果が悪いようだ。

 ならば、と私はここで指先から紫電を走らせ、S子(仮)に電撃を浴びせる。『お前は何を言っているんだ』と思うかもしれないが、よく思い出してほしい。ここは夢の中なのでなんでもありなのだ。私が『指先から雷を出せる』と思えば出せるし、『コイツに捕まれば死ぬ』と思ってしまえば、本当に死ぬかもしれないのだ。

 で、肝心の電撃だが・・・『効果はいまひとつ』といったところだった。電撃でのけぞらせることは出来ているが、攻撃をやめると、すぐに這い寄る以下略のポーズに戻ってしまう。なので、電撃を浴びせ続けるしかないわけだが・・・これはじり貧だ。少しずつだが、確実に距離を詰められてきていた。その距離、残り1mもなかった。

 すわ取られるか、と思ったところで、意識が覚醒。おはようの時間を迎えたことで、戦闘は強制終了。私はかろうじて生き残ることができた。寝汗は、ぐっしょりかいていた。


 ビデオを直接見ていなくても、こちらを始末しにくるS子(仮)が現れるのが『ホラー映画』という闇の世界。

 ですから、いけませんよ。迂闊にこちらの世界に足を踏み入れては。



もうホラー映画は見ない。絶対にだ。

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