1.鑑定→追放
「よくも恥をかかせてくれたなっ!この無能がっ!」
っ!?
鑑定の儀当日の夜、父はそれまでとは似ても似つかない顔で言い放った。
「お前のようなモノには、この部屋がお似合いだ。」
そうして連れてこられたのは石で囲まれた独房だった。一体、僕が何をしたと言うのだろう。
「父上っ!待ってくださいっ!」
「黙れっ!!お前のようなモノに父と呼ばれる筋合いはない」
そう告げる父の目は人を見るものではなかった。何故僕は、自分の魔力が他人より劣っているというだけで、このような扱いを受けているんだろうか。
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「あなたの能力は、「「 集中 」」です」
ふむ。なるほど。聞いたことのない能力ではあるが、果たして有用なのだろうか。
「聞いたことのない能力だけど、きっとセシルなら使いこなせるよ」
そう自分に声をかけてきたこの人物は、兄のレイ・レヴィナント。外交官として活躍する僕の尊敬する人物だ。
「ありがとう。レイ兄様これから頑張ってみるよ」
そのようなやりとりをして父上の前まで来た。
「ふむ。セシルよその能力存分に使いこなしなさい。」
「はいっ!!父上!」
「鑑定の儀も終わったことだ、魔力を調べに行くぞ」
その後、父上に連れられ魔力炉の前までやってきた。この魔力炉というものは、中に設置されている魔石の魔力を使って火を生み出すというものだ。そしてこの魔力炉のデメリットに近くで魔力を放出すると、炎の大きさが変わるというものがある。それを使い、魔力量を調べるというわけだ。
「行きます。ふっ!!」
魔力炉の炎は青く変色するだけであり、それ以外に見た目の変化は見られなかった。
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それからおそらく1年間ほどが経過しただろうか、僕はまだ独房に入れられたままだった。
あれから兄が2回ほど兄が面会しにきてくれた。1度目は鍵を持ち、2度目は頬に痣を作り。それから兄が来ることはなかった。
コッコッコッ
足音がした。誰がきたのだろうか。
「おい無能、ようやくお前の処分方法が決まった、お前の存在は、我が家にとっては恥だ、だが仮にも自分の息子であったお前を他領へ追放するというのも外聞が悪い。」
パンッ!!
「そこでだ、お前にはこの家を出て旅をしてもらう。使えない能力を持ったお前の独断でだ。
それは、6歳になってわずかという少年にとっては事実上の死刑宣告だった。
「安心しろ、国内で野垂れ死なれても困るからな、十分な金銭を用意してやろう。」
そう言いながら手渡された袋には確かにお金が入っていた、しかしそれは銀貨がわずか5枚ほどであり、安宿に泊まると10日でなくなるほどしか入っていなかった。