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私は死ぬでしょう  作者: 鬼火の子
side 精霊王
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神の願い



 我ら精霊は、自然から生まれる。人々はそう考えているらしい。

 確かにそれは合っている。しかし、精霊王はこの世界の、ただ一柱の神から創られている。



 我、光の精霊王もそうである。他の仲間の火も水も土も風も、そうである。


 だがしかし、闇の精霊王だけはそうではない。力そのものは神が創るが、その器は人間に入れている。それも、幼子に。




 神はある時こう言った。



「光のは正義感強いっしょ。火のはやんちゃの悪戯好き。水のは大人な性格で、土のは穏やかでしょ。風のは、マイペースときた。で、足りないのは何だと思う?」

「さぁ?」

「狂ったやつだよ、狂ったやつ」



 神はニヤリと口角を上げると、話を続けた。




「世界は闇と光、どちらが多くてもいけないんだよ。鬩ぎ合い、均等を保つ。こうであることで、世界の進化は促されるのだ」



 このゲス神にしてはまともなことを言ったが、結局は狂った精神を持つ精霊王が欲しいだけ。この神はこういうやつだ。




「でもさぁ、大人で狂ったやつって、中々いないしさ。子どもはその無邪気さが、大人から見れば狂っているように見える。僕はさぁ、静かに狂ったやつがいいんだよ。でもそんなやつ、中々いないじゃん。なら、まだ子どもでいい」



 そう言ってゲス神は、地上を覗きこんだ。




「あ、いいやつ見っけ」



 そんな神に目をつけられた人を可哀想に思うが、我にどうすることもできない。我から見た神の顔は、とんだゲスの表情だった。























 そんな風に見つけられた、初代闇の精霊王はまだ幼子だった。

 人間には多すぎるその魔力に、幼子の親でさえも恐れ、地下牢に閉じ込めた。




 神はその幼子に、闇の精霊王としての力を植え付け、幼子が死ぬのを鼻唄混じりに気長に待っていた。





 そのまま地下牢で死んだ幼子は、闇の精霊王として生まれ変わった。


 そこで初めて分かったことだが、人間時代の記憶は消えるが、培った経験や感情は消えることはない。これで、純粋に狂った闇の精霊王が生まれるというわけだ。神もよく考えたものだ。




 初代闇の精霊王は、自身の眷属である闇の精霊達と一緒に世界を滅ぼそうとはじめた。



 人々からは、闇の精霊王は魔王と呼ばれ恐れられ、世界はどんどん闇に染まろうとしていた。





 そんな世界を見ていた神が、我に命令した。



「ここで、お前の出番だよ。勇者だが聖女だがを作って、魔王を倒してくれ。と言って、世界に光を創るんだよ」



 ニヤニヤとしたゲス神に、我は殴りたくなったのは言わずもがな。しかし、我はこの神から創られた者、逆らえる訳がない。






 そうして、我は。地上のある国に勇者と聖女を作り、加護を与えた。


 この二人は何年かかけて仲間を集めながら、初代闇の精霊王を倒したのだった。

 


 しかし、この二人は初代闇の精霊王が幼子ということに衝撃が走ったらしい。

 最終決戦で、この二人は初代闇の精霊王に語りかけながら戦った。



 だからなのだろうか、初代闇の精霊王は最後の最後に自害してしまった。






 



「闇の精霊王は死にました」



 我は全てを見届けてから、神のもとに戻り報告をした。地上を覗いているはずの神が、知っていないはずがなくても。



 神は枕に埋めていた顔を上げた。



「最後、自害するとは思わなかったよ。やっぱり子どもは純粋だね。影響をすぐに受ける。死なない精霊王といえども、自害すれば死ぬんだから」



 はぁー最初からやり直しか。神は闇の精霊王の力をボールでも投げるようかのように、遊んでいた。




 それからも神は、見つけた者を片っ端から闇の精霊王の力を植え付け、魔王にさせた。



 それでも、最後には子どもでも大人でも自害をしてしまった。




「お前がさぁ、あんな正義感の強いやつをどこからか知らんが、見つけてくるのがいけないんだよ。たがら、結局は自害すんだよ」



 いつだったか神は愚痴をこぼして、不貞腐れた時もあった。

 しかしそれに懲りずに、神はやっぱり見つけた者を片っ端から闇の精霊王の力を植え付けた。



 それでも、魔王が生まれる度に世界は大きな進化はしているので、神はやっぱり神なんだとおもっていた。




 









 



 ある日のことだった。



「火の、何処だー!」



 ゲスだが、怒ることのない神が怒髪天をつく勢いで、怒っていることがあった。



「何がありましたか?」

「光のか」



 この神は、少年の姿をしている。黙っていれば美少年だが、ゲスが全てを台無しにしている。

 そんな神がその美しい容貌を崩して、火のを探す姿は異様だった。



「闇の精霊王の力を、悪戯で落としたんだ。しかも、宿ってしまったらしい。それで、探しているんだけど、見つからないんだよ」

「なら、それを新たな闇の精霊王にしては?」

「駄目だ。あれは、精霊王の力の中でも、一二を争う力を持っている。あれが、強大な魔力を持つ善人にでも宿ってみろ。光だけの世界になって、世界は崩壊してしまう」

「善人だと、何でそうなる。どうせ、今までと同じになるだろう?」

「いいや、ならない。今の人間には、魔王を嫌悪する者が増えている。それで、無駄に魔力と知識を持ったやつに宿ったら、下手すれば闇の精霊王の力を封印するよ。すれば、どうなると思う」



 はっ、とした。


「世界が崩壊するな」

「そうだよ、その場合すぐに宿ったやつを見つけて殺せ。その後、精霊王になったら、総出で殺せ。分かったな」




 神は厳しい目を我に向けた。これは、世界の命運を分けた、戦いだ。心しておかないといけない。


 

「その前に、火のを僕の前に連れてきてね。他の者はすぐに集まると思うから」




 我は今逃げ回っているであろう、火のを探しに出ていった。


















 火のは結局、棲み家の火山で籠城していた。火山は過去最大の噴火として、周辺の村では大騒ぎになっていた。

 



 我一人では抑えられるか分からなかったので、水のも連れてきた。そのかいあって、火のを簡単に押さえることができた。




「嫌だ。あのゲス、怒ると恐いんだよぉ」



 肩で切り揃えた紅の髪に、大きな目を潤ませたその少女の姿は、我の罪悪感を少々煽る。

 しかし、その実態は生まれてから大なり小なりの数々の悪戯をやらかした、火の精霊王である。



「悪いことしたのですもの、しっかり叱られてきなさいな」



 ゆったりとした口調で言ったのは、海の色の瞳と膝まである髪を艶やかに結い上げた、水の精霊王。



「煩い、クソババァ」

「ババァじゃない、お姉様とお呼び」



 この二人、仲が良いのか悪いのか我はよく分からない。



「おお、来た来た」



 神が満面に笑みを浮かべて、そこに立っていた。



「火の、ちょっと来なさい」

「はっ、はい」



 火のは襟首を掴まれ、連れていかれた。



















 火のへの説教が終わったらしく、神の行ってこい。の鶴の一声で、我らは地上へ向かった。

 

 



 地上は広い、闇のが宿った場所を虱潰しに探す暇など全くもってない。



 なので、我らは何かしなければ見えないことを利用し、人口の多い街で情報収集を各地でしていた。




『おーい、魔力が凄く高い人の情報聞いたよ。高位精霊並みだって』



 風に乗せて、風のをの情報が入ってきた。闇の精霊王の力は神が、意図的に植え付けさえしなければ、地上で一番多い魔力を持った肉体を持つ生物に宿る。

 風のをの情報によると、高位精霊ほどの魔力を持っているらしい。




 高位精霊並みの魔力は、普通肉体を持つ生物には宿らない。それは、多すぎる魔力に肉体が耐えきれないからだ。


 少しのその異常な生物に興味をそそられながら、我らはその人間がいる場所に向かった。



















 風のをの情報は、とても正確だった。素の魔力が高位精霊並みにあり、闇の精霊王の力も混ぜれば、精霊王並みの力が肉体を持っているのにあった。



 そう、この人間に闇の精霊王の力が宿っていた。







 宿した人間は、殆ど死にかけで我らが直々に手を下すまででもない。そう考えるほどの、衰弱ぶりだった。






 放置に決めようかとした、その時だった。



『この少女。使えるよ、このまま生かしてよ。そうすれば、絶対今までにないくらい、極上の狂った闇の精霊王が出来上がるよ』




 歓喜した、神の声が聞こえた。我から見れば、この純粋で真面目な人間が、狂って神が望む闇の精霊王になる気がしない。




『どうせ僕の望む闇の精霊王にならないと、思っているのだろう。真面目で純粋な気質、だからこそ静かに精神を保ったまま狂ってくれると思うんだ。よしこの少女と、契約結んで。僕が内容を指定するから』




 神の意思は絶対。次の犠牲はこの人間だろう。しかし、ここで初めて神から契約という言葉がきた。もしかしたら、この人間を歴代の闇の精霊王ほど酷い結果にはならないだろう。




 そう思って、我は口を開こうとした時。



「あの、どうか、私が結婚式を上げてから二年は生かせてください」



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