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セプテメラータ~七つの過ち~  作者: 蓮井 シバ
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今後の指針

 「何が失敗だったんだろう」


 拓斗たちは空の赤さも濃くなってきた通学路を逆走……もとい、下校しながら話す。話題はもちろん花子さんの事だ。


 「まあ、俺がいきなりまくしたてたのが駄目だったな。未知の存在って事で焦っちまった」


 「そんな事ない、と思うけど」


 智幽は拓斗を励ますように一言だけ口にする。ただし口調から察するとその言葉が真意であるかどうかは怪しい。


 「いや、花子さんに対してあの態度は無かったな。彼女の性格は最初で概ね把握できたんだが、地雷の確認を忘れてた」


 拓斗は冷静にさっきの原因を推測し始めた。花子さんが何に憤怒し、拓斗たちを追い出したか。(そこまできれていたわけではないと思うが……)


 「うーん。やっぱり自分の困ってる事っていうか、悩みっていうか、多分そこら変の事で人には聞かれたくないことがありそうだよね」


 「ああ、俺も同意見だな。花子さんがあからさまに顔色を変えたのは俺たちが七不思議の未練とかの話をしたあたりだ。生前、何かの悩みがあったことには違いないだろうな」


 拓斗はスマホを取り出して無作為にいじりながら話を続ける。


 「それに……」


 「ん?それにどうしたの?」


 拓斗が言葉に詰まり美琴は拓斗の顔をのぞき込む。拓斗は「何でもない、ただの勘違いだ」と切って捨てると、違う方面から話し始める。


 「とりあえず、これで七不思議を一人見つけることには成功したわけだけど、今後の活動方針はどうする?このまま花子さんを説得するか、それとも他の七不思議を先に探すか」


 話半分といった感じでいまだにスマホをいじり続けながら話す拓斗だったが、内容はしっかり今後の事も考えたものであった。美琴と智幽は少し感がえているようで口や顎に手を添えている。人は安心したいときに無意識に自分の顔を触れるらしいが、なぜ二人ともそのような素振りをしているのかまでは拓斗には理解することができなかった。


「とりあえずは、花子さんをどうにかした方がいいんじゃないかな? 探すにしてもヒントがなさすぎるし」


「私もそっちの方がいいと思う。花子さんって根はいい人なんで凄い感じたから」


 ちぃに続いて美琴も言う。


「ん? 美琴ちゃん、それってどういう事?」


「嘘のつき方だよ。花子さんは確かに嘘をついていた。だけど、嘘をついていた部分が、おかしいんだ。俺たちを追い出そうとか、関わらせないようにする為の嘘ばかりでな。七番目が言っていただろ。七不思議には特殊な力があると」


 美琴の足りない言葉を付け足す。基本的に開設の役目は昔から俺に周ってきていたせいで、自然と出た言葉だった。


「えっと、じゃあ花子さんは、私たちに危害を加えないようにしてくれていたの?」


「ああ、それで間違いないだろうな。最後だって脅すだけ脅して何も投げなかったし」


「あ……そういえば」


 ちぃも気が付いたようで納得する。とりあえずは及第点といったところか。


「じゃあ二人とも、花子さんを先に解決する事のメリットは何だ。花子さんを救える、以外の答えを出してくれ」


 俺は振り返り、二人に向かい合う。手にはさっきまで弄っていたスマホがある。


「因みに俺が思いついたメリットはここに書き記しておいた。これ以外の案を出してくれたらジュースでも奢ろう」


「えー。それってかなり難しいんじゃ。タクが思いつかない事なんて私じゃ出ないよ」


 ちぃは不安げに呟く。ちぃは基本的に頭がいいが、こういうところですぐ弱気になるのが悪い癖だな。


「とりあえず考えてみろ。ちなみにスマホに書いてあるのは5つだ。後、かもしれないというのは意味がないものとして却下する」


「はーい。じゃあ私から。全く情報のない他の七不思議を探すよりも、花子さんを救ってからの方が、時間を無駄にせずに済むから」


「正解だ。極論、他の七不思議が見つからずに夏休みが終わる可能性がある。それなら今見つけている花子さんを救ってからでも、状況はそう変わらない」


 俺はスマホの一文にチェックを入れる。これで残された回答は4つだ。


「さあ、ちぃ。なにかあるか?」


「えっと……七番目の話からすると、七不思議っていうのは、生前がある、つまり亡者なんだよね。で、彼女たちには悩みがある」


「ああ。そうだな、もう一度七番が言っていたことを整理しよう」


 人差し指を立て、最初の説明を始める。


「一つ、七不思議は生前、この学校にいたものである事。二つ、その者は何かしらの未練があった事」


 そこで美琴が割り込んで指を立て始める


「三つ、彼、彼女たちが、自分の力を掌握するためには生前の未練から解放される必要がある事。四つ、七不思議は受け継がれていき、七不思議がいなければ霊界が安定せず、他の幽霊が暴走する」


 美琴はそう言って、ちぃにバトンタッチした。ちぃは少し考え、口を開く。


「五つ、彼女たちが生きていくには力が必要。その力は人間から供給される」


 七番目が言っていたことがすべて出揃う。これを念頭に置きながら考えれば、俺が出した回答も思いつくはずだ。


「あ! 分かった。彼女たちが生前の未練を残しているというなら、少なからず生前の記憶を持っているはず。なら、花子さんと話せば新たな七不思議を見つけることができる可能性があがるって事?」


「ああ。正解だ。じゃあ残り三つだな」


「はーい。七番目が言っていたことじゃなくなっちゃうけど、花子さんと話すには間を開けないほうがいいって事でしょ?」


「詳しく、理由まで当ててみろ。大本は正解だから」


 美琴は意外と鋭く、感覚的なのかはわからないが、見事に言い当てる。


「えっと、今一度離れてもう一回花子さんに会いに行ったとして、花子さんがその間をどうとらえるかが問題でー……えっと、」


「まあ大体正解だ。七番目がなぜ俺たちにこの事を頼んだか、覚えているか?」


「あっ! そういう事か!」


 そこで今度はちぃが気付く。こいつも頭はいいからな。


「ちぃちゃん分かったの! 教えて教えて!」


「えっと、花子さんはその間に疑問を持つのは当然だとして、それを考えさせたらダメなんだよ。もし花子さんが私たちと七番目がつながっている可能性に気付いたらもう出てきてくれないかもしれないから」


「あっ! そうか。ほかの七不思議は七番目が嫌で出てこないんだっけ」


「そういう事だ。俺たちが七番目と繋がっているという事はできれば伏せておきたい。だから間を開けずに行く事で、相手の考える時間を減らすんだ」


 これで残ったのは二つ。どちらも考えればわかることだ。


「残り二つだが、片方は考えればすぐわかることだから言ってしまうと、一つ目と一緒だな。花子さんの抱えている悩み自体が、どれくらいの時間で解決できるかわからない。だから先に解決しておきたい、といったところだ。最後の一つはどうだ?」


「えー。私はもうこれ以上でないよ。他にどんなメリットがあるの? あ! 花子さんが他の七不思議を知っていたら噂を探す必要もなくなるね」


「それは確実性に欠けているから却下だ。ちぃはどうだ。何か思いついたか?」


「私もなにも思いつかないよ。これ以上は無理―」


「仕方ない答え合わせだ」


 俺はスマホをしまう。もうこうなってしまえば必要ないからな。


「ラスト一つは、花子さんから他の幽霊の情報を引き出すことができるからだ」


「えー? それこそ確実性がなくない? 花子さんが他の幽霊知っているとは限らないでしょ? 幽霊って自分の場所以外は動けないらしいし」


「違う。それは七不思議の話であって幽霊全てとは言っていなかった。それにこれは確実性のある話だぞ。花子さんが言っていただろ。『落ち着きすぎだろ。同族って訳でもないのに』って。その後に俺は見分けがつくんですねと聞いたら、その時も、『当たり前だ』って答えている。つまり、花子さんは人型の幽霊を見たことがあるって証拠だ」


「「はぁ~」」


 説明するとなぜか大きなため息が聞こえた。概ね何が言いたいのかわかるが、いい加減慣れろといったものだ。


「相手の言動は常日頃からよく聞いておけと言っているだろ。今回の話も花子さんが言っていた事を覚えていれば簡単だったはずだ」


「私たちにそんな事できる訳ないでしょ! タクがおかしい自覚持ってよね! まあ助かっているけどさ!」


「タク、頼むからストーカーとかにならないでよ。簡単に住所特定できそうで怖いよ」


「なる気はないが、住所特定なんて簡単だぞ? その人が出演している番組全て調べて情報集めれば誰でもできる」


 そういうと、二人は化け物をみる目で俺を見てくる。心外だな。俺は絶対にそんな事をしないぞ。


「ま、まあ、タクは興味が湧く事がないだろうし大丈夫だろうけどさ。それよりも、これからはやっぱり花子さんの事を中心にやっていく感じになるんだよね」


 美琴にそう言われるが、俺は首を振る。


「嫌、花子さんは俺一人でやるから、二人は別の七不思議を探しておいてくれないか? 花子さんは俺たちが全員で言っても逆効果だと思ってな」


 そういった瞬間、美琴の顔が暗くなる。それはわかってはいた。だけど、今回の件に関しては、そうしないといけない理由がある。


「さっき言った通り、花子さんの件を先に取り組むメリットは大きい。だけど、今回に限ってはそれ一つに集中するわけにもいかない。相手は俺たちの考えすらも超越する化物達だ。出来るだけ素早く片づけたい」


「理由はわかるけど、花子さんは何でタクが担当するの? 女子トイレだし私とか美琴ちゃんが担当した方がいいんじゃ……」


「まだ仮定でしかないんだが、花子さんと話すのには、女子だと駄目な気がしてな」


 これに関しては本当に仮定でしかない。不確かな情報を開示するわけにもいかないし、二人には大人しく従ってもらうしかないな……


「それは、私達がいると邪魔って事だよね?」


 俯きながら美琴が弱弱しく言う。眉も下がっていてどこか生気が感じられない。


「まあ、そうなるな。すまないがちぃと他の幽霊を探していてくれるか。花子さんの方は何とかするから」


 美琴はある一件から、俺達以外と少人数行動をすることを止めた。更に言えば、幼馴染である俺がいない事などほとんどなく、不安な状態の美琴と別行動をとったのはこれが初めてだ。


「分かった……花子さんの事も重要だもん。なるべく早く解決して戻ってきてよね」


「ああ」


「もー、美琴ちゃんは本当にタクが好きだよね。私と行動するのがそんなに嫌?」


「ち、違うよ! ちぃちゃんの事ももちろん好きだよ!」


「なんか、浮気がばれた彼氏みたいだよ、美琴ちゃん」


「ちぃちゃん!」


 そういって美琴はちぃに飛びつく。二人してじゃれあい始めたが、気が済むまで放っておいてやる。暗くなった雰囲気を変えてくれようとしているのだ。気が済むまでさせてやらなくちゃな。


一年ぶりというふざけたペースでしたが読んでもらえると幸いです。

 他の小説も書いているので良ければそちらもどうぞ!

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