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セプテメラータ~七つの過ち~  作者: 蓮井 シバ
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第4話・トイレの花子さん


「なあみこ。気付いたか?」


「うん...」


 二人は三番目のトイレを見ながら話している。どうやら3番目のトイレ辺りに何か他とは違う発見をしたようだが、脇から見ている美琴には何もわからない。


「えっとタク、美琴ちゃん。何かわかったの?」


「あ、うん。分かったよちぃちゃん、これ見て」


「これって、製造ラベル?これがどうかしたの?」


 すると拓斗は携帯で撮った写真を見せてくる。...いつの間にとっていたのだろうか。


「他のトイレの製品ラベルだ。このトイレとは何かが違わないか?」


「えっ。…あ、製造年が違う」


「そう。このトイレは他のトイレに比べて3年ほど古い。今から11年前だな。周りのトイレは8年前でこの3番目以外は全て同じ年だ。つまり...」


「つまり?」


「つまりは11年前、このトイレだけ変えなくちゃいけない事態が起きたって事だ。それが今回の件と必ずしも関係するとは思えないが、手掛かりにはなるだろう」


 拓斗はどうも歯切れが悪い言い方をする。何か納得できない、理解したくないと言った表情だ。するといつの間にか拓斗の手をとっていた美琴が、拓斗を励まし始めた。


「タク、大丈夫だよ。まだそれが起こったとは限らない。可能性はあくまで可能性なんだからそんな引きずっちゃダメ。わかった?」


「あ、ああ。悪いなみこ。分かってるはずなんだがな...そうだ。あくまで可能性だもんな」


「そうだよ!ね、ちぃちゃん」


「う、うん。そうだね、考えすぎはよくないよ」


 拓斗はいつもの落ち着きを取り戻すと、トイレのドアを閉めて振り返る。


「まあ、見つかったのはこれ位だしそろそろ試してみようか。本当に七不思議かどうか」


「あ、でもタクいないときの判別方法がないんじゃなかったっけ?」


 美琴が突然思い出したように聞いてくる。すると拓斗は特に焦った様子もなく答える。


「まあ、それについては後で考えるさ。それに...多分ここに関してだけ言えば出ると思うぞ」


「えっ?何で?」


「勘、というより感覚かな。この前七番目と会話したときの何とも言えない冷えた空気感。その感覚がするから」


 それは推理も裏付けもない拓斗の直感であった。強いて上げるとするなら七番目と対峙した時に一度だけ感じた空気感、それを正確に覚えているのは流石と言えるが、今までの拓斗に比べるとあまりにもらしくない。


「そんなんでいいのタク?その感覚があってるって訳ではないでしょ?」


「まあな。ただ相手は今考えると、俺らの推理なんか意味をなさない超常的な現象を片手間に使えるやつらだ。少しぐらい感覚に頼らないといつまでたっても見つけらんないと思ったからな」


「なるほど。確かに一理あるね!」


「まあ、いなかったらさっさと違うところ探してまたくればいいさ」


「確かにそれで正解かもですね。私も賛成です。じゃあ、タク。これがとりあえず見つけた花子さんを呼び出す方法です。やってみましょう」


「ああ」


 拓斗は美琴の携帯を受け取る。その途端、呼び出そうと意識したからか急に寒気がした。しかし拓斗は怯むどころか2人に悟らせることもなく画面に表示されている方法を行い始める。


1・3番目のトイレの前で三回回って三度ノックした後に「花子さん。遊びましょ」と聞く。


 反応なし、変化起きず。よって失敗


2・三回ノックした後に扉を一度開け、しめて再び三回ノック


 反応なし、変化起きず。よって失敗


3・三番目のトイレの前で「花子さん。遊びましょ」と聞く


 反応なし、変化起きず。よって失敗



9・三回ノック→返事を待つを繰り返す。


 コンッコンッコンッ


 返事は来ない


 コンッコンッコンッ


 返答は来ない


 コンッコンッコンッ


 返事がない、ただの屍の様だ


 コンッコンッコ…


「うるせええええ!!!!!!なんだこいつら。最近来る奴なんていなかったのになんでこんな粘着質な奴ら…が…」


 挑戦して9回目、ドアがいきなり蹴破られて出てきたのは、長い黒髪と白い肌が対照的で、スケバンの様なロングスカートをはいたとても美人な花子さん(仮)だった。彼女は大声で騒ぎながら拓斗たちを睨んでいる。が、睨んでいた自分の目に拓斗の目が合い硬直してしまう。


「お前、もしかして見えてるのか」


 拓斗はいきなりの登場の仕方に内心驚きながらも平静を保ちながら答える。


「ええ、見えてます。初対面で失礼ですが、花子さん、でいいんですよね?」


 拓斗が見えてること、さらに会話が成り立つことに驚いた花子さん(仮)は今度は勢いよくドアを閉めようと手を伸ばす。が拓斗がドアを掴むと花子さんの手はドアから離れてしまった。バランスを崩した花子さん(仮)だが、ぎりぎり体制を立て直し、再び拓斗と正面から向き合うと、今度は落ち着いた口調で話し始めた。


「てめえ、何なんだよ、ここは女子トイレだぞ」


「すいません。でも調査の為なので仕方なかったので。許可は貰ってあります」


「ちっ。そういう事じゃねーがな。で、なんなんだよお前。私は人間じゃない。なのに落ち着きすぎだろ。同族って訳でもないのになんでそんな態度のままなんだよ」


「あ、こっちが人間って事は分かるんですね。やっぱり感覚ですか?」


「は? 当たり前だろ。つか、話をそらしてんじゃねーよ。先にこっちの質問に答えろよ」


 二人は淡々と言葉の攻防戦を行っている。美琴と智幽は完璧に乗り遅れ、拓斗の後ろで攻防を見守っている。


「落ち着いている理由ですか…まあ、自分はそもそも感情がないんで驚くとか怖がるとか分からないんですよね。だからこれが通常運転ってだけですy」


 拓斗が言ってる途中で花子さんは拓斗の顔めがけて拳を放ち、ぎりぎりのところで止める。拓斗はそれに対して特に驚きもせず表情も変わらない。


「確かに感情は欠如していそうではあるな。普通は避けたりガードしたりするもんだが」


拓斗は内心文句を垂れながら、今の行動への返答、まくしたてるための算段を一瞬で考えそのまま口に出す。


「いや、まあ確かにそうなんですけど初対面でそういう事はどうかと思いますよ。いくらその拳が俺に当たらないとしてもね」


 瞬間、花子さん(仮)は目を見開き拓斗をみる。睨みながら見ているが拓斗はどこ吹く風と言わんばかりの態度で平気そうだ。


「なんでお前、私が触れないと分かった」


「その質問より先に俺の質問に答えてもらっていいですか。花子さん、であってるんですよね?」


 花子さんは軽く舌打ちをしながら頭をかき、答える。


「ああ、そうだよ。私は花子さんだ本物だよ。で?さっきの質問の答えは」


「はい。お答えしますよ花子さん。俺がその結論を出したの2つのは大まかに二つの行動ですね」


「はっ?まだあって1~2分だぞ?こんな短時間で2つなんて?」


 花子さんは納得してないようで常に喧嘩腰だ。そのせいで未だに美琴と智幽は会話に混ざれていないが、拓斗だけは平気そうに話を続ける。


「ばっちりありましたよ。じゃあまず1つ目。花子さんが扉を閉めようとしたとき不自然に体勢を崩しましたよね?あれ、俺が同じ扉に触ったからじゃないですか?」


 花子さんは表情は変えないが黙っている。続けろという事だろう。


「最初に蹴破っていたことから花子さんが物体に触れるのは分かります。しかし、人間、もしくは生命体には触れることができない。だから間接的にでも触れていたあの扉は俺が優先となり、あの時手は扉から意図せず離れ体勢を崩してしまったんじゃないですか?」


 顔は少しづつ不機嫌になって言っている花子さんだが、顎で続けろと指示は出している。拓斗は面倒だと思いながらも顔には出さない。


「・・・沈黙は正解という事で話を進めますね。それでじゃ2つ目。これは1つ目とリンクしている部分もありますが花子さんの性格から不自然な行動があったからですね」


 そこで今まで黙っていた花子さんは口を開く。


「おい、私の性格なんて出た場面ねーだろ」


「性格は常に表れますよ、個性ともいいますけどね。続けますよ花子さん」


「ちっ。」


 舌打ちはするが素直に指示は聞くようだ。


「じゃあ性格の話を...花子さんは、最初から口は悪かったですけど暴力的ではなかった。俺たちへの最初に取った行動も逃げるでしたからね。その後も言い合いで口は悪かったけど俺たちを脅すという事もなかった。それなのに確かめるためだからと、いくら寸止めとはいえ躊躇いなく拳を繰り出したのに違和感があったんですよ。貴方のその性格ならば万が一の事も考えそうですからね。だけどそれもない...そう考えた時に1つ目とリンクして答えが出てきたって訳です」


 拓斗は花子さんを見ながら真剣に説明する。花子さんもその眼に対抗する様に睨みつける。しかし拓斗の後ろの二人は言っていることに追い付いていないらしく頭の上を?が飛んでいる。


「とりあえずお前がやばい奴だという事は分かった。それに私の事もどう思っているかも。ただそれだけだ。お前らの目的はまだ全くの謎。私に会っていること証明するためだったらもういいはずだ。つまり・・・」


「はい。つまり俺たちの目的はそれだけじゃありません。俺たちの目的は花子さん。貴方を救う事です」


 拓斗は隠しもせずにそう言い放った。拓斗はごまかして回りくどくやるよりも、こうすることが一番確実だと考えたのだろう。しかし、言われた花子さんの方は意味が分かっていないようで、固まっている。


「私を救う?まったく意味が分からない。そもそも私は何にも困っていない。いきなりそんなことを言われても迷惑だ。帰れ」


 少しずつ正気を取り戻していった花子さんは拓斗にそう告げる。


「俺たちは本気です。花子さん貴方、何か未練があるから幽霊になってずっとここに居続けているんでしょう」


 拓斗がそういった瞬間、何かに気づいたのか花子さんは無言でドアを閉め鍵をかける。拓斗はすぐに気づいたようで、壁に手をかけて登ろうとする。


「来るな!お前に触れなくても物を投げれば殺すことくらい簡単だ。分かったら帰れ!二度と来るんじゃねー!」


 花子さんはそういって今度こそ拓斗の問い掛けに返答することはなくなってしまった。

年末年始忙しくて全然できんかった...すいません。

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