いらっしゃいませ、TSF(トランス・セクシャル・風俗)にようこそ!
お帰りなさい、お兄ちゃん!
サクラと一緒にお風呂にする?
そ、れ、と、も〜
先にお兄ちゃんにごほうししちゃう方がいい?
えへへ……
え、この格好?
サクラは○学校から帰ったばかりだから〜
ランドセル背負ったままなんだよ!
……どう? かわいいでしょ!
お兄ちゃんはどんな事がしたいのかな?
シて欲しい事があったら何でも言ってね!
サクラ、お兄ちゃんとなら、
どんなえっちな事でも大丈夫だよ!
……え?
ええと、無理なキャラ作りをしなくていい……ですか?
な、なんの事かな、お兄ちゃん!?
サクラはキャラなんて作ってないよ!?
え、萎える……?
……そ、そうですか。
最近は固定客もついてきたし、サクラは癒され妹キャラとして定着してきたって思ってたんだけどなぁ……
ええ、そういうのはいい?
あ、はい。そうですか……
うう……拙者、自信無くしそうであります。
……え?
ああ、ごめんなさい。素がでちゃって……
……ええと?
こっちの口調の方がいい……でありますか?
おに……お客さんも変わってますねぇ……
ええっ!?
……拙者が男だった頃の話でありますか?
いやはや、拙者もここで働いてそこそこになりますが、プレイ前にそのことを聞かれたのはお客様が初めてですぞ。
や、いや、別に話すのを厭うわけではありませぬが……
でも、ぶっちゃけ、萎えませんか?
こんな話を聞いて、アレが使い物にならなくなっても返金はできませんぞ……?
大丈夫……でありますか。
お客様も中々業が深い方でいらっしゃいますなぁ。
……まあ、こんなお店で遊ばれている事からして今更でありましたか。失敬、失敬。
それじゃあ、お話しましょうか。
今では存在しなくなったつまらない男の話です……
拙者はいわゆる、ひきヲタニートでして。
体型と容姿が原因でイジメを受けて学校に行かなくなり、気がついたら数十年経っていました。
よくある話です。
そんなある日、拙者はネットで噂話を目にしました。
とある裏サイトで申込をすると美少女になれるという、普通に考えたら信じるに値しないくだらない話です。
ですが、拙者は九分九厘詐欺の類だとわかっていながら、サイトで申込をして、送られてきた書類に記入し返送していました。
受付が郵送だったのは適正検査として血液を申込用紙に押し当てる必要があるとのことで、適正が合う確率はかなり低いと噂されていました。
全く馬鹿な事していると思いながらも、こんな人生をやり直せるならやり直したいっていう気持ちを抑えられませんでした。
だから、『おめでとう貴方は適正があります』って、メールが入ったときはとても嬉しかったですなぁ……
ただ、それには莫大なお金がかかるらしくて……
ニートにそんな金額を到底払える訳無いじゃないですか。
やっぱりただの詐欺メールかとがっかりしたものです。
だけど、そのメールには続きがあって、お金は体で返済する事ができると書いてありました。
その場合、借金を返済するまで外出は制限されるっていうのを見て、ああ、これはやばいやつだと直感しまして、書類はゴミ箱に丸めて捨てたのです。
……だけど、どうしても諦めきれなくて。
ぐしゃぐしゃにした書類をゴミ箱から拾って迷いに迷いました。
そして、三日後の深夜拙者は契約書に署名したのです。
その結果はご覧の通り。
拙者は理想のロリ美少女に生まれ変わりました。
だけど、そこからがまた大変で……
何せ拙者生粋のひきヲタニートでしたから、働いた事など皆無でして。
この仕事についてから、しばらくはまともな接客など出来ませんでした。
その頃のお客さんには本当に申し訳ない事をしたと思ってます。
……擦れてない反応がリアルJS円光っぽくて良いと、気に入ってくれていたお客さんはいらっしゃったのですけど。
元男の拙者が同じ男に弄ばれる毎日は辛くて、何度も後悔したものです。
だけど、そんなある日拙者は転機を迎えます。
そのお客さんは以前の拙者とよく似た容姿のいわゆるキモオタと呼ばれるようなお方でした。
そのお客さんが拙者の事を見るなり『はじまま』のさくらたんにそっくりだって、ニヤリと笑って言ったのです。
『はじまま』と言えばご存知の通り一世を風靡した『はじめてのおままごと』というエロゲで――えっ? お客さんご存知無い?
拙者の世代では有名だったんですがねぇ……
ネットニュースでも話題になってたりしましたけど、知らない、そうですかぁ……
で、そのゲームに出てたさくらたんに拙者の容姿は似ておりまして。
お客さんが希望されたので試しにさくらたんと一緒のツインテールに括ってみたらさらにそっくりで。
さらに、さくらたんの事を思い出しながら『おにいちゃん』とお客さんを呼んでみたら、それだけでお客さんのアレが震えるほど反応しましてな。
……ああ、なるほどって、拙者の中で合点がいったのです。
それから拙者は源氏名もサクラに変えて、さくらたんを演じるようになりました。
拙者の好きだったエロゲのように、積極的でえっちな事が大好きなサクラたんを演じているうちに段々と楽しくなってきて……
それまですごく嫌だった酷く苦しいプレイでも、サクラたんがこんな酷い事をされていると客観的に思うとぞくぞくして――とてもシコれることに気づいたんです!
……と言ってもシコる事はもう出来ませんから喩えですけどね。
いや、その、思い出して、ひとりでする事はありますが……って、何を言わせるんでありますか!?
そんな訳でそれからは楽しくやっています。
規則で外出は出来ませんけど、そもそも拙者外に出る事なんて全く無かった訳ですし?
寮には三食栄養バランス考えられた食事に、サウナ付きスパやスポーツジムまでありますから、今の生活の方がよっぽど健康的なんですよ!
それに、ネットは繋がるし、通販も出来ますから不自由は全く無いですね。最近の悩みはついスマホゲーに課金しすぎて、借金があまり減っていないくらいで……
え? 逃げたいとは思わないのか……ですか?
もし、外に出ていいって言われても拙者はここを出たくは無いですね。
環境が快適なのもありますけど、体が固定される十年くらいは投薬を続けないと元の体に戻ってしまうみたいなので……
そんなのは真っ平御免なのです。
体を売るって事は辛いこともありますけど、こんな拙者でも求めて貰えるのは嬉しく思えることもありますし……
って、ああ……拙者、話をしすぎましたね。
大事なお金を使って貰っている時間なのに……
こんな話しといて今更ですが、これからどうします?
お客さんのすっかり萎えてしまったでしょう。
え……? そんなことは無い?
いやはや、なんというか……
……そ、それじゃあします……か?
素の自分でこういう事をするのは久しぶりでして、
何とも、照れくさいというか何といいますか……
それじゃあ、その……よろしくお願いするであります。