表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

1話

その日も私はいつものように村の入口付近に座りながら村に入ってくる人を観察していました

すると外から黒いローブを身にまとっている黒髪の男の人がゆっくりと村の中に入り私が座っている場所の目の前に立ち止まると、背負っていた袋から地図を取り出しその地図を確認し始めた

すると、その男の人の近くをこの村一番の悪ガキが通り手馴れた様子でその男の人のローブの中から金貨袋を盗みそのまま走り去っていきました

「そこの男の人、今…金貨袋がすられましたよ?」

私は目の前にいる男の人を指さしながらそう告げる

「え!?ほんとか!?」

その男の人は自分の金貨袋が入っていたと思われるローブの中をさぐり、中にそれがないことに気づくとため息をつき私の方に視線を向け

「…ちくしょう、でも取られたもんは、しょうがないし…な…で、君は?」

その男の人は、ゆっくりと私に向かってきた

「…人に名前を尋ねるときは、まず自分から名乗るのが礼儀でしょう」

私は目線を相手に向けながら自分の後ろ側においてある大剣を持ち上げそれを相手の鼻先に大剣の剣先を向けながらそう言って

「え、あ、わ、わかったからその剣を下ろそうぜ!?

てか、なんでそんな剣を持てるの!?」

剣先が相手の鼻先に前に当たる前にその相手は後ろに下がりながら

「俺の名前はクロ、クロ・ウェンウィート…で君は?」

「私はアリス、アリス…です」

私は大剣をおろし自分の後ろ側におくと相手から視線をそらしすと立ち上がり大剣を片手に持って歩き出すと

「ちょっと、待ってよ…アリスちゃん?」

クロと名乗った男の人が私の名前を呼んで引き止めようとしてきた

「…はぁ、何でしょうか、まさか私みたいな子供が好きなんですか?」

「ちょっと待ってくれ、俺は別に子供が好きとかじゃねぇよ…!?」

クロと名乗っている、子供好きの変態野郎は私に向かって否定の言葉を述べてくるが、私には嘘をついているようにしか感じられなかった

「はぁ…それで、何のようですか?」

私は冷ややかな視線を相手に向けながらゆっくりとクロの顔を見つめながら

そうたずねる

「あー、なんで村の中にひとりでいるのかなと疑問に思っただけだよ」

「…貴方には、関係ないでしょう」

「いや、親とか…一緒じゃないのか?」

「…っ、私にはもういませんから」

私は少し顔をしたに向けながらそう答えるとすぐに顔を上げ相手より早く歩き出すとクロも、その速度に合わせて歩いてきたようで

「ごめん、変なこと聞いて…」

「いいですよ、気にしてはいないので、というより早く自分の行くべき場所に行ってください、この変態さん」

「だ、か、ら、変態じゃないよ!?あと、俺の行く先にアリスがいるだけだぞ」

「わかりました、では、私はこっちへ行くのでここでさよならです」

私は今までとは逆の方向を指さしながらその方向へ歩きだそうとするとなぜか相手もこちら側についてきて

「聞いちゃいけない事だったら謝るが、なんでそっちに行くんだよ」

「変態さんと同じ場所に向かいたくないだけなのでついて来ないでください」

「いや、ひどくないか…?俺ずっと変態じゃないって言ってるじゃないか…」

「はぁ…わかりましたよ、そういうことにしておいてあげます」

ため息をつきながらクロの方に向くとそのまま相手の顔をじっと見つめ「で、何のようでしょうか?」と問いかける

「あー、その…安い宿屋とかかないか?俺の持ち金、あの金貨袋に入ってるのがほとんどだったんだけどな…

残ってるのこれだけなんだよ」

クロはズボンにあるポケットに手を入れそこから4、5枚の銀貨をとりだし手に乗せたまま私の方に向け「これが今の全財産」と苦笑いのまま言ってきた

「この額ですか…無いですね、泊まれる宿屋は」

と私は近くにあるボロ宿を指さしながらそう答える

「え、ほんと…まじかよ…」

その宿屋をみてクロは落胆したようにその場に座り込むと銀貨をポケットにしまい、両手を地面につきながら「ちくしょう…、最悪だ…あんなボロ宿に泊まるくらいなら野宿の方が…でも、もう野宿は嫌だ…」と死にそうな声で項垂れる

「…仕方ない、ですね」

「え…?このほとんど何も残されていない人に何の用?」

「ほんとに、しょうがない人ですね、村長の家まで送ってあげますよ」

項垂れている相手の目線を合わせるためにしゃがむとクロの顔を左手で掴み無理やり上げるとじっと見つめ

「ほ、ほんとか?…アリス、村長のとこ連れてってくれるのか?」

涙を目に浮かべながら必死の形相で私の目を見てくるので流石に気持ち悪いなと思いながらもクロを見つめ続け

「ほんとですよ、あと名前を勝手に呼ばないでください、気持ち悪い」

「…いや、名前呼んだだけだろ?気持ち悪いとかひどくないか!?」

「…せめて、呼び捨てはやめてください」

「なら、アリスた…」

変な呼び方をされそうになったので、最後まで言い切らせる前にクロの頬をを強く押しその後の言葉が出ないようにして

「…しゅ、しゅみましぇんでした…」

「はい、では変な呼び方をせずに呼んでください」

「…はい、わかりましたアリスさん」

「はい、いいですよ」

少し微笑むと顔から手を離し立ち上がると相手に立つように肩を叩きながら「ほら、行きますよ」と言いながら相手の手を強く引いて歩こうとして

「ちょっと…アリスさん、ちゃんと歩くから引っ張らないで!?」

「…はい、わかりました」

私が手を離すとクロはゆっくりと歩きだすと私の顔を見つめ「じゃあ、お願いします」と微笑みながら言ってくる

「では、行きますよ」

「ああっ」

そのまま私とクロはこの村の村長の家まで歩いていきクロは村長の家でやっかいになることになった

少し心配もあったが、私は自分の家に帰ることにした


2

それから数日後のことだった

私はいつものように村の入口付近にある酒場で朝食を食べていました

前日くらいからはクロもこの居酒屋で朝食を食べるようになり何故か私と同じテーブルで食べようとするので、少し鬱陶しいです

「なあ、なんでお前の親はいないんだ?」

朝食のハムエッグをほおばりながらクロは私にそう尋ねてくる

「…死んだんですよ、理由はわからないんですが」

「理由がわからない?」

クロは首をかしげながら私の顔を見つめてきて

「はい、私の親はもともと王国の騎士でした」

「あのさ、質問なんだが…騎士ってなんだ?」

「…え?」

私は驚きのあまり素っ頓狂なこえをあげてしまった、なぜなら騎士はこの世界では知らない人はいないそんざいなのだから

「…えっと、騎士というのは王国の中でも強く、また王様に認められた達のことですよ」

「そうなのか、じゃあ、アリスさんの両親もそうだったってことか…なのか?」

「はい、私の両親は王国でも有名な騎士でとても強かったんです…それで、王様の命令で王国の外れにある森まで王国の敵を討伐しに行ったんです」

「へぇ…森にいる王国の敵…な」

「…しかし、森に行って2週間ほどしたくらいの頃でした、私の両親の同僚である騎士の方がお前の両親は死んだ…と。それで…この剣を私に渡していきました」

私は自分の隣に立てかけてある大剣を指さしながらココアを飲み干し大剣を持ち上げるとカウンターへと歩き出し

「あ、ちょっとまって…っ」

私が立ち去り始めるとクロも立ち上がりカウンターの方へと歩きはじめると私の後ろについてきて

「…クロは今日、何するんですか?」

「…いや、そろそろ旅に戻ろうかなと思ってな…金も貯まってきたしな」

「そう、ですか…」

「なんですか?、アリスさん寂しいんですか?」

「…何を言っているんですか、この子供を性的な目で見るような人は」

私は相手に冷ややかな視線を相手に向けながら自分の握っている大剣を喉元に当てて

「ひいっ…じ、冗談ですからその剣をしまって…ね?

それと俺は別にそんな目でアリスさん見てませんから…」

「…まったく、そんなに気持ちの悪い冗談はやめてください」

ため息をひとつすると、相手に向けていた剣を元の位置に戻し

「でも、明日にはこの村を出るから見送りは頼む」

「しかた、ありませんね…」

「ありがとよ」

クロが微笑みながら私の顔を見てくる

この笑顔が見れるのも明日までと考えると少しさみ…って私は何を考えてるんでしょう

酒場から外に出て村の入口にたっている紫色のガントレットを右腕に付け神を左手でなびかせているいかにもなナルシストとその隣で左手に黄緑色のリストバンドを付けペコペコと頭を下げ続けている男の人が立っていた

「…やっとついたぜ…、ふーはっはっはっはー

ここの村民よ我らは天才無敵の魔法使い、オズワード・ミスティリアとその弟ウィグル・ミスティリアだ!」

「ちょっと、兄さん!?そんな恥ずかしい自己紹介はやめてっていってるでしょ!?」

「まー、弟よ。そんな事はどうだっていいじゃないか…

さて、この村に告ぐ、この村は我々兄弟が支配させてもらう!

さぁ、おとなしくしてもらおうか!」

あたまのおかしな宣言をしながらその二人組(オズワードと名乗った方がもうひとりを無理やり引っ張ってる)はゆっくりと村長の家に向かって歩いていく、すると酒場で飲んでいた何人かのゴロツキが目の前に立ちはだかりそのうちのリーダー格の男が

「おいおい、にーちゃん達…この村を支配するだ?出来んならやってみろよ!」

と言いながらオズワードに殴りかかっていった、しかし

「魔法使いに素手で挑んでくるって馬鹿だね、君」

オズワードがガントレットをつけた方の腕を少し上に上げながら「物理的障壁(フィジカルシールド)」と言った。するとリーダー格の男の拳がオズワードの目の前まで迫った瞬間、透明な障壁のようなものに拳が当たりゴロツキの拳を空中ではじく

「な、なんだよこれ!?」

「なんだ?、知らないのか?これはフィジカルシールド…物理的障壁っていってな…物理攻撃なんてこれで防げるんだよ」

どれだけチンピラが殴ろうともオズワードの体に当たる前に何かに当たってはじかれてしまう

「ち、ちくしょう…なんなんだよ、これ!」

「さて…お前らにはバツを与えないとな…」

オズワードは笑いながらガントレットをつけた右手を前に向けながら「氷の弾丸(ブレッド=パターンアイス)」と叫んだ

するとガントレットの前に大きさ10センチほどの氷が現れ、それが一瞬のうちに砕けチンピラたちに向かっていく

「っ、ぐはっ…」

チンピラ達は体中に氷で作られた銃弾が浴びせられたようになっておりチンピラたちはその場に倒れこむと死んではいないようだが体と一部が凍っているようでその場から動かなっていた

「やはり、ただの人間なんてこんなものだな!なあ、弟よ」

「やめようよ、この人たち…可哀想だし…」

「いいんだよ、どうせ俺らの道具になるんだしな」

兄と思わしき方はそういい、弟の方は体を震わせながら兄の背後に隠れ少しづつではあるが私とクロの方へと向かってくる

「道を空けてよ、通れないでしょう」

「ー」

「はいはい、ここから先にはいけないよ?」

私の口をなぜかクロが、オズワードへそういいながら立ちふさがる

「へぇ、君みたいなのがただの人間がこの天才魔法使いである僕に立ちふさがるんだ…いい度胸だね」

オズワードは笑いながら先ほどと同じようにガントレットをクロの目の前に向けながら魔法を使おうとしている

私はとっさにクロを守ろうと剣を抜こうとするがもうひとりの魔法使いが私の後に立ち「う、動かないでね?」と体を震わせながら私に言ってくる

「あのさぁ、君みたいなのはいらないから…死んじゃっていいよ!」

クロの目の前に先ほどと同じ大きさの氷の塊が現れそれが弾けてクロに襲いかかっていく

「…クロ!危なー」

私がそう警告し大剣を持ち上げようとする

しかし、

「…地獄の業火(インフェルノ)

クロが微笑みながらそう唱えると氷の弾丸すべてに青色の炎がまとわりつき

その瞬間、氷は姿を消して

「な、なに!?ま、魔法だと…

しかもその魔法…まさかお前、赤の魔道士なのか!?」

オズワードは数歩後ろに下がるとクロを警戒するように睨みつけているようで

「クロ、今のは…?」

私はありえないという気持ちでいっぱいだった、クロが魔法使いであるなんて考えてすらいなかったのだから

それに、魔法に疎い私でもさっきの魔法が並の魔法ではないことぐらいわかる

警戒した様子でオズワードはクロをにらみ続けている

するとクロがオズワードを指さしながら

「…おいおい自称天才魔法使い、それで天才とか名乗ってるのか?

それに、魔法使いなら自分の色を衣服とかを使って纏ってるものだろ?俺の纏ってる色をよく見ろよ…」

「…ローブの色?ま、まさか…そのローブの色は黒…ってことはまさか…黒の魔法使い!?」

「黒の…魔法使い?」

私の頭の上に疑問符が浮かびあがるような気がした、クロが魔法使いという時点で信じられないのに聞いたこともない黒の魔法使いという単語

私は兄と同じようにおどろいている弟に話しかけてみる

「黒の魔法使いとは何のことですか?」

「え、君黒の魔法使いを知らないの?」

「はい、まったく知りません」

そう答えると弟の方は

「…魔法使いは全員自分の色を持っていて、純色と複色がいるんだ。

純色は一種類の魔法しか使えないかわりに威力は絶大で、複色は複数の魔法が使える代わりにひとつひとつの魔法の威力は純色に劣るんだ」

「それで黒とは?」

「…黒の魔法使いはね、全種類の魔法を純色と同じ威力で使えて、魔力量も通常の魔法使いの約3倍以上はあるんだ、だから、お兄ちゃんじゃ勝てない…よ」

ウィーグルは震える手を強く握り直しオズワードを助けるためかクロに向かって走り出した

「お兄ちゃんを助けるんだ…雷の羽根(ウィングボルト)!」

と叫びながらウィーグルは走りクロに雷で出来ている羽根をくらわせようとしていたが

「黒色の音波(ブラックノート)

とクロが言いながら走ってくるウィーグルに向かいなにか、とてつもなくうるさい音をはなった

周りにいる人のすべてが耳をふさぎ

その音を一番近くで聞いていたウィーグルは魔法が解けそのまま地面に倒れ込んでしまった

「ウィグル…ウィグル!?」

一瞬の出来事にオズワードは驚きを隠せずにいた

「おい、起きろ…ウィグル…ちくしょう、ウィグルが…」

「おーい、あの…その子気絶してるだけだからなー?」

「…許さねぇ、お前は絶対、ここで…」

「あのー、何となく俺が悪いみたいになってるんですが、え、何、俺が悪いの?」

怒りをあらわにしながらオズワードはクロを睨みつけ、戸惑った様子でクロは私を見てくる

「まあ、正直なところはあのナルシストがいけないんでしょうが…」

「誰がナルシストだ、誰が!」

オズワードが私も睨んできた

「でもまあ、黒の魔法使いの弱点もわかってる…大気中に存在するマナで自身の魔力を回復できない…つまり

魔力が尽きた時がお前の最後だ!」

睨むのをやめクロを指さしながらそう叫ぶと

「僕は天才だ…複合魔法だって、使えるんだ、みてろよ…凍てつく(コールドイグニス)!」

オズワードの手の上に氷が出現したと思った瞬間それが燃え氷を炎が包んでいるという状態がうまれていた

「燃えて…凍ってしまえ!」

その氷をクロめがけてオズワード投げるがクロは全く動揺してはおらず

「はぁ、そんな未完成な魔法が切り札なのかよ…まあ、いい

俺も複合魔法くらいなら使えるしな…」

ため息をひとつつき魔法詠唱をしようとするがそれより早く飛んでくる氷をクロは自分の手で掴みそれを握る

「あっははは…馬鹿だあいつ、もうあいつの手は使いもー」

「ぬるい、異常にぬるい、なにこれ魔法使わなくてもよかったわ」

クロが先ほど握った手を開くとそこにはもう何も無かった

それどころか火傷のあとも凍傷も無く、何なかった

「切り札もやぶられた…これでお前の負けだ、認めろ」

「僕はまだ戦えるんだ…氷ー」

「…はぁ、もう終わりにするぞ…黒色の音波」

クロは瞬時に相手の目の前まで移動するとウィーグルに使ったのと同じであろう魔法をオズワードに使う

するとオズワードもウィーグルと同じようにその場に倒れてしまった

「さて、最後だ…罪の暴食(グラトニー)

倒れた相手の目の前に立ちながら右手をオズワードの左手をウィーグルの頭に置きそういうと、掴んでいる腕から黒い狼のような顎が出現し二人の頭に噛み付くとそこから色のついた靄のようなものが現れその顎はそれを喰らってクロの手へと戻っていき

「今のは…一体なんですか?」

「あー、さっきのはなこいつらの魔力…魔法を使うための力…かな、それを食ったんだよ

と言っても食えるのはそいつの魔力量の半分だけだから死ぬはしないよ」

「なんで、その魔力を…奪うんですか?」

私はそんな疑問を投げかけてみる

するとクロは

「俺は、というか魔法使いってのは、魔力が切れると死ぬんだよ…」

「え…?」

クロは少しさみしそうな顔をしながら話し始める

「普通の魔法使いは自然に存在してるマナ…魔力を回復させる力の事なんだけど…それを取り込むことが出来るんだ

でも、黒の魔法使いは存在自体がなんと言うか…異質なんだよ、だから世界からマナを供給されないんだ

それで魔力を回復できず、魔力が切れると死ぬ

だから、倒した魔法使いからその総量の4分の1の魔力を奪ってるんだよ…生きるために」

「そうだったんですか…」

「さて、暗い話はここまでとして、そいつらを村長につきだそうか」

「…はい、そうですね」

私が頷くとクロは私にほほ笑みかけ私がオズワードをクロがウィグルを担いで村長の元まで運ぶことになりました

そして、その日の夕方…

「で、こいつらが村を襲った魔法使いか…」

魔法道具を取られ、手を縛られたまま地面に座らされた先ほどの二人を筋骨隆々の村長(58歳)が見つめていた

2人とも目をそらし、何も語らないという様子だった

「…この2人はどうなるんですか?」

「…うちの村で面倒を見る」

「「「「え?」」」」

私とクロとオズワードとウィグルの四人はほぼ同時にそんな声を上げた

それほど村長のこと発言は驚くことだったからだ

「な、なぜですか、村長…この者達は…」

「村人に危害を加えた、じゃろ?

しかしな、あのゴロツキ共は私の村の厄介者たちじゃった、それをこいつらは倒してくれた。ならわしにとってはもうこやつらを許す材料には十分なんじゃよ」

村長は微笑みながら、しゃがみふたりに向かい「ようこそ、マルド村へ」いった

すると今までそっぽを向いていたふたりがゆっくりと村長の顔を見つめ

「ちくしょう、敵の施しは受けない…っ」

「お兄ちゃん…泣いてるじゃないか…っ」

な、泣いてねぇから…これはあれだ、汗が目に入っただけだ…」

2人ともその場で涙を流していた

村長は、二人の縄を解いて抱きしめていた

私は隣にいるはずのクロの方を向くがすでにそこにクロの姿はなかった

「…クロ?」

私は村の入口まで走った

なぜかクロはそこにいると思ったからだ、大剣をかつぎ必死で私は走っていた

村の入口に着くとそこにはすでに村をあとにしようとしてるクロの姿があった

「はぁ…はぁ、待ってください!」

私は叫んだ、今まで出したことのないような声で

「どうして何も言わないで、行くんですか…っ」

いつの間にか目には涙が浮かんで、かついでいた大剣をその場においてクロの目の前まで走り、クロのローブの裾を掴んでいた

「もう、ここにいる意味もないからな

それに黒の魔法使いってこともバレた、黒の魔法使いってのは不吉の象徴で忌み嫌われてるんだ

だから…俺はもう…」

今までに見せたことないような寂しそうな顔をしながらそっぽ向くクロに私は

「…っ、私は!、そんなことでクロを嫌いになんて、なりません!

勝手にどこかに行かないでください!

行くなら、行くなら私も連れて…連れていってください!」

自分の胸の内に秘めた言葉を言い放った、後先も考えず、クロのことも考えず、ただただ自分の言いたいことを

「…アリスは俺と旅は嫌なんじゃないか?」

「嫌なんかじゃ、ありません

私は、クロと、旅がしたいんです!」

涙は止まらず、でも私は真っ直ぐにクロを見つめながら叫んだ

「じゃあ…いくか、一緒に…アリスがそれで後悔しないなら、だけど」

「え…?いいの、ですか?」

「うん、むしろこちらから頼むべきことだったし…」

「…っ」

「いた、痛い痛い痛い!?」

冷静になった瞬間に私は今までの言葉や行動を思い出して恥ずかしさのあまりクロの体を思い切り抱きしめていた

「…い、行きますよ」

私が離れ、大剣を拾い村から出ていくと後ろからクロが追いかけてくる

「待ってよ、アリス」

「はぁ、仕方がありませんね…」

私たちの旅はまだまだ始まったばかりです、苦労も困難も、きっと戦いもこれからたくさんあると思いますが、きっとクロと私なら大丈夫です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ