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キミがいるときの過ごし方について  作者: トムトム
In other words・・・の場合
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昨日見た夢1 倫子と義人の場合

In other words・・・の場合。

この話は本編の流れを汲んでおります。

「ほらっ、もっと寄れよ」

「うん、ビリーは真ん中ね」

ある休日の昼下がり。この時間は二階の多目的室にしている部屋が一番快適に過ごせる。

カーペットの上にホットカーペットを広げて電源を弱にセットする。ちなみに普段のホットカーペットはリビングが定位置なのだが、彼に頼んで運んできてもらった。

そして私と彼がゆっくりと寝そべると私達の間にビリーが滑り込むようにやってきて体を丸めて横になる。今日は彼の方を向いている。

「ちい、毛布を掛けるぞ」

「うん。ありがとう」

ダブルの毛布をすっぽりと掛けてビリーの邪魔にならないように私は彼との距離を縮める。

「最近はこうやってお昼寝するのが定番だな」

彼も私と同じように体を寄せて、私の頬を撫でる。

「嫌?」

二人の休みは週末が多い。だからこうやってゆっくりと同じ時間を共に過ごすことは好きだ。

「好きだけどさ、どこか連れて行けとかはない訳?」

彼の言う意味が分かって、私は彼に向ってほほ笑む。

「そうね。泊りでどこかってなると……この子がいるから無理でしょう?」

そう言って、毛布の中で黒い毛糸玉のようになっているビリーを撫でる。もう寝ているのかと思っていたらゴロゴロと喉を鳴らしているので見事は狸寝入りであることは分かる。ビリーは猫だというのに。

「そうだな。それはお前の本心でいいんだな」

彼も私と同じようにビリーの喉元を優しく撫でている。嬉しかったみたいでビリーはにゃあんと甘えた声を出した。

「うん。だって大好きなあなたとこの子とね……こうやって過ごすことが出来ること自体が贅沢だと思わない?」

私にとっては最大級な幸せなのだけどなあ。どうやったら彼にこの気持ちが伝わるのだろうか?

「まあな。川の字は普通子供が中央なのが普通だものな」

さっきまではちゃんと川の字だったはずなのに、ビリーは外に出て今度は左端……私の肩の隙間からするりと入り込んでしまった。

「それはそれとして。こうやって、のんびりと自然の恵みを堪能してもいいじゃない」

二月の外は寒いけど、私たちがいるこの部屋は一番日差しが入って日が沈むまで暖かく過ごすことができるからお財布事情的にも優しいのだ。

もちろん、ビリーを伴って出かけたことはある。怖がりのビリーはキャリーに入ったら大人しいから一緒に連れて行くのは平気だけど、慣れない場所に疲れ果ててしまって外出した翌日はほとんど動けなくなってしまうのだ。

今の家に住んでも、前に住んでいた家もリードを付けて庭に出て遊ぶこともあまりない。リードがなくても私たちの目が届く範囲に必ずビリーはいるのだ。だから冬の週末はこうやって家の中でのんびりと過ごしている。

「また……どこかに行こうな。こいつも連れて」

「うん、ドライブでもいいよね」

前の家にいた時は、お弁当を作って彼のおじさんの車を借りて出かけたものだ。

「そうだな。まずは車を買うか」

「いいの?」

「ああ。今の家ならあってもいいだろう?駐車場付きだし」

今の家は都内なのだが、大家さんの好意でかなりお得な家賃だ。

「そうね。大家さんならディーラーにも知り合いがいそうよね」

「きっとな……ふあ……」

彼は大きなあくびをする。私も彼に釣られてあくびをした。

「やっぱり……いいな。こんな休みも」

「でしょう?部屋は暖かくて、何をするでもなく、こうやって過ごすのも」

「そうだな。また、仕事が忙しくなるだろうけど……」

「平気よ。私達なら……ごめん。私も眠くなってきた……」

最後まで言い切れずに私は意識を手放した。


「おはよう」

「おはよう」

いつものように、私の家の前で待っている二人にいつも通りの挨拶をする。それからいつもと同じように駅に向かう。

毎日変わることのない満員電車に揺られながら、ふと昨日見た夢を私は思い出す。そこには、今の私の夢がてんこ盛りに詰め込まれていて……目を覚ましたくない位に幸せなものだった。

「どうした?ちい?」

そんな私に最初に気が付いたのはよっちゃん。

「そうだな。心、ここにあらずだな」

直君も似たようなことを言う。仕方ないので種明かしをする。

「あのね、昨日……夢を見たの」

「夢?」

「うん。でも大したことはないのよ。ふかふかのカーペットのある部屋に、私と誰か……男の人と猫と一緒にのんびりとお昼寝していたの……それだけ」

「ふうん。幸せそうだな。それはまた」

「うん。男の人は私の家族みたいだった。私にもそんな日が来るのかしら?」

今の私には持ち合わせていない夢。その夢を叶えてくれる人がいるのだろうか。

「夢の中のお前は笑っていたのか?」

「うん。笑っていた。幸せだよって笑っていた」

「そうか。その夢がかなうといいな」

直君は、そういって私の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「俺が叶えてやる。その夢。後数年待っていてくれたら……」

「よっちゃん。相手はよっちゃんじゃなかったと思う。顔も見えなくって、声は……よっちゃんに近いけど、もう少し暖かくて落ち着いていたから」

「今の俺じゃなくて、将来の俺かもしれないじゃん」

よっちゃんがそう答えると、直君もニヤリと笑って

「ならば俺かもしれないな。案外それ以外の男かもしれないしな?ちい」

「誰って分からなかったから……そうとも言えますよね。私の未来が……ちょっとだけ楽しくなりました」

その後も、私と直君にからかわれたよっちゃんは、かなりしょげた状態のまま君塚の駅で別れてしまうのだった。


「なあ?ちい」

「ん?何?」

今日は特に放課後に予定がないから、よっちゃんといつものように自宅に戻る。貧血を起こして倒れてから平日はよっちゃんと一緒に夕食を食べる。最初はよっちゃんのお母さんが持って来てくれたけれども、私の帰りが早いときは自分で作って食べることにしている。時々、そんな私たちの夕食に創君も入ってくるようになった。今夜はオムライスが食べたい気分だったので、オムライスとサラダを作った。

「ちい、朝の夢の話だけど」

「うん」

「俺は……その……お前が俺を選んでくれたら、すごくいいなって思った」

「うん」

春休みに告白されてその返事をまだできないでいる。

「でも、お前がまだそんな状況じゃないのも分かっている。何よりもあいつのこともあるしな」

「うん」

一番酷かった頃よりは落ち着いたけど、誰を好きになることが今は少しだけ怖いと持っているのも事実だ。

「焦らなくてもいい」

向かい合って食べていたよっちゃんが私の隣に移動して肩を寄せる。

「よっちゃん……」

「忘れるなよ。俺とお前ははとこだ。その絆はずっと続いていくんだから」

「それって……私が他の人を好きになってもいいってこと?」

「本音は嫌だけどさ……そういうものじゃないだろう?」

「うん」

気持ちはそんなに簡単にはいかない。その位分かっている。私に告白した時によっちゃんはそこまでの覚悟を決めていたんだ。

私もそろそろ歩き始めてもいいのかもしれない。

「ちゃんと向き合う。私の気持ちに。だから……もう少しだけ待っていて」

「おじいちゃんになる前に返事をくれよ。頼むから」

いくらなんでもそれはないよ。いつまでも今のままでいいなんて思ってない阿kら。

「それはないよ。あんまりよ」

私は不貞腐れて、よっちゃんに近くにあったクッションをぶつけるのだった。


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