1月20日は家族の日(但し東京都限定)
企画当日は東京都限定で「家族の日」なんだそうです。
私も都内在住ではありませんが、もふもふ&家族の日をブレンドしてみたら……こんな感じになりました。
年末進行が無事に終わって、年末のショーレースにもビビットが参加したりして少々忙しく過ごして、年明けにまとまったオフを貰えることになった。
とは言っても、双子が今年受験生なので僕も実家で勉強相手として過ごしている。双子は大学のある私立高校だけど、進学したい学科がないという事で外部受験を選択した。
今週末はセンター試験が迫っている。僕が受けた時は学園にいたからこうやって家族で過ごすのは凄く新鮮だ。
「兄ちゃん、ここってこれでいいの?」
「ってか、賢。これ位のレベルが出来ないと二次試験が辛いと思うが」
「うっ、今そこで言うか?俺心が折れそうなんだけど」
「お兄ちゃん、ケンケンに言うだけ無駄。最終的にはランクを下げるのよ。きっとね」
何気なく鋭い一言を放つのは紗良。もう少しマイルドに言ってあげようよ。
「紗良はどうなんだ?」
「私?推薦入試で既に小論文と面接は終わっているの。後はセンターを受ければいいんだけど、レベル的にはずっとA判定だから……ケンケンと一緒にしないでくれる」
あっ……そうですか。兄ちゃんはお前が推薦入試だという事すら知らなかったよ。
「当日はどこでセンター受けるんだ?天気次第では大変だから近くのホテルでも抑えるか?」
「私達学園ではなくて、近くの公立高校なの。だから歩いていけるから大丈夫だよ」
歩いていける距離が会場でラッキーな方だろう。だからって安全なわけではない。
「まあ、とにかく体調だけはしっかりと管理しておけよ」
「はーい。私は自分の部屋でやるからいいや。お馬鹿なケンケンの相手をしてあげて」
また紗良にざっくりと切り捨てられた賢は本当に可愛そうであるが、これが最初の試練だとしたら可愛いものかもしれない。
「お前が文系志願だから仕方ないな。二次試験では必要なのか?」
「そこなんだけど、最後の最後で進路変えた。俺、教師になる。理科の先生」
「そうか。それなら頑張れ」
「うん、だから二次試験はどうにかなると思う。それと英語と数学もできたらいいと思わない?」
「そうだな。それだけできたらいいだろうけど、大変だと思うが」
「大丈夫。特に目標のなかった俺にできた目標だし」
頑張れよと賢の頭を撫でてから俺はダイニングに移動する。
そんな時にダイニングの上の僕のスマホが着信を知らせる。
「はい……社長。えっと20日ですか?その日はまだ休暇ですね。長いと言っても、今年はしっかりと休暇を消化しなさいと言ったのは電話先にいる社長だと思うのですが……」
年末に休暇が取れなかった僕に6日間も休暇を取っていいと言ったのは社長本人だ。
「えっ、はっ、はい。分かりました。今は兄弟たちのセンター試験前なので実家にいますけど、17日にはマンションに帰ります。分かりました。それでは失礼します」
「何?仕事?」
「似たようなものだけど、ちょっと違う」
「ふうん。俺も紗良もセンター試験はどうにかなるから兄ちゃんは泊まり込みで家にいなくてもいいよ」
「いいや、お前たちの食事の管理を母さんに任せるのはちょっと怖い。あの人はな、俺の高校入試の時の前日にカツカレーを大盛りで用意したんだよ」
翌日胃がちょっとムカついて試験に集中できたかというとちょっと違うなあと今でも思う。
「前日とかどういうのがいいの?」
「そうだな。さっぱりとした湯豆腐とか、水炊きとかだな」
「それは母さんが考えなさそうだ」
「そうだろう?だから、15日と16日の食事は兄ちゃんに任せろ」
賢を見るとこくこくと頷いている。どうやら母さんチョイスを想像したのだろう。
母さんのことだ、前日に厚切りのステーキとか用意しそうだ。
母さんは少々ごねたが、センタ試験の食事の世話は僕が一切を引き受けることになった。
前日は湯豆腐で締めを卵を入れたおじやに、初日の夜は水炊きで締めをにゅうめんにした。
当日は、お握りと豆腐とわかめの味噌汁と半熟のゆで卵。お昼の時間は自宅に戻ってくるというので、ジャムサンドとヨーグルトとバナナとコーンスープ。これも徒歩でわずかな距離だからできることだ。行きは正門から入ったのだが、自宅から近い裏門も開いていたという事で五分の距離が二分になったとのんきに二人は喜んでいた。
テストが無事に終わった今夜は二人にリクエストを受けたので、チキンカレーを作っている。二人そろって甘口のカレーが一番好きだというので、今年は丹精込めて作ったつもりだ。
カレールーは中辛なのだが、最後に牛乳で伸ばすので甘口になってしまうのだ。
これだとカルシウムも摂取できるのでイライラ防止にもなるだろう。
双子の方も予想以上にできてるってはしゃいでいるので、二次試験もこうやってサポートするのだろうなあと僕は自宅に戻ることにした。
社長からの電話は、20日にお見合いをしましょう。堅苦しくはしないのでご両親には話をしなくていいですよってことだった。集合場所は社長がよく使う西新宿のホテルのラウンジの前。まあ、お見合いの席でいつものような服装は流石に問題だから久しぶりにデパートでスーツ等を買い、美容院でカットをしてもらい自分なりに身なりを整え、残った時間はたっぷりと睡眠と取った上で、投資の時間に当てた。
当日の朝。自分でセットするのも下手だしなあと思い、美容院でヘッドスパをして貰いながらセットをしてもらう。美容院の奥で着替えをさせて貰って着替えを新宿駅のコインロッカーに押し込む。久し振りにちゃんとビジネススーツを着て、コートを羽織り、革靴なんて履いている。マネージャーでも革靴だけども今日はフォーマルに近いものという意味だ。
公務員自体には普通にしていた服装なのに、現場を離れて10年以上経つとどうもしっくりとは来ない。
美容院のスタッフも「現役の頃はさぞ優秀だったんでしょうね。今も十分凄腕のマネージャーさんですけど」なんて言ってくれたけど、それは社交辞令だろう。
公務員時代も今も深夜勤務になることはよくある。生活リズム自体はあまり変わっていない。たまに早朝勤務がある位だ。空港勤務の時だって今のような規制緩和はなかったので早番でも始発で家を出れば十分に間に合ったくらいだったし。
待ち合わせの時間は午後一時。今は正午前なので、ホテルの庭園でも眺めてからラウンジに向かうことにした。
ホテルの庭園は結構好きだ。優雅に泳いでいる高価な鯉に心を癒されるのもいい。僕は時間を忘れてしばし池の鯉を眺めていた。
約束の15分前。ちょっと早めだけど、僕はラウンジに行くことにした。社長の名前で予約をしてあるという事だったので、係の人にその旨を伝えてお水だけもらうことにした。
ラウンジでは簡単な顔合わせだけでその後にどこかに移動するに違いない。
五分前に社長に連れられて淑女という表現が見合った女性と伴った社長がやってきた。
そこから先は終始社長のペースだった。僕は彼女に不快に思うこともなく好感は持っていた。社長の話だと、彼女は老舗の呉服メーカーのご令嬢で今は実家で事務の手伝いをしつつ、実家で行っている着付け教室の講師をしているのだという。
「あの……このまま交際して結婚したとしたら」
「仕事は無理のない程度にして下さい。僕の仕事は不規則です。専業主婦だとお辛いと思いますよ」
「それと……もう一つお願いがあります」
「何でしょう?」
「私、実家で飼っているペットを連れて行きたいんです。いいですか?」
「構いませんよと言いたいのですが、近隣住民に迷惑をかけない程度であれば。気になるのでしたら、中古でもいいので一戸建てでも探しましょうか。今の僕のマンションにあなたが来るって前提ですけど……動物とは何でしょう?」
「あの……うさぎです。お嫌いですか?うさぎ」
「いいえ、動物は好きですよ。僕の部屋にはメダカしかいません。仕事で家を空けたりすることも多いので猫とか犬を飼いたいと思いつつ躊躇ってました」
そう、だからふうの家でリンちゃんに癒してもらっていたのだ。ふうに冷たく追い払われてもめげずにふうの家に上がり込んでリンちゃんに癒してもらったものです。そんな日ももう終わりかもしれません。
それに……こうやって彼女と話しているのが苦になりません。とても不思議です。
「今日は何の日か知っていますか?」
「今日ですか?何かありましたっけ」
ビビット達もラジオで今日は何の日をネタにしているけれども、今日をネタにしたことはなかったなあ。まあこれから話すのは地域限定だから知らないだろうなあ。
「今日はですね。東京都だけですが、家族の日なんですよ」
「素敵ですね。私知りませんでした」
「そうでしたか。こんな日にあなたに巡り合えたのも縁でしょうか」
「そうですねって言ったらロマンティストって笑いますか」
僕の言ったことに対して彼女も素敵な返事を返す。これが運命だとするのならそれでもいい。そう思えるくらい僕は十分なほどロマンティストだろう。
「どうでしょう。またお会いできますか?今度はあなたのもう一人の家族と一緒に」
「はい、ぜひ」
どうやら僕らの距離は縮まったようだ。
僕らの最初のお見合いからちょうど一年後。今年も僕はこの日に休暇をもぎ取ることが出来た。奥さんになった彼女は……午前中はどうしても休めない仕事があるという事で今はここにはいない。去年の家族の日にお見合いをした僕らはとんとん拍子に話が進んで、春には結納を交わしていた。僕の家で同居が始まったのは冬が始まる前の頃。僕の家もうさぎが住みやすい環境に少しだけ改装を施したのだ。結婚式は互いに多忙なので子供ができる前にという事で式場探しをしながら結婚式場を見に行っている。
今日に休みを取ったのは、婚姻届けを今日に出したいと二人で決めたことだから。一年前の家族の日にお見合いした僕らが一年後のこの日に夫婦になるのだ。
入籍をこの日に拘ってしまったために、婚約期間が延びてしまったのは申し訳ないと思っているが、彼女はふんわりと笑って「千紘さんは私と同じくらいにロマンティックな人ですから。この日が私たちにとってはバレンタインよりも大切な日です。ね?リュウ?」
そう言って、僕と彼女が座っているソファーの間を定位置にしているうさぎのリュウに話しかける。最初は僕に最大級の警戒をしてくれたが、今では僕にも甘えてくれてとてもかわいい。フワフワしている毛も本当に愛らしい。今のリュウは僕に体に体重を預けてうとうとしているように見える。そんなリュウの体を優しく撫でる。こんなに動物と暮らしていると心が癒されて、心が温かくなるなんて知らなかった。それに彼女と過ごす日々が平凡で穏やかかもしれないかもしれないけど、もう手放すことすらできるにいる。
「さあ、もうすぐ奥さんが帰ってくるから、お昼の支度をしようか。リュウは人参食べるだろう?」
ランチを食べたら区役所に行くことになっている。その間はリュウにはお留守番をしてもらうしかないけれども。
家族の日から始まった僕の周囲の変化は一年後の家族の日に落ち着くのだった。
3話は本編の展開とは違いますが、いずれはお見合い位はするんじゃないかな。