1. 雨の降った日(5)
満輝の読み方は、みき、です。
くろうさぎ様ありがと~~~
双子は多分ここ以外出てこないので、スルーで(笑)
夜、シャワーを浴びた後ロビーに降りて行くと、一つ下の階に住んでいる、ララとナナっていう双子がソファで喋っていた。
アメリカ人で、顔も性格もそっくりで、よく友人に当てっこさせては面白がっている、ちょっと変わった姉妹だ。
今も誰かをからかっている様子。
「どっちがナナ?」
「えーと・・・こっち?」
「ブブーツ!!こっちでした。」
「ちがうよ、ナナは私。」
「あれ?そうだっけ?」
「あ、やっぱり私がララかも。」
「いや、ララは私だよ。」
「あんたはナナでしょ」
「そう、ナナ、あれ、ララだっけ?」
ややこしいわっ!!結局どっちがナナだよ。
双子の変な遊びを聞いてるうちに、一体何をしにここへ降りてきたのか忘れてしまった。
ほんと、何しに来たんだっけ?
まだまだ続くララとナナのあてっこにウンザリしてきて、私は双子ともう一人の会話に割り込んだ。
「ララ!ナナ!うるさいんだけど!おかげで用事をわすれたじゃない!」
「え~、それは私たちのせいじゃ」
「ないでしょ。」
双子は同時ににんまりと笑った。
ところで、二人に挟まれて目を白黒させているのは、なんだ、絹じゃないか。
「絹、なに双子につかまってんの。鈍くさいね。」
「そんなあ!寮内を今日のうちに少しまわっておこうと思って降りてきたところを捕まっちゃったんだよ!なんか似すぎててどっちがどっちだか分かんないし、当てるまで放さないとかいうし!」
タスケテ、と必死に訴える絹を見て、少し可哀そうになった私は、助け舟をだしてやることにした。
「ララ、知ってる?さっきナナがララって名前書いてあるプリン食べちゃってたよ。」
「え!ララのプリンを?!」
驚いて隣をにらんだのがララ、それに気付いてぎくっとしたのがナナ。
割とケンカもする双子で良かった。ぎゃあぎゃあと言い争い始めた隙に、私は絹を引っ張って別のソファに移動する。
絹はほっとした表情で礼を述べた。
「ありがとう。いきなり始められて困ってたんだ。」
「新入りが珍しくて絡んだんでしょ。別に悪い子じゃないのだけどね。」
「でも、なんでプリンのこと知ってたの?」
「テキトーに言ってみただけ。朝、双子の一人がプリン食べてたから。どっちが食べてたかは当てずっぽうだったから、ラッキーだったね。」
「そうだったんだ。」
あ、思い出した。飼育委員の夜当番だったんだった。
イルカレースのイルカの管理は、主にパートナー選手と、飼育委員が協力して行っている。
基本的にイルカは練習とレースの時以外は、自由に海で暮らしているから特に餌やりなんかはいらない。怪我した時の手当てや、健康状態のチェックを獣医の指導を受けながらやっている。
明日のレースに向けて、今日は夜までイルカと練習している選手もいるから、一応監督に行くのだ。
夜当番はまあ言うなればライフセーバーみたいなもの。
朝も仕事はあるが、それはイルカとは関係なく、敷地内で飼っている動物の世話をする。
この地区には馬17頭、犬5匹、猫6匹、キリン(!)1頭がいる。
キリンがなぜこんなところにいるのかは、誰も知らない。
馬は引退した競走馬を引き取った子が多くて、体育の授業で活躍している。
朝当番で馬の係にあたると、近辺を約30分、散歩させなくてはならない。けっこう人気あるけど。
予約すれば休みの日に生徒が乗ることもできる。
わりとスポーツに特化している地区なので、乗馬の技術は一種のステータス、みたいなものかな。
イルカを絹も見に行きたいというので、二人でレース場の浜まで急いだ。