1. 雨の降った日
あなたは運命を信じるか。
私は信じる。なぜって、生まれた時から信じてるから。ずっと信じてたから。
雨が降りそうだ。
降るとしたら、もう1カ月ぶりの雨になる。この時期は降水量が非常に少ない上に日差しがとても強いため、溜池が活躍している。
明日は少し涼しくなるかな。
私は、降りだす前に、湖で冷やしている果物を取りに行こうと思い出して腰をあげた。
校舎の屋上には誰もいない。一昨年転落事故があってから、一応立ち入り禁止になってはいるけれど、鍵がかかっているわけでも、管理している人間がいるわけでもないから入ろうと思えばいつでも入れる。
誰もいないのは、単に熱くていられたものではないからだ。
私だって好きでこんな所に座っていたわけではない。もちろん理由はある。
友達を探していたのだ。ここからなら、この地区が十分見渡せるし、なんせ目立つ奴らだから。人だかりを見たら中心にはたいてい彼らがいる。
「お、いたいた。」
屋上を出る直前に、例の人だかりを発見した。ここからじゃ誰が誰だか分からないけど、おそらく彼らだと見て間違いない。
私は眼下の広場へ直行するべく、フェンスを飛び越えた。
「かっちゃん!」
”スイスイくん”のスピードを落として、私はかっちゃんの胸に飛び込んだ。
周りにいた人たちは、すごい勢いで飛び入ってきた私に驚いて散りじりになった。
「おわっ。満輝か。驚かせるなよ、まったく。」
客が逃げちまったじゃねえか、と舌打ちしつつ、しっかり受け止めてくれたのは、幼馴染のかっちゃんこと斐勢 勝也。
小さいころから一緒に育って、学園にも一緒に入った。
さっき私が乗っていた『スイスイくん』は、学内専用のスケボーのようなもので、高度50mまでの空中を走ることができる。非常に便利で、学園の3大必需品のひとつ。
なんともマヌケなネーミングだが、開発者のセンスらしいから仕方ない。
「み、き!どこから来たんだよ。」
透夜が私の頭を小突いた。
「屋上から。」
私は大校舎のてっぺんを指差した。
「いつも危ないからやめろって言ってるのに、一昨年転落事故があったの知ってるだろう。」
「うーん。つい急いじゃって・・・。気をつけます。」
反省してみせたところで、はた、と気付いた。
レイがいない。レイは郁宮 蓮のニックネームだ。
「ああ、蓮ならあっちで果物見に行ったぞ。」
かっちゃんが私を引き剥がしながら教えてくれた。さすがに私もくっついてるのは暑くなってきて離れる。
「あ!そうだ。果物取りにボンソワ湖に行こうとして降りてきたんだった。」
「まだ出てからそんなに経ってないから、すぐ追いつけると思う。」
かっちゃんは言った。私はうなずいて再びスイスイくんに足を乗せた。
学園の全貌は話の流れで徐々に明らかにしていく予定です。
なるべく人物や場所を細かく設定する描写は避けて、読まれている方のイメージにお任せするつもりでいます。
つたない文章ですが、よろしくお願いします。