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その7

勇者たちは立派な屋敷の前に立っていた。

「…なんで、よりにもよってここなんだよ」

「えっ魔王、ここ知ってるの?」

「思い出したくもない」

「実家よ、彼の」

「実家!?」

そういえば、あの女に連れてこられたとか言ってたっけ?

それにしても…

「立派すぎないかここ…」

「大道 勇、彼の祖父にして実業家、君にわかりやすく言えば大商人。彼が1代で築き上げた帝国の象徴こそがこの家」

「はえー、結構いい家の出だったんだな魔王って」

「よくねぇよ!こんなところ!」

「探しモノはここの地下にある。ってことで案内よろしくね」

「チッ…勇者、ドア開けろ。この体じゃ無理だ」

「わかった」

勇者がドアに手をかける、なぜか鍵は開いていてそのまま中へと入る。

「こっちだ」

魔王に先導されるまま進む、何度も扉を開けて小さな部屋を何個も通り抜けて一番奥、黄金に光り輝く祭壇のような物があった。

「…ガキの頃、家で遊んでいたらたまたま仏壇がズレて中に何かあったのが見えたんだ。部屋まで来てみたらジジイがいたから何かを聞いたらしこたま怒られたけどな、そしてそれと忘れろと…忘れられねぇよ、何か…恐ろしいものがそこにいるような気配が心の中にこびりついたんだからな…何かあるならここだろう」

「確かに、悪い気配が下にかなりいる…どんな思いを入れたらこうなるのやら」

天津が指揮するように指を動かすと祭壇はひとりでにズレて、その下に階段が出現した。

「俺は入りたくは、ないんだけどな」

「でも…魔王がいないと今の戦闘力低いから俺」

「まぁ私が先導はするわ」

天津が先に階段に入る、続いて勇者、魔王と続く。

数段降りたところで突然天津が立ち止まってこちらに振り返った。

「これは…」

「あの…」

「悪いわね、ここから先は二人で行って」

そう言うと天津の体は無数の人魂へと変わり、部屋の外へと飛んでいった。

「え?」

「あ、おい待て!」

残された二人は顔を見合わせ、少し考えてから再び階段を進みだした。



「イリス」

そう誰かに呼び止められる、振り返ると見たくもないヤツがそこにいた。

「だからぁ…今は違うんだって。何回間違えるんですか」

「そうじゃったな…年を取ったかどうにも昔の名で呼んでしまう」

「何のようでしょうかぁ、冥王様?」

「変わらんな…お前は昔から過激だったがそれを決して表には出さなかった、信心という鎧でな」

冥王が手を翳す、辺りが夜のように変化しその暗闇の中からこちらを見つめる瞳が1つ2つと開いていく。

「だからヘイズ、その鎧の裏の狂気…お前を止めることにした」

「冥王獣…」

冥界獣、冥界の看守にして暗黒の具現化…博愛主義者のジジイがコイツらを出してきたということは本気で私をやる気なのだろう。

「逃げれるとは思わないことじゃな」

「言われなくとも…!」

空気が凍る、周りの草木の生命が尽きるのを合図に冥王獣達は一斉にヘイズへと襲いかかった。



空気が変わるのを天津も感じていた、どうやら間に合わなかったらしい。

この感じは冥王獣が放たれたらしい、周りの生気が尽きていくのを感じる。

「…見つけた」

少し行ったところの少し大きな公園で冥王獣達を巧みに躱すヘイズの姿が見えた。

「(とりあえずこの撒き散らされ続けてる『死』をなんとかしないと…)」

天津は無数の人魂へと姿を変え、ドーム状に展開を始めた。

「(時間が経ち過ぎてる、数が足りない…!)」

不完全なドーム状を徐々に詰めていき、攻撃が当たるか当たらないかの寸前でようやく周囲を覆うことができた。

「む!?禍夢か!?」

しまった、ヘイズに気付かれた

というかあれは…冥王?

ヘイズが冥王獣の制御に失敗したんじゃなくて冥王が使役している?ということは、本気で殺す気なのか?

「禍夢じゃと!?」

「邪魔を…!」

「させん!」

ヘイズが人魂へと攻撃を仕掛ける、それを冥王が難なく相殺した。

「クソジジイ!」

「冥王獣!」

逆上して突っ込むヘイズに冥王が冥王獣を差し向けてぶつける、双方激突の後に差し向けられた冥王獣は動きを止めた。

「(多分、このまま待っているだけではダメだ)」

天津の見立てでは双方互角、思えば無限に復活する冥王獣と天使であるヘイズの間では根本的に戦いが終わる訳もない…神界戦争での教訓を不覚にも忘れていた。

天津はドームの天頂を開き、人の形へと戻った。

「貴方達、地上界を破滅させる気?」

「こんなとこぉ…どうなろうと知ったことか」

「策はあったさ、お前の登場で全部飛んじゃが」

ダメだこりゃ…でもこれで後腐れなくできる

「ロック!」

「な…」

残ったドームの言霊を全て使い、天津は冥王獣とヘイズの動きを止めた。

「私の勝ちね。さ、二人ともここは引いてもらおうかしら?」



天津が居なくなって数分、勇者と魔王はそれなりに長かった階段を下りきって広間に出た。

「俺んちの地下にこんな所が…」

「あ、あれじゃないか?」

勇者が指差す先にこぢんまりとした仏壇があり、本来ご本尊があるべき場所にあの緑の宝石が納まっていた。

「確かに…俺が見つけたやつと同じだな」

「よし、行こう」

二人が宝石に歩み寄る、仏壇の目の前まで来たとき勇者の足元からカチッという音が響いた。

「…いま何か?」

「…なんかすごい嫌な予感が……勇者、後ろに飛べ!」

「えっ」

勇者は一瞬困惑したが言うとおりに後ろへ飛んだ、その数秒後さっきまで二人がいた場所の床は崩れ去りその下から何かが這い上がってきた。

その姿は目玉のついた上半身の人骨のようだった。

「スケルトン!?」

「いや…これは…たしか…」

人骨はカラカラと音を立てながら振り返り、仏壇をまるごと飲み込んでしまった。

「嘘だろ…アレ倒すの今から…?」

「そうだ!害邪髑髏!爺さんからコイツの話をしこたま聞かされたっけ」

「今名前はどうでもいいって!」

また害邪髑髏はカラカラと音を立てて振り返り、こちらを見つめる。

二人をくまなく見つめ終えると害邪髑髏は家全体を震わす咆哮を上げながら超速度で腕を振り下ろしてきた。

勇者は避ける間もなく直撃して階段のところまでぶっ飛ばされた。

「勇者!」

魔王のその声に応答はなかった。

「くっ…」

害邪髑髏が音を立てながら魔王の方を見る、腕を上げる瞬間に魔王はその小さい体を全力で動かして振り下ろしに合わせて勇者の方に飛び込んだ。

「届け…!うぉっ!?」

魔王はなんとか害邪髑髏の指の間に落ちる、直撃は免れたが振り下ろした風圧で勇者のところまで吹っ飛ばされて激突し光となった。

「ほう、こういう場合はこうなるのか」

光の中から光弾が一つ、害邪髑髏へ一直線に飛んでいき右の目玉を一つ潰した。

「俺がメインなら、やりたいようにやらせてもらおうか」

真化した勇者の体に魔王の意思が、力が満ちる。

この空間の至るところに光球を生成する、彼の合図でそれは一斉に害邪髑髏へと向かって飛んでいった。

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