その6
「す…すげぇ…」
この力が何なのかはわからない、でもこれなら何かが変えられる気がする
再びの咆哮、振り向くとバラバラになった巨人のパーツ達がそれぞれ近くの残骸とくっついてこちらに向かってきていた。
「これなら…いける!」
地面を蹴って飛び出す、勢いのままパーツ達を的確に破壊していく。
「おりゃあ!…あぁ!?」
半分ほど破壊したとき、何か違和感を感じた。
体の中の何かが噛み合わなくなったようなそんな…
それでも動きを止めずに攻撃を続ける、そこから3体目を倒そうとした時、勇者と魔王は元の2人に戻ってしまった。
「やば…」
「クソ…走れ!」
二人でさっき倒しそこねたヤツを粉砕し走り出す、チラッと振り返るとパーツ達は猛追を続けていた。
「えぇい!勇者、ちょっと俺を持ってあっちに向けろ!」
「何?なんで?」
「奴らをぶっ飛ばす、この体じゃ反動がすごいんだよ!」
「仕方ねぇ」
「よし…いくぞ!」
魔王が力を込めると風が刃となってパーツ達の中心で爆発した。
「ざまぁみあがれ!」
後ろから何かが砕ける音、振り向くと2体のパーツが穴からこちらに飛びかかってきた。
「やば」
咄嗟に勇者は手に持った魔王をパーツに向ける動きを取ろうとする。
反応が間に合わない!
固く目を閉じる、パーツが勇者に触れるも何かが触ったような感覚はなかった。
目を開けるとそこに2つの人魂のような物が浮いていた。
「なんだこれ…」
「テメェふざけるな!俺を盾にする気だったろ!」
人魂が勇者達の後ろへと飛んでいく、振り向くと少し遠くの塚のてっぺんに何かが立っていた。
「おい聞け!」
「キレイ…」
体を覆うように閉じられた白い翼、それが開かれると透き通るような少女が現れた。
「あ゛?なにが?…おっと…あれは…」
「人…じゃないよな?羽生えてるし」
少女は一瞬こちらを見え微笑むと塚から垂直に落ち、その体を無数の人魂に変えた。
人魂は地面の中へと潜り、さっきのパーツ達と共にあちこちで爆発した。
数十発爆発音がした後、人魂達は勇者達の前に集結してさっきの翼の少女の姿に戻った。
「妙な力を感じたから来てみたら…まさか君とはね」
「相変わらずヤベェ力だこと」
「ちょっと……縮んだかしら?」
「余計なお世話だ!」
「魔王、この人知り合い?」
「ん?あぁ」
「あぁ、この人が?」
「そうだ」
「はじめまして、名前は…さてどれにしようか」
「毎回それなんだなアンタ…俺には天津神禍つってたか?」
「じゃあそれで。神様よ、彼から君の話は聞いてるわ」
「か…神!?」
「えぇ、神」
勇者は何だか、話がとんでもないことになってきたようなそんな予感がしていた。
2人は天津に連れられて洋館の地下室にいた。
「また…すごいところだな…」
「仕組みはよくわからないけどな」
そこは地下なのに広く、壁に貼られたステンドグラスはどこかからの光を浴びて輝いてどこか異国の教会のような場所だった。
「さて…改めてようこそ、境界の世界へ」
「境界の世界…?」
「あぁ、そこからか」
天津が指を鳴らすと空間が歪んで何か宇宙のようなところに変わった。
「これは…」
「君に説明しようと思ってね」
星々が遠ざかり、銀河すら超えて遠ざかってやがて円のようなものとなっていった。
それは巨大な球体の中に一つの小さな空洞があるように見えた。
「なんだこれ…」
「これが世界の形、一番真ん中にあるのが地上界…君たちの世界ね。その外側を覆うのが境界の世界、各世界に存在できなくなったものが最後に辿り着く場所」
「じゃあ、さっき襲われたアイツらは…」
「アレは…まぁ、言うなれば廃棄されたゴミだね。ここは色々と都合がいいんだよ」
「ご…ゴミ…?」
「その話はまたいつか。それで一番外側にあるもの、上が神界、下が冥界…君の大冒険のスタート地点。ね、脱走者さん?」
「!?」
あれ、そういうの…この人に喋ったっけ俺?
「フフッかわいい…ウソウソ、ちょっとおちょくりたくなっただけ。あぁ〜、その疑問はもっともだよね。そういうのはわかっちゃうの、君の『言葉』がそう言ってる」
「言葉…?」
「言霊ってわかる?私はそれが見えるし操れる」
どこかで聞いたな…なんか、言葉の力みたいな感じだっけ?
「よくわからないや…」
「もういいだろ、入れよ本題」
「手厳しいなぁ。まぁいいや、ヘイズだね」
天津が指を鳴らして空間を元の部屋に戻した。
「動き出した、ということね?」
「あぁ。そして石をコイツに」
石…俺の中に入ってきたあの球体のことだろうか
「ほうほう…でも完全じゃないね…まだ歪だ、集めきってないモノを入れたね?」
「時間が無かったんで」
「あの〜…さっきから何の話を?」
「…もしかして、何も説明してない?」
「時間無かったんで」
「あのさぁ…」
天津が掌から球体のようなものを出した。
「これ…魔王の…」
「そう、彼が最初に君の中に入れたもの。先代の世界を背負う龍の心臓の一部…」
球体が小さな緑の宝石へと変化した。
「これが彼の城で君が取り込んだもの。あの心臓のいわば血液にあたるもの、まぁ流れるのは血じゃなくて魔力だけど…ただし、彼のバックアップに力を使い過ぎてこれは魔力の残量がそんなにない。真化が時間制限付きなのはこのせい」
「真化?もしかして魔王と合体したアレ?」
「そ、世界を背負う龍の力を引き出す力。もっとも、二人でやるのはイレギュラーだけども」
天津はだいぶ冷めた目で魔王を見た、気迫に押されて魔王はたじろいていた。
「この、血液に当たるものは各地にある。それを集めて真化を安定させないと君の言う女…ヘイズは止められない。いずれ君の世界は肥やしにされる」
「アイツは、何をしようとしてるの?」
「…つまらないことさ。懐古的で盲信的なこと、世界一つを潰す価値すらない」
村のことを思い起こす、昔の思い出とこの前の地均しを。
天津が手をかざすと空間が割れ、道ができた。
「時間ね、行きましょう?場所は調べてある」
勇者が踏み出す、天津に掴まれながら魔王も進みだした。




