その3
「ちょっと、休憩しようか」
「そうだな…結構歩いたからな。お、あそことかいいんじゃないか」
二人は小さな木の下に移動して腰を下ろした。
ここまで数時間、人の気配なんてなく、おまけに周りの景色はほぼ変わらず進んでいるのかすらよくわからない状況だった。
「ふぅ…広いな、ここ」
「でもよぉ、昔を思い出すよ…あの村から出発したときも、こんな感じだったよな」
「あぁ…キュウ、お前の体力がないからすげぇ休憩したっけ?」
やっぱり、コイツと旅をするのは楽しい…改めてそう思う。
思えば、本当にいろいろなことがあった…ダイアモンドの丘に終わらない夜の街、ブラックホールになった女なんてのもいたっけ。
「そうそう!それでさ、一回あったよね。休憩中に向こうの方で…」
突然、キュウの指差した方向から爆発音らしきものが轟いた。
「あんな…感じで…ウソだろ?」
「行くぞ、キュウ!」
音からしてそこまで遠くなかったので、二人はその方向へと駆け出した。
ついてみると草原の中に巨大なクレーターが出来ており、その中心で閃光が駆け巡っていた。
「…おいラン、アレ魔王じゃないか?」
杖で眼を強化しながらキュウがそう言った。
「そんなバカな…」
杖を受け取り、その方向を見るとたしかにあの魔王らしきものがさっき案内されたヤツと同じようなのと戦って撃滅していた。
「アイツ、死んても悪さするのかよ!」
「キュウ!」
「わかってる、バックアップは任せろ」
「よし!」
勇者が魔王めがけて飛びかかり剣の一撃を食らわせる、魔王も反応はしたが間に合わずにその一撃をモロに食らった。
着地した勇者は反撃に備えるが予想に反して魔王は膝をついたのだった。
「く…やはり力を使いすぎたか…」
その姿は明らかに衰弱しており、生前の覇気はほとんど感じられなかった。
「おーい、大丈夫かランー!」
「…お前、ここで何をしている」
「勇者、お前を探していた」
「俺を…?」
「そうだ…うぉ!?」
キュウがこちらにつくと同時に魔王を魔法で拘束した。
「全く、死んだってのに何企んでやがる」
「ほう…?貴様、あの魔法使いか…衰えてはいないな?」
「それで、俺を探していたってどういうことだ」
「お前を探していた?コイツが?」
「フフフ…あぁ…ヤツの事でな」
「ヤツ…?」
あの女だ、間違いない
だが俺達は死んだ身、今更何をしようと…
「わかるぞお前の言いたい事…今更何をしようと…いや、できるんだよ今だからこそ」
そう言うと魔王は身体から何か球体のようなものを分離させた。
「これを使うんだ…だが、コイツ単体では足りない」
「何だこれ…すごい魔力だ…」
「そして探すんだ勇者、コイツを完全にする秘宝を…!」
「…」
「お前…ランに何させよってんだ!」
「…キュウ、ここでお前と会えてよかった」
「ラン…?」
「出れるだろ魔王?ここから」
「ああ」
「行くよ…魔王、最期にお前の言っていたことが全て本当かはわからないけど、少なくとも俺を殺したアイツは次元が違った…魔王の話に説得力が生まれた」
「お前…何を言われたんだ…?」
「だったら、俺が確かめる。世界…は、わからないけど、あの村は護りたい…俺の生まれたあの村は」
「恩に着る」
「キュウ、拘束を解いてくれ」
「で…でも…」
「頼む…後生の願い…って、俺達死んでるか」
数分、沈黙が流れてキュウは魔法を解いた。
「どうなっても…知らないからな」
「では、始めるぞ」
小さく頷くと魔王があの球体を勇者と同化させた、それと同時に凄まじいエネルギーが勇者の中で暴れ始めた。
「それを…開放しろ、それが道だ」
その言葉通り力を開放すると空間が割れ、混沌が広がる空間が出現した。
「俺の城を目指せ…俺の調べ上げた全てがあるはずだ。頼んだぞ…勇者…」
魔王の体が朽ち果て、砂となって消滅した。
それを見届けてからその空間へと勇者は飛び出した。




