その14
気がつくと俺は雨が降りしきる燃え盛る街にいた。
誰かが走ってくる、見覚えはあるが誰だったか?
「報告!各将、町門制圧完了!」
そうだ、コイツはクロウだ
だが確か既に死んだはずでは?
「そうか、よくやった。門をそのまま守れ、誰一人入れるな!」
そう自然と口に出る。
あぁ、思い出した
『回収』の時かこれは
俺は、いずれを俺を倒しに来る勇者となるべき『種達』試練を課そうとした。
敵に育てられた勇者が世界を守るために、もはや同類である育ての親を打ち倒し世界を救う…最高にかっこいいじゃないか、芸術と言ってもいい
俺はそういう話が大好物だ
それの一環が『回収』…あの時、結局それらしいヤツは見つからなかったが
それにしても、俺がなぜこんなところにいる…
この『回収』は何十年も前のことだぞ?
俺は少し歩く、街の地形は思ってたより覚えていた。
粗方部下が街を破壊し尽くしたおかげで人の気配はない、もっともこんなことで死んでしまうのならば俺を打ち倒したところでその先には耐えられないというのがこの頃の考え
だから徹底的にやった
後にこの街は地図から消えた、まぁ仕方があるまい
そろそろ雨が鬱陶しくなってきたな
中心街からすこし外側、小さな病院の中に入る
…天井が抜けていた、壁は残っていたが吹き抜けみたいにきれいに
これではここに入った意味がないではないか
腹が立って建物丸々、区画ごと粉々に吹っ飛ばしてやった。
「ほう?シェルターか…」
病院だった場所の端っこに取っ手の付いた鉄板を見つけた
開けてみると小さな階段が地下に続いていた。
なるほど、皆こんなところに逃げたのか…どうりで見つからないわけだ
あの戦闘のことしか頭にないバカばかりの我が軍ではなおのこと
俺は階段を下る、洞窟に当たったので進む
やがて、どこかの民家の地下に出た
地上に出るとそこは北の外れのようだった
相変わらず景色はあまり変わらないが、遠くで何かがいるのを見つけた
近づいてみると自分の部下2人が何かを囲んでいた。
「何をしている」
「あっ魔王様!瓦礫をひっくり返していたらガキを見つけましてね」
小さく丸まった子供をひっくり返すとそれはあの勇者だった。
「よく見つけた、褒めて遣わす…コイツは私が預かる、お前たちは他を当れ」
勇者の胸を触ってみる、鼓動は感じるから生きてはいるようだ
「どうした、早く行かないか」
2人がいきなり飛びかかってきた、俺はそれを難なく魔法でふっ飛ばしてやった。
「貴様ら、王たる俺にどういうつもりだ」
なおも立ち上がり襲いかかってきた部下たちを跡形もなく消滅させた。
「全く…」
そのまま勇者を抱きかかえてさっき来た洞窟内に戻る。
勇者を洞窟内に寝かせて外に出たところで後ろに気配を感じて振り向くと勇者が力なく立っていた。
「ほう、随分と早いな」
「…」
何か無言の圧は感じる、だが勇者は言葉を発さなかった。
「俺はもう行くぞ」
勇者は後ろを指差す。
「な…あれは…」
振り返るとそこにはさっきの街はなく、巨大な龍がそこにいた。
龍は大きく口を開け、何かエネルギーを溜めだした。
「まずい!」
咄嗟にバリアを張ったが、放出されたエネルギーにすべてが焼き尽くされた。
「うわぁ!………あれ?」
「あ、おかえり〜。どうだったそっち?」
魔王が目を覚ますと天津が微笑みながら足元に立っていた。
「どうなって…?ここはどこだ」
「『元』あなたの城」
「城だと…」
じゃあさっきまでのはタチの悪い夢だったのか?
いやそれはそれでヤツの言葉が引っかかるが…『どうだった』だと…?
「思っていることは概ね正解。ちょっと厄介なことになってね、精神世界に君を送った」
「厄介なこととは?」
「二人が別れてるときに、彼の中に龍が中に生まれちゃったみたいなのよ…この場合は再誕かしら?それを何とかしてほしいってわけ」
龍…そうかあのデカイのか…
身震いするぜ
「アレは俺だけじゃ無理だ、あんたも来てくれ。神様なんだし、それくらいはいけるだろ?」
「いやー、そんなこともないんだよね。二人間の繋がりがないと精神世界には入れない、つまり私は無理。でもヒントくらいならあげれるかな、なにか異物が入ってるみたいだから探してみて」
「簡単に言ってくれる…あの龍ってことか?」
「じゃ、がんばってね」
「ちょ、まだ話は…」
全部言い切るまでもなく、魔王はまた深い眠りについた。
目が覚めるとさっきとはまた別の見覚えのない灰の降る街だった。
だが雰囲気は知っている、元居た世界に名前は忘れたがこんな感じの都市があったような気がする。
さすがに灰は降ってなかったが。
とはいえ探す必要自体はなさそうで、既に向こう側に龍の影が見えている。
魔王はそっちに向かって歩き出した。
向かう道中、景色が目まぐるしく変わってく。
街が森になって冥界になったと思ったらまた街に戻って…
走馬灯とかいうやつだろうか?瞳に映った映像ではこうなると
既に死んでいる俺らに走馬灯もクソもないか
そう思うと少し笑えてきた
最終的に海に出た、音と風が心地良いがどこか物悲しい場所だった。
「ここは…タンドか」
タンド、魔王城から少し行ったところにある港街だ
ここだけは私も諸々の理由から手を付けなかったのでかなりキレイな街だったらしい
『また来たんだ』
振り返ると子供の勇者がそこにいた。
「挨拶で焼き尽くされちゃ、引くわけにはいかないんでな」
子供の勇者がニヤリと笑う、またあの龍が出てくるかとも身構えたがそんなこともなかった。
「お前は龍じゃないのか?」
子供の勇者から凄まじい気迫が発せられた。
この気迫、つまりはコイツがあの龍なのか
「なるほどな、つまりお前は俺達の集めてたものの中身ってワケだ…まぁその力には世話になった、一応礼は言っておく」
そうして魔王は頭を下げる、子供の勇者も少し戸惑った様子を見せたがさっきとはまた違う笑みを浮かべた、どうやらこちらへの警戒心は解いてくれたようだ。
「なんだ…?あ、おい待て」
子供の勇者が手招きしてどこかに歩き始めた、それを魔王も追いかける。
無数に景色が、おそらく勇者の経験が目の前を流れていく。
最終的にそういうのは無くなり水晶のようなものでできた洞窟の中に2人は入った。
美しい洞窟、その最深部にあった大きな結晶の前で子供の勇者は立ち止まって指を指す。
「コイツが何か…あっ」
その結晶の高いところに勇者の体が埋まっているのが見えた。
「アレをなんとかしろと…?まぁ、やる他ないのだけども」
手始めに火球をぶつける、水晶は無傷だった。
もう一発打ち込もうとした時、子供の勇者に腕を掴まれて止められた。
「なんだ?」
子供の勇者の方を見ると横に首を降っていた。
「違うって?じゃどうしろと?」
子供の勇者が魔王の手を水晶に触れさせる、その瞬間なにか大きな本流の中に自分自身が取り込まれていくのを感じた。




