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その1

常々、俺はこの世界というのは好きになれない。

理由は単純でクソだ、少数のやつの意思で大勢が振り回されて最後には捨てられる。

不満しかない、だがこの世は少数か大勢のどちらかに属さなきゃ生きていけないのもまた事実。

俺は大勢の方を選んだ、いや選ばざるを得なかなった。

でもそれは心を殺していくこととなる、それはもはや人じゃない。

だから俺はいつもと変わりなく、大多数がくだらないと切り捨てるどうでもいいことのために生きている。

今はとりあえず手に持った雑誌にデカデカと乗っているこのアイドルのために、まだ辛うじて俺の心は生きている。

「おめでとうございます!」

「え?」

俺は顔を上げる、そこには見覚えのないきれいな女が立っていた。

「あなたは選ばれました、祝福が訪れるでしょう」

「はぁ…」

大方、また宗教勧誘かなにかだろう。

思い出したくもないが、今日は5回も勧誘に引き止められた。

こんなところに救いなんてないと知っているはずなのに、どうして縋るのか。

「あの…急いでるので」

「時間は取らせませんよ、それでは…」

女が指を鳴らす、次の瞬間に轟音がして全てが闇へと沈んでいた。



「やるな…勇者よ…」

「魔王…これで…最後だ…!」

荘厳なる魔王城の最深部である魔王の間ではまさに今、世界をかけた決戦が繰り広げられていた。

並び立つはこの城の主である魔王、そして聖剣を携えた勇者である。

「やってみろ…!」

「アイツらと作ったこの力…見せてやる!」

勇者が聖剣に力を込める、ここまでの冒険の日々、そして自分を庇って散っていった仲間達…

それが力となって剣を輝かせる。

「行くぞ!大 爆 剣 !」

勇者が飛び出し、剣に炎を纏わせて魔王に叩きつけた。

それを魔王はバリアを展開して軽々と受け止める。

「残念だったな、その技は既に」

「誰が!」

勇者がバリアに向けて剣と反対の腕で妨害魔法をぶつけ、上空に飛び上がった。

「しまっ…!」

「 天 輪 大 爆 剣 !」

更に回転を加えた一撃を魔王はバリアを剥がされた生身で受けてしまった。

「さ……さすがだ勇者……どうやら…私の負けのようだ…」

双方が満身創痍だったが、魔王が膝をつき勇者だけがその場に立っている…ついに雌雄は決したのだ。

「…魔王、言い残すことは?」

「……………ないな。そうだな、一思いにやってくれ」

「わかった、いいだろう」

それを聞いて勇者が剣を振りかぶる。

その時、拍手と共に扉が開いて女がこちらに歩いてきた。

「…ほう?まさか貴様から来るとは思わなかったぞ」

「まだ幹部が…!?」

「勇者よ…悪いがたった今、用事ができた」

魔王がよろめきながら立ち上がり、女と対峙した。

「貴様…探したぞ、この時をどれだけ待ちわびたか」

「いやー、今回は長かったですけどついに最期ですかぁ。また次を探さないとですねぇ」

「ようやくこの時が来たんだ!」

絶叫と共に魔王が女に特大の魔法をぶつけた。

「魔王!何して!」

「残念ですけどぉ…こういうのは効かないんですって」

「ほう…?さすがだな…」

魔法で上がった土煙が晴れていくと女が無傷でそこに立っていた。

そのまま女はこちらを意に返さず虚空に何かを開いてそれを覗き込み始めた。

「無傷って…なんなんだアイツ…?」

「勇者よ、今から俺の言うことをよく聞くんだ。今は信じられなくともいい…だがこれが真実だ」

魔王は荘厳な椅子に倒れるように腰掛けて続ける。

「…私はこの世界の人間ではない。ヤツに…ヤツにここへ連れて来られたんだ」

「連れてこられた?一体どういうことなんだ?」

「ヤツは、別の世界から定期的に人を連れてきてこの世界に支配させている。最も、目的は知らんがな」

「支配…だと…!?」

「勇者よ、俺も調べてみたがこの世界の歴史…おかしいとは思わないか?魔王が打倒された丁度100年後に必ず魔王が再び出現して必ず世界を支配している」

言われてみれば確かにそうだ、確かそんな歴史を昔学校で習った

だが…

「全てやつの仕業だ…ヤツが全てを仕組んでいる」

「辻褄は確かに合うが…唐突すぎて信じられない…」

「今はそれでも構わん。だが私は、それを終わらせたくて…いや違うな、ヤツが気に食わなくて対策を打った。勇者よ、それがお前だ」

「…は?今、なんて?」

「ヤツを倒す…私では無理だった、最初にヤツに会ったときに嫌でもそれはわかった…だからそのための種を撒いた、この世界にな。そして待った、俺を倒す者が現れるまで。たどり着いたのはお前だけ勇者…いや、息子よ」

「は………?いやおいちょっと待て」

いくらなんでも話が急すぎる

確かにどっか行ったっきり帰ってこないとか聞いたが…

「おそらく10秒程度ならヤツの動きを止められる。そのスキに特大の一撃を叩き込んでくれ」

聞いちゃいねぇじゃねぇか

「だから待てって!お前が俺の父さんってどういうことだよ」

「ん?そのままの意味だけど?」

「話が唐突なんだよ!」

「ほら、どっかの漫画でも言ってたろ?純血より混血のほうが強いって」

「まん…が…?」

古文書かなんかだろうか?

にしても、さっき言ってた種を撒くの意味が変わってくるんだよ全く…

こちらのことを全く意に返さずに魔王が手をかざすと女が魔導鎖に拘束されて動きを止めた。

「今だ!やれぇ!」

「仕方ねぇ…大爆剣!うぉぉぉぉぉ!」

一閃、激突と共に爆炎が迸る。

手応えはたしかにあった。

「しまっ…!?」

「…だからぁ、効かないんだってそういうの」

次の瞬間、倒れたのは魔王だった。

勇者が振り返ると、その体には大きな風穴が開いていた。

「魔王!」

「あなたも」

冷たい声と一緒に鈍痛が体を駆け巡る、下を見るとなぜか自分の腕と剣がそこにあった。

それを受け入れるより前に自分の体は宙へと浮き、圧縮されて炸裂した。

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