中途半端という万能
本日は3話更新。こちらは1話目です。
「え、待って。聞いてない」
「今初めて言ったからな」
違う、そうじゃない。そういう事言ってんじゃない。
ここまで話を詰めておいて、そんな大事な事をなぜ今更言う!?
「そんなに深刻に考えなくても大丈夫よ。肉体を持つことになっても、物理的に私達を傷付けられるものはそうそういないわ。私達、曲がりなりにも神なのよ?」
「お前の体にしたって、俺達の宿主になるんだ。並の人間と同じだなどと思うなよ」
そう言われると納得。不安のすべてが払拭されたわけではないが、神様が2人も一緒にいてそう滅多なことも起こらないだろう。
「よし、分かった。自ら面倒事に首を突っ込まなければ命の危機はなさそうって解釈した」
「そこまで分かりゃ十分だ。んじゃ、名付けの儀をする前にその後のことについて少し説明をするぞ」
そう言うと彼等は自分達の髪を1本プチリと抜き取った。
あぁ、もったいない。キレイな御髪がっ!
抜いた髪に創造の神が手をかざすと手のひらサイズの人形が2体出来上がった。
「これは人間界で私達の依代になるものよ。私達は普段あなたの体に宿っているけど、本気で力を使おうと思ったらあなたの体では耐えられないの」
「さっきは並の人間と同じではないと言ったが、だからといって俺達と同じになることもない。所詮人の身だ」
中途半端だな、オイ。
「まぁ、悪く言やぁ中途半端だが、よく言やぁ万能なんだよ」
「先程から話しているように私が創造の神で彼が破壊の神。私達のそれぞれの力は強くて大きいけど、一方の力しか使えないの」
「だがお前は俺達2人の力を1人で両方使えるんだよ」
何それスゴイ!
「ただしさっきも言ったけど、人の身では使える力に限界があるの。例えば治癒の力。私が使えば傷はもちろん失った血液や四肢の欠損まで回復させることができるけど、あなたの力では傷を治すことしかできないわ」
中途半端だな、オイ。
「そうは言っても、人の身でそれ以上を要求されることもまずないと思うけどね。それから1つ人間界で絶対にやってはいけない事があるわ」
「やってはいけない事?」
「あぁ、世の理に反する禁忌というヤツだ」
「死者の蘇生。失われた命をもう一度蘇らせる事は絶対にやってはいけないの」
「さっき説明したが、本来命が失われたら、俺の力で回収し」
「私の力で新たな生命へと生まれ変わらせるんだけど」
「無理に蘇生なんてさせたら回収ができない。朽ちる体に無理矢理魂を戻そうとしたらどうなると思う?」
・・・あ、まさか
「そう、アンデッドが出来上がるわ」
ここまでお読み頂きありがとうございました。