裏切り
いらっしゃいませぇヽ(=´▽`=)ノ
本日もお越し頂きまして、誠にありがとうございます!
見渡す限りの平原。
こんな所には来たことがない。
当然ながら、転移魔法のマーキングなどあるはずもない。
しかし、そんなものは最早あって無いようなもの。
魔核の力を全て得た今となっては
この世界の中ならば、どこへでも行けるようになった。
「ぐぅ…おのれ…まさか、またこの忌々しい地へ戻ってくることになろうとは…」
「ここはあんたの第二の故郷みたいなもんでしょ?」
ちょっと煽ってやると、スペルディアは悔しそうに
ギリギリと歯噛みをした。
ここは以前、スペルディアが封印されていた土地。
こんな何も無い、だだっ広いだけの土地のどこに?
と思っていたが、この土地の地下深くに牢を作り
そこに封印したということだった。
器として魔核を受け入れた直後から
私には今までこの世界で起こった出来事が
全て手に取るように分かるようになっていた。
魔核と情報を共有しているということなのだが
私自身には身に覚えのない記憶が
突然呼び覚まされるというのは
なんとも言えない気持ち悪さがあり
まだしばらくは慣れそうもなかった。
「許さんぞ!私のものになるはずだった力を…私が神になるはずだったものをっ…!」
「いい加減目を覚ましなよ。あんたじゃ最初から無理だったんだよ。自分でも薄々気づいてたでしょ?」
「黙れっ!!全ての力を手に入れれば、私は完全な存在になれたのだ!それを、貴様のせいでっ!!」
ゴオォォォォーーッ!!
有無も言わさず、特大の魔法をぶっ放してきた。
遮へい物の無いこの平原で
これだけの高火力魔法を避けるのはなかなかに骨が折れる。
しかしそんなことはお構いなしに、次々と連打してきた。
普通なら魔力切れを起こしそうなものだが
どうやら、さっきリーフが言っていた
「魔術師としても反則級に強い」というのと
やはり「歴代最強神官」と言われる者の実力なのだろう。
本来魔術師は、一番適正のある1つの属性を操り
それを極めんとするらしいのだが
スペルディアは全ての属性に適正があり
属性の組み合わせを駆使して
効率よく最大火力を生み出すことができる。
加えて、元々もっている魔力の量も凄まじく
魔力切れを起こしにくいということだった。
「御主人様!落ち着いて下さい!このままでは、お体が持ちません!」
「ハッ!構うものか!」
「御主人様!おやめ下さい!どうか!」
自暴自棄になったらしいスペルディアを
マイケルが必死に宥めようとしていた。
マイケルの顔には焦りと不安がありありと浮かんでおり
自らの主を、心から心配しているのが見て取れる。
だからこそ…
「あんた、なんでランドルを殺さなかったの?」
ボソリと私が呟くと、マイケルがピクリと反応した。
この轟音の中でも、猫の耳にはしっかりと届いたようだ。
なんだかとても苦しそうな顔で、私を睨んでいた。
その表情は、「葛藤」という言葉が相応しいものだった。
私がランドルとマイケルを見ていた期間は短いけど
それでも2人がお互いを特別な存在だと思っているのは
すぐに分かった。
マイケルにとって、スペルディアに付き従っているのは
本心からだろうが、ランドルを守りたいと思っているのも
また本心からだというのが見て取れた。
だから、転送箱を作った。
ランドルを殺したくないからこそ自分が出向き
ランドルの行動をあえて疑わず
見事に主人を欺いたのだった。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
次回更新は8日、木曜日を予定しております。
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