怪しいのは分かってるけど怪しい者ではないんです
3話更新。こちらは2話目です。
頭を抱えしばらくうんうん唸っていたが、ふと魔獣の魔力を感知した。
そしてなんと、その近くには人間の魔力反応が!
話が出来すぎてやしないかと疑うも、この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかないと猛ダッシュした。
* * *
「なぁ、なんかこの森随分魔獣が少なくねぇか?」
パーティーのリーダーが仲間に問いかけた。
「やっぱ、そう思う?僕も少ないなって思ってた」
「うん、私も。進むのは楽でいいけど、儲けは少ないよね」
「ん〜、でもこのペースで行けば、今日の昼過ぎくらいにはアグニアの街に着くよね」
4人でパーティーを組み、冒険者として旅を始めてから結構長いが、こんなに魔獣が少ないこの森は初めてだった。
不審に思いながらも歩を進めていた4人だったが
魔術師の警告により足を止める。
すると間もなく魔獣が現れた。
臨戦態勢をとる4人だったが、魔術師が再び警告を発した。
「9時の方向、魔獣じゃない何かが物凄い勢いでこっちに向かってる!何アレ・・・人間にしては動き方とスピードが異常だわ」
「クソッ!さっきまでのは嵐の前の静けさってやつか!とりあえず今は目の前に集中!お前は引き続きその何かの動きを・・・」
「待って!もうここに到着するわ!」
木の枝の中から黒い影が飛び出したかと思えば、魔獣目掛けてかかと落としを見舞い、勢いそのままに魔獣を踏み抜いた。
呆気に取られている4人を尻目に魔石を回収する何かをみて、どうやら人型であることを確認した。
女の姿をしているという事も。
4人の存在に気付いた女は急に挙動不審になり、しどろもどろになりながら自分の置かれている状況を説明しだした。
「ふーん。つまり、身分証も金もないが街には行きたい。入国さえできれば金を返すアテはあるから、俺達に同行し一時入国料を肩代わりしてくれ。と」
「ハイ!その通りです!いきなりこんな事言われて怪しむのはごもっともです。あの、少々お待ちいただけますか?集めた魔石を持ってきますので!」
女はそう言うと、転移の術式を展開し消えていった。
「・・・どう思う?」
「いや、どうも何も・・・確かに怪しいのは間違いないけど、悪意は感じなかったなぁ」
「うん。本気で困ってるように見えた。それに転移魔法を使えるなんて、かなり高位の魔術師じゃないのかなぁ?」
「・・・黒目黒髪っていうのも今まで見たことないし、あの人見た目は人間だけど多分普通の人間じゃないと思う。私の勘ではあるけど、あの人絶対に敵にしちゃいけない人だよ」
4人の意見は「怪しいがとりあえず協力してみよう」でまとまった。
その後、転移で戻って来た女がもってきた3袋満タンの魔石を見て度肝を抜かれ、この森に魔獣が少なかった理由を理解した。
魔術師が言った様に、この女を敵に回すのは得策ではないと瞬時に感じ取った彼等は快く協力を申し出るのだった。
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