プロローグ2
「なるほど、鬼ですか。それは…チッ!なんでこっち来るかな」
俺の話を聞き、何かを言いかけた彼女は舌打ちをして急に苛立った態度を見せた。
と、同時にそれまでゆったりと彼女の傍らに侍っていた狼達が我々のいる所とは別の方向に威嚇を始めた。
彼女に気を取られすぎていた。
己の未熟さを痛感しつつ、意識を彼女らの視線の先に向けてみる。
すると何かが近付いてくる気配があった。
魔獣か?かなり大型だな。
俺達もそちらに構え直した。すると程なくしてバキバキと森を踏み荒らす音が近付き、咆哮と共に熊の様な大型の体躯を持った魔獣が現れた。
魔獣が姿を見せると同時に、狼達が飛びかかった。
3匹がかりの鬼気迫る勢いに、俺達は迂闊に手が出せなくなった。
どうしたものかと迷っていると、彼女が魔獣に向かって走り出した。
止める間もなく彼女は駆け抜け、狼達と交戦中の魔獣の背後に回り込んだかと思えば、尋常ならざる跳躍力で森の木々を足場にして見上げる程巨大な魔獣の頭上まで飛び上がった。
外套の下に隠し持っていたのか、いつの間に抜いたのか、彼女の手には剣が握られていた。
狼達がサッと身を引くと、彼女は構えたその剣を落下の勢いそのままに魔獣の首を目掛けて振り下ろした。
一閃
一太刀で終わった。
あの巨体の首を一太刀で。
いや、それより彼女が持ってるあの剣は…。
呆気にとられ動けなくなっていると、彼女は「ふぅ…」と息を吐いた。
そして魔石を回収して俺達に向き直り、何事も無かったかのように話しだした。
「ごめんなさい、話が途中になってしまって。鬼のことだったわね。それなら…」
彼女の話を聞き、俺達ですら知らなかった鬼の情報が出てきたが、正直この人物も得体が知れない。
どこまで信用できるか分かったものではない。
それに先程見た彼女の剣は鬼が持っているソレと同じ物の様に見えた。
しかし彼女は話の最後に
「・・・だから私はこの国に入る時、自分の容姿を隠したのよ」
そう言って外したフードと仮面の下を見て、俺達は驚愕に目を見開くことになった。
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