いろいろ足りない
本日は2話更新。こちらは1話目です。
ここから新章になります。
異世界チュートリアル、スタートです。
人形に向かって呼びかけると、手のひらサイズだったものがあっという間に大きくなり、先程まで話をしていた神達と寸分違わぬ姿になった。
あ、でもちゃんと服は着てるんだ。さっきまでのいかにも神様ですなスタイルじゃ絶対浮くもんね。
この世界の人間をまだ見てないからなんとも言えないけど、さっきまでの彼等の格好がスタンダードじゃないことは私でも分かる。
「んあぁ〜、久しぶりのシャバの空気だな」
「ホントね〜、前回こっちに来たのは50年位前だったかしら?」
思い思いに伸びやら深呼吸やらをしながら感想を述べる彼等を横目に、私は自分の状況を把握しようと努めた。
まず周囲を見回した。
先程も思ったが、木や茂みしかない。
こっちに転送する前に何やらコソコソ話していたが、森に転送すると言っていたのは間違いないようだ。
次に自分の格好。
ヴェールに外見をいじれるよと言われ、アレコレ希望を入れてもらいつつも世界を見て回ることになるだろうから、旅ができる装備にすると言われ了承したのだが・・・なんか、足りなくない?
確かに服装は機能的よ?素材はよくわからないけど、綿っぽいシャツにデニムっぽいパンツ、レザーっぽい軍靴に腰のベルトにはさっきの人形がいれてあったまぁまぁ容量のあるポーチと、剣帯には脇差し位のサイズの剣とサバイバルナイフが1本ずつ。
それだけである。
待て待て。動きやすさ重視であることは理解できるが、これだけの装備でどうやって世界を旅しろと?
そもそもここはどこなんだ!?
森なのは知ってるけど、街へ出るにはどうしたらいいのよ?
情報も装備も足りない!圧倒的に!
ちょ、おいコラ。あいつらいつまでくっちゃべってるんだ!
こっちの世界のことはこっちに来たら説明するって言ってたよな!?
なに思い出話に花を咲かせてるんだよ!
あまりに呑気な彼等の空気を見てふと思った。
彼等は時間の感覚も人間とは違うのではなかろうかと。
さっき彼ら自身が言っていた。「永遠を生きてる」と。
情を移すには人間の一生は短すぎるとも。
であるならば、人間とは感覚が違って当たり前なのだろうな。
一呼吸おいて、彼等に声をかけた。
「ねぇ、そろそろ説明が欲しいんだけど?」
思い出話で盛り上がっていた2人はハッとしてこちらに向き直り、バツが悪そうに話し始めた。
「ごめんなさいね。こちらに来るのも久し振りだったからつい…。えぇと、まずはこの世界の環境とあなた自身についてね」
「この世界には魔法がある分、お前のいた世界の様な科学技術はほぼ発達してない。医療に関しても同様だ」
「病気も怪我も魔法で治せてしまうからよ」
怪我はともかく、病気まで治せてしまうのか。そりゃ医者いらずだね。
「ただその辺りちょっと複雑で、科学技術に相当する魔法と医療技術に相当する魔法は種類が違っていて、分けて考えられているのよ」
ここまでお読み頂きありがとうございました。




