頭文字M Project D(Doうして流れ星に願い事を言おうとしてもすぐ消えちゃうのかのD)【五人少女シリーズ】
ただパロディしたかっただけで。完全にやりたいことやっただけです。
だってイニD面白かったんだもの。
これは宇宙人設定を持つ美少女である真凛が宇宙のどこかにある実家から地球に帰るときの事。
真凛は中式流星型T-86号に乗り、星雲を超えて最高速度で地球を目指している。そんな折に……。
「来たか……天の川のハチロク……こんなに血が騒ぐのは久しぶりだ……!」
宇宙、天の川銀河に差し掛かった辺りに、その流れ星屋集団はいた。黄色の星影を残して流れる350光力を誇る大型流星、FD3型のドライバーがそう呟いた。
真凛はその銀河の入り口に、今日は流れている流星が多いな、程度に考えながら、気持ちは一つで地球を目指している。
「早くあの子に会ってわたしの心のガソリンを満タンにしたいなー」
そんな明らかにパロディをしようという魂胆の呟きをしている真凛の目の前に、黄色いFD3型流星が飛び出た。
「悪いなハチロク……以前の雪辱を晴らす!あのハチロクがオレのバックミラーに映ることはもうないぜ……!」
「なんだろう、突然前に出て。邪魔な流星さんだなぁ……」
FD型を操るKSK星人は真凛のハチロクのはるか前方にまで加速している。それを遠くで見ているRYSK星人が鋭い眼光を持って真凛のハチロクを分析した。
「あのハチロク、加速を見る限りせいぜい良くて150光力というところか……KSKが言うようなモンスターとは程遠い……シフトポイントが早いのはラリー用のクロスミッションを組んでいるからか。あれなら衛星の多い天の川銀河のタイトなヘアピンにピッタリ合う……モンスターなのは車じゃなく、ドライバーなのか……」
真凛は掴んでいる86型流星に力を込めた。この戦いを見に来ていた流れ星屋たちがその流れのキレに息を呑む。
「なんだありゃ!?すっげーぜハチロクのライン!冥王星から5センチと離れてなかったぞ!?あんなスピードで大気圏を通り抜けられるやつ、今まで見たことなかったぞ!」
冥王星ポイントを超え海王星付近に差し掛かって前を行くKSK星人もまた、その化け物のようなハチロクをバックミラー越しに確認していた。
「なに!?差が詰まってる!?ヤツの流星が近づいている!?……気のせいだ……そんな馬鹿なことがあるわけねぇっ……」
KSK星人は流星を海王星付近の重力に載せてドリフト走行を始める。海王星人はそのあまりの速さに願い事を3回言うことは出来なかった。
KSKのFDと同様、真凛の86も海王星にドリフトで攻めていく。海王星付近でこのバトルを見ていた流れ星屋の観客たちは真凛の走法にただただ驚嘆する。
「な、なんだあのハチロク!?すごいスピードで星影を流しながら突っ込んで、そのまますげえ速度で抜けてったぞ!いつ惑星に突っ込んでもおかしくねぇ!見てるほうがゾットするぜ……!」
天王星に差し掛かる頃にはもう、華麗なドラテクによって真凛の86はKSKのFDとの距離を月一つ分以下にまで縮めていた。
「追いつかれた?!何が起こってんだ……気が変になりそうだぜ……っ」
「あれれ……?」
真凛は抜こうと思いながら迫ったのだが、FDとは根本的な光力が違う。
「セカンドの立ち上がりは同じだけど伸びが違いますね……ちょっとでもデブリが少ないとドバっと差が開く……」
小惑星帯を駆けながら、二つの流星は順番を変えること無く、近づいたり離れたりを繰り返している。それを観客たちが白熱しながらやんややんやと喋っている。
「KSKが煽られてるぞ!天の川のハチロクはめちゃ早だ……!まじかよ、KSKのFDがあそこまで追い回されることなんてなかったぜ?!」
その報告を聞いたRYSK星人はただその事実を認めて呟く。
「誤算だったな。天の川銀河にこれほどの凄腕がいるとは」
真凛はまだ流している。だがその走法はギャラリーに化け物と認知されるほど狂気じみていた。
「すげぇツッコミだ……あのハチロク、ツッコミ重視のとんでもねぇ神風走法だ!惑星に突っ込む恐怖の感覚欠けてんじゃねぇのか?!」
その走法に誰よりも恐怖しているのは、真凛の前を走るKSKである。
「直線ではオレのほうが早いんだ……それなのに食いつかれるってことは、コーナーワークで負けてるってことか……パワーの劣る流星に負けるなんて、流れ星屋として最大の屈辱だ!そんなこと死んでも認めたくないぜ……!!」
KSKは本気で真凛のハチロクをちぎろうとしている。長年の流れ星屋としてのプライドが、そうしなければならないと咆哮している。だが叶わない。自身が流星であるにも関わらず、その願いは受け入れてもらえない。
「まったくもう……うちのパパったら、早く地球に行きたいって言ってるのに泣いて行かないでっていうんだもんなぁ……しょうがないですね、あれやりますか。あの子に早く会えるかがかかってるしっ。仕掛けるポイントは、この先の土星カーブですよぉっ」
「くそぉっ……!」
KSK星人は細かなデブリの回避により、全く差を開けなくなってきていた。
「どうしたんだ!?今日に限ってFDがやたらに鈍く感じられる……!セカンダリータービンが止まってんじゃねぇのか?!」
その差はもう月一つ分ではない、たった小惑星一つ分にまで距離を縮めている。そこでFDは土星を前に減速する。目の前にある土星の環には様々な粒子が物体が流れているからだ。いわば大型デブリの群生地。そんな場所でハチロクは加速を続けた。
「大デブリ帯なのに減速しねぇっ?!何考えてやがる!!」
観客の完成はここで一際大きくなった。
「うわぁ!ハチロクがとんでもねぇオーバースピードでデブリ帯に突っ込んでいく!ブレーキがイカれたのか!?」
だが真凛は極めて冷静である。86を少し流し、そのデブリ帯の完璧な攻略を実践した。まるで流れ星のように、真凛の流れ星はKSK星人の目の前から姿を消した。だが星影だけは残っている。その星影は明らかにKSKのFDはよりも前に飛び出ていた。
「KSKが抜かれちまった!!あっけなく!デブリ帯でスパーンと!!一体何が起こったっていうんだ?!」
それを観戦していた板金星人が呟く。
「ふっ……俺にはわかった……あのハチロクが何をしたのか。バカバカしいことだが、あんなことは誰にも絶対真似できない。しかもこの天の川銀河でしかありえねぇことだ……とんでもねぇバカが世の中にはいるもんだ。楽しみが一つ増えたぜ」
板金星人は言うだけ言ってどこかへ帰っていく。別にこいつと戦う話が描かれる予定はない。木星のカーブを経て、最後のストレートで観客たちがその大どんでん返しに湧いている。
「来たぞ!ハチロクだ!!すげぇどうなってるんだ!KSKのFDも来た!、これだけ離されたらもう差は縮められない!ハチロクがぶっちぎりだ!!!」
「くそぉっ!!オレのFDがハチロクなんぞに負ける!?そんなことがあってたまるか!!350光力が、ボロハチロクに!?」
だが願いを叶えるはずの流星はKSK星人にその力を発揮することはなく、そのまま木星のゴール地点をハチロクに通過させた。
「今ゴールした!!KSKが負けたー!!」
真凛はそのまま地球へ向かっていく……。土星の環で大量の大型デブリを砕きつくして進んだにも関わらず、そのボディは傷一つついていない。真凛の破壊の力で最短コースを作るように前方のデブリ全てを塵のように砕いていたからだ。
「くっ……悪い夢の続きを見てるのか。オレがハチロクに負けた……それも2度も……」
って言うことをしてるから、誰もたった3回のお願い事を言えない間に消えちゃうんだなぁ。
伝説の流れ星屋、ハチロクの真凛の伝説はここから始まった。(続かない)
最高のユーロービートから入って、アニメ全部見たんですよ、イニD。
これすごく面白いんですよね、シーズン1の導入なんて「なろう系」の先駆けといいますか、異世界転生で最強だった系の元祖にもなるんじゃないかっていう感じのストーリーの持って行き方なんですよね。
それが現実の世界にある環境とテクニックで行われて、膨大すぎる車の知識を持って解説される"プロ"の漫画……自分に車の知識は全く無いのですが、わからないなりにすごく楽しめたんですよね。
私は片手走法を使うエレガントなおっさん戦が最高に好きでした。あの勝ち方に賛否が生まれてるけど、あれはしっかりと精神的に追い詰めた過程あっての勝……(長くなるからカット)
ここまで読んでいただいてありがとうございました!単なるやりたかっただけのパロディですが、もしよろしければシリーズの他のお話も読んでくれたら嬉しいです!