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気がつくと目の前に、見目麗しい男性がいた。
頭2つ分ほど高いその顔は結構至近距離にあって、しかもその男性と私は手を繋いでいた。
状況が理解できず硬直する私の耳に、優雅なクラシック音楽が聞こえてきた。
可笑しい。音楽を聴くのは好きだけどクラシックはあまり聴かないのに。
「……ロッティ?」
茫然と立ち竦む私に目の前の男性が声を掛ける。
(ロッティ?)
何そのメルヘンな名前。
胡乱げに見上げると男性もまた怪訝そうな表情をしていて、それを見てある確信を持った。
その瞬間、男性に握られている手と支えられている腰に意識が行き、湧き上がった拒否反応に従って振り払うように男性から逃れる。
驚いたように目を見開く男性と目が合い、怖くなって素早く逸らす。
男性とこんな至近距離にいて、手を握り合い身体に触れさせていたなんて信じられない。
勢いよく後退りしようとして、がくんとバランスを崩した。どうにか踏ん張って倒れずに済んだが、視線を下に向けて驚愕した。
シルクのような生地の真っ赤なドレス。裾はふんわりとした大きなフリルが幾重にも重ねられ、胸元には煌びやかな宝石が散りばめられている。
そっとドレスの裾を少し持ち上げるとドレスと同じ真っ赤な色で、細く尖った高いヒールの靴を履いている白い脚が見えた。
何これ。
「どうされたんです?ロッティ」
様子の可笑しい私にまた男性が声を掛けてくるが、今はそれどころではない。
周囲を見渡すと私と似たようなドレスを着た女性たちや、紳士服のようなものを着た男性で溢れかえっていた。
目の前の男性も、高価そうな白い礼服で両肩には金色の肩章がついていて、左胸には紋章が描かれていた。
私がいる空間は大理石でできた大広間のようなところで、赤い絨毯が敷かれている。見たこともない高価そうな綺麗な料理がテーブルの上に並び、楽器を演奏する人たちも見えた。
まるで舞踏会だ。
自分の中の確信が正しいと分かり、血の気が引いていく。
「ーーここ、どこなん…?」




