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ききとして舞え  作者: 曖昧簡素
序章
8/9

大悪鬼④



「しかしなあ……」と想鬼(そうき)はぼやく。

新ノ口(にのくち)は「良いじゃあないか」と想鬼の膝枕でのんびりと囁く。


「なに、私が手伝おう、一之信(いちのしん)」と新ノ口は歌うように念思を繋げる。修行をしていなくともこのくらいは出来るのだ。


『おお!新ノ口様ならわかってくれると思いました!』

「ああ……あぁ!もちろんだとも?」と滅多に甘えてこない弟分の言葉を受けて、新ノ口は楽しそうに言う。


「何を言い出すんですか」とつい、敬語……昔の癖が出た想鬼が慌てる。新ノ口はにこりとして朗らかに言う。


「大丈夫だよ想鬼、なんとかしてくれるだろ」


お前が、とは続けず、よっこいせと起き上がる。懐から扇子を取り出す。姿勢を正して正座し、こほん、と咳払いを一つ落とした。


目を瞑り、神経を研ぎ澄ませていく。



新ノ口は元々怪談話を専門とする噺家(はなしか)だった。

高座(こうざ)に上がり、物語を語る人間のことを言う。



彼の語り口は鮮やかで、悪霊や浮遊霊にめっぽう好かれやすく、その関係で想鬼と密な関係になったのだ。

もちろん、それ以外にも様々な理由はあるのだが、今回は省略させてもらおう。



その強い氣の力を言葉に乗せる事により、彼は自然と高度な降霊術を完成させていた。



怪談話をすると寄ってくると言うだろう?



名人芸がいつの間にか人間業から離れているように、彼もまた、知らぬうちに人間の枠から外れてしまっていたのである。



想鬼が何か慌ててまくし立てているが、何。

雨音に紛れて聞こえていない事にしてしまえば良いのである。


新ノ口はゆっくり語り出した。































――――――――――古めかしい言葉で、夜に口笛を吹いちゃあいけない、なんて言いますけれど、ご存知ですか。あれ、昔は泥棒の合図に使われてるなんて言いますけどね。


よく言うでしょう、(へび)が来るとか(じゃ)がどうとか、まあ、どちらも同じ()、なんですけども。全く昔の人というのは偉いもので、そういう話に紛れ込ませてしまってるんですね。


なに、なにって、決まっているでしょう。


幽霊、妖怪、鬼、奇々怪々(ききかいかい)魑魅魍魎(ちみもうりょう)の一つまみを呼んでしまう……。


ええ、そうです。今日はそんな呼んでしまった男の話です。



















――――――――――――――――――――新ノ口の語りは素晴らしい。

それは私も認めるところで、楽しみだ。


しかしここで残念なお知らせをしよう。

この夜の話はここまでだ。

どうせ悪い鬼を倒してお終い。

でもこの話はそう言う話ではないから。



その昔、この新ノ口、呼んでしまう男だった。

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