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ききとして舞え  作者: 曖昧簡素
序章
7/9

大悪鬼③


「なあ、想鬼(そうき)。オレはもう寝たい」


雨の中うつらうつらと新ノ口(にのくち)は囁く。


「……すまない、少し我慢してくれ」想鬼は困ったように囁き返す。新ノ口は想鬼の膝の上に頭を乗せたまま欠伸をする。


「……では、手伝おうか?」

「いや、先ぱ……新ノ口は何もしないでいい」


新ノ口は妖しく喉で笑い、肺に濡れた空気を取り込んだ。そして―――――――――――――――。







始真(しま)はぼんやりと紫煙(しえん)をくゆらせながら、兄達の(たわむ)れに頭を痛めていた。雨が染み込む隊服は冷たい。



一之信(いちのしん)は鬼の首の上に座り退屈そうにしていた。


「そろそろ、だと思うのだがなぁ」


そこには先ほどまで鬼、だった物があちらこちらに散らばり、濃い煙を出しながら蒸発していた。


闇の中で先ほどまでいた鬼と瓜二つの岩山のような鬼が一之信を取り囲み(うごめ)いている。


一之信は退屈そうに一体ずつ座ったまま槍を振るい、刻んでいく。そして動かない発煙体が地面に増えていく。瘴気もますます濃くなる。辺りは霧に包まれたようだ。


もしも普通の人間がここに放り込まれたら……人間のままではいられないだろう。そこで平然と息をする一之信はやはり人間ではないのだ。一之信は鬼達を片手で相手にしながら想鬼に念思を飛ばす。



「想鬼兄様、よろしいですか」

『なんだい一之信』

「起こして殺しても?」

『…………何故、そうする必要が』

「出過ぎた事を申しますが回りくどく思います。こんな風に少しずつ削るだけではなく、直接落とした方が双方の消耗も少ないかと」

『しかしだな……』

「想鬼兄様、私を信じて下さい」

『…………被害が広がる』

「何を仰いますか!」と一之信は一辺の曇りもなく笑う。


「私は兄様方と始真を信じております!」


その時の一凪で山は俄に静まる。最後の鬼が土の上に伏したのだ。


浴びた血痕から瘴気が立ち上ることに、なんの興味も持たない赤髪のこの男は、燃えているように見えた。


白木派六代目白木一之信は、野望に燃える男であるのだ。

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