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ききとして舞え  作者: 曖昧簡素
序章
5/9

記録①『大悪鬼』


始真(しま)は上空で体を固定し、ライフル銃を用いて細かい敵を一体ずつ撃ち抜きながら(案外楽な仕事だな……)と感じていた。


数自体は多いものの、急所を射貫(いぬ)かれた雑魚達は一発で済む、何より一之信が大人しいのである。


「……はあ」


面倒くさい。


別に目覚めるのを待たなくとも、そのまま殺してしまえば良いのに――――。


一方、一之信(いちのしん)はというと暗闇の中、両手に槍を持ち、耳を澄ませていた。


寝息が聴こえる。

化け物の規則正しい呼吸が、ずぅ、ずぅと聴こえてくる。


地の底から(かす)かに響く空気の摩擦(まさつ)を頼りに辿り着いたのは古ぼけた(ほこら)だった。


ここから邪気(じゃき)が流れているらしい。この祠は神を祀っているのではなく、邪悪を封印していたのである。


時が経ち、人間は悲劇を忘れ、信じることを止め、封印がゆるくなってしまった。


――――――まるでかつてのあの方のようだ。


一之信は独りごちる。

いや、あの方をこんなモノと比べる事は不敬(ふけい)にあたるか。と考え直し、槍を構えた。


()()()()()()()()()()()()()


祠は音も立てず瓦解(がかい)した。


一之信の純粋な霊力が祠を砕いたのである。


地響きが鳴る。山が揺れ始め、空には暗雲が立ちこめ始める。月明かりが隠れ、邪気がますます濃くなる。


空が低く喉を鳴らし、稲妻(いなずま)が黒い雲を駆ける。

雨が降り始めた。


「……短気は損気とはよく言ったものだ」


参った参った、と眉を八の字にして笑う一之信は穏やかなものだった。


上空にいる始真がぽつりと漏らす。


「……楽な訳ねぇか」


前髪から雫が滴る。

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