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君の涙が目に沁みる  作者: 上ノ森 瞬
前編 君の笑顔で目を奪われる
3/13

03

 津滝 弾は学校である意味目立っていた。

 学校の女子たちは陰で彼を残念系イケメンと呼んでいた。

 その理由は至極単純であった。


 彼は基本的に喋らない。


 クールだったり、シャイなんだと思われ、かっこいいという理由で、入学当初は学年問わず女子から何度も告白されていたが、ごめんの3文字しか言葉を発しないため、よくわからない人だと、だんだんと敬遠されるようになっていった。

 今では、学校の中で彼と会話をする人間は、葉賀 文一という中学時代の同級生だけになってしまっていた。


 彼は、基本的に授業中は寝ていて、昼休みに文一が起こして、食堂でご飯を食べて、昼からの授業でまた寝て、放課後になったら帰るの繰り返しであった。


 しかし、運動こそ高校生男子の平均を下回ってはいたが、成績はいつも学年トップだったため、教師も彼の授業態度には何も言えなかったのだった。


 逆に文一はいろんな人と良く話す明るい性格でクラスの男女から人気があり、さらには生徒会役員でもあったため、彼とのあまりの違いに、一部の同級生はなぜあんなやつに構うんだと聞いたりもしたが、文一はいつも、

「あいつにもいろいろあるんだ。あいつ本当にいいやつなんだぞ」

と返すだけだった。


 そんな彼にも意外な一面があった。


 あるとき、ホームルームの時間に委員会活動の立候補者を決めることになった。

 事前に担任の先生がこの時間に決めると言っていたこともあったのか、彼はその時間だけはきちんと起きていた。


 そして、まずは学級委員を決めて、その後学級委員の司会で他の委員会の立候補者を決めた。

 その途中で、図書委員を決める番になったとき、彼はクラスのどこにいても認識できるぐらいに高く手をあげた。


 普段、寝ていて喋りもしない彼がその時だけはクラスの行事に参加したため、他にも手をあげていた生徒はいたが彼の迫力に圧倒されて、手をおろしてしまい、図書委員は彼に決まった。


 さらに、担当する時間を決めるために各クラスから選出された生徒が集まって話し合う図書委員会の最初の活動の時には、普段何も喋らない彼が、

「朝の当番は毎日やるので、放課後は割り当てないで欲しい」

と発言したのであった。

 彼に何も言えない雰囲気があったのは確かだったが、それ以上に朝早く起きたくない生徒が多かったので、その意見はすぐに受け入れられ、彼は毎日朝の当番を行うことになった。


 それから、彼は毎日、授業の始まる一時間前には図書室にいた。


 彼がなぜ図書委員をやろうと思ったのか?

 彼は本当に喋るのが嫌いなんだろうか?

 彼に何かあったのだろうか?


 そんなことは誰も考えようとはしなかった。

 考えるだけ時間の無駄だと思ったのかもしれない。


 ただ、一人を除いては・・・

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