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君の涙が目に沁みる  作者: 上ノ森 瞬
前編 君の笑顔で目を奪われる
2/13

02

 庭崎にわさき 唯加ゆいかについて聞かれると、必ず天使のような人間という回答がかえってくるほど、彼女は優しさに満ち溢れていた。


 背は低く、髪は茶髪で肩より少し長くゆるいウェーブがかかっている。


 普段は大人しいし、普通にしている分にはあまり目立つタイプでもない。


 しかし、彼女は常にクラスの中心にいるような存在だった。

 平和主義で誰に対しても優しく、純粋でクラスの誰からも愛されていた。

 だから、彼女の周りには常に人がいた。

 さっきの授業のノートを見せて欲しいというお願いや放課後遊びに行こうという誘い、恋の相談に乗って欲しいなど、様々な人から話しかけられていた。


 もちろん、顔の可愛さもあり、男子からの人気も学年のTOP3に入るほどの人気ぶりで、告白も毎週のように受けていた。


 でも、彼女は誰とも付き合おうとはしなかった。

 基本的にNOと言わない彼女ではあったが、それでも告白だけは全てきちんと断っていた。


 クラスメートはそれだけはとても不思議に思っていて、彼女に直接理由を聞いた人もいたが、なぜかその理由だけは誰にも言わなかったのだ。

 だから、いつのまにかクラスメートの間では、彼女は恋愛には興味がないという結論になってしまっていた。


 それから、彼女にはもう一つ天使のような人間と言われる理由があった。


 彼女の朝は早い。


 毎日、授業が始まる1時間前には学校に着いている。

 園芸部である彼女は毎朝ジャージで登校し、水やりや雑草抜き、肥料の調整など様々なことを行なっている。


 放課後は様々な予定が入り朝しかできないので、朝早く学校へ来ている。


 ちなみに園芸部には彼女一人しかいない。

 下心を持った男子でさえも園芸部には入らなかった。

 結局、好きな人と同じ部活に入るのはフィクションの中だけの世界であって、現実は自分の興味がある部活に入るものだ。


 女子でさえもたまたまなのかはわからないが、彼女以外だれも園芸に興味を示さなかった。


 顧問の先生も彼女なら大丈夫だろうと全てを任せていた。

 人数的にも一人の部に専門の顧問をつけるわけにもいかないので、別の部の掛け持ちで顧問をしていたということもあり、悪い言い方をすれば、完全に放置されていた。


 だから、彼女は土日でも水やりをしに学校に通っていたのであった。


 彼女は本当に今の状況を良しとしていたのだろうか?

 はたから見ればいいように使われていると見えなくもない。


 みんな彼女に甘えていると言われてもおかしくない状況ではあったが、誰も疑問を持たず、彼女が何を考えているのかを考えることすらもしていないようだった。

 彼女なら大丈夫というのがみんなの共通認識だ。


 ただ、一人を除いては・・・

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