佐々宮さんの診察事情
どうも。皆さん。
幸せなんて言葉と縁遠い佐々宮です。
職業は色々とこなして来たので資格は沢山持っています。
今は医者です。街の小さい。少し古ぼけて消毒の匂いが鼻を擽る感じの。
プロフィールでも書いておきましょうか。
2002年8月24日産まれ/32歳/目付悪/趣味は鋭意捜索中/未婚/非交際中/髪は茶/猫背/体格細め/体重軽め/フルネーム、佐々宮薫。
つまり今は2034年の11月だ。
こんな所でしょうか。そして、今私は。
何故か此の明日葉診療所で大人気となっております―――
「さざみやくーん、ちょっと良いかい?」
「はい?どうしましたか...あー。」
「分かった?あの子、また来てるから宜しくね~」
「あ、ちょっと...」
この光景は昨日もあった気がする。いつもアイツが来るとこうだ。
「さっざみーやさーんっ♪遊んでくださいよー!!」
外に出て直ぐ突進してくる影があった。そして俺にぶつかる寸前で――吐血。
「ごっはぁ!」
「急な運動は禁止と何度言ったら分かるんだこの阿呆。」
「そんな事言われましても~...やっとですよ!やっとの思いで一日の勉学を終えてこの寂れた診療所まで来たというのに...!!」
「佐々宮さんはその思いを無碍にするんですかぁ!?」
「おう。御前のことなら喜んで無碍にするぞ。」
「非道いッ!?」
この阿呆は澄川。名前とは正反対の!騒がしくて!鬱陶しい様な!.....
でも―――基本人からは好かれる奴だ。
「ったく。そんなだから何時まで経っても此処通いなんだろ?」
「いやー、なんだかんだ言っても居心地最高なんですよねぇ...」
「こんなに古ぼけてるのに、良い場所って...本当に良い場所なんだとは思いません?」
「...まあ、そうだな。俺が働いてるところでもあるし。そう言われて悪い気はしねぇよ。」
「にっひー。佐々宮さんも居ますしね!」
「はいはい。で、今日は如何だったんだ、その励んできたっていう勉学の方は。」
と。その話題に入ると少し暗い表情になった――が、次の瞬間にはいつもの笑顔だった。
「もっちろん!テストも有りましたけどぉ、全部埋めてやりましたよ!」
「...。そっか。それなら良かった。」
その一瞬を見逃す俺じゃ無いけれど...此れに関してはちょっとデリケートだからなんとも言わないことにした。
「それにしても~。私達が来てからこの診療所も変わりましたよねー...」
「...そうだな。でも俺は良い方向への変化だと思ってる。」
「...あー。御前とも、知り合えたしな。」
「~~~~~!?デレた!佐々宮さんがデレた!!デレたぞぉぉおおおおおお!!!」
「!?う、うっさいわ!はいはい。良いから今日の定期健診...」
「はいっ!分かってますよ!!」
定期健診とは。字面の通り定期的に行う健康診断だ。
何故毎日かというと―――まあ其れは追々。
先ずはさっきの澄川の「私達が来てから云々」と、俺の「基本好かれる奴だ」について言及しよう。
端的に言うと澄川八千流は人間ではない。
というよりも。今の日本―――いや、世界は、そういうモノとの境界が曖昧になっているのだ。
事の発端は2024年。ありえないもの――いや、ありえないと思われていたものがぽつぽつと現れ始めた。
学校の七不思議は実在の恐怖となり、アメリカではスレンダーマンなどで実際に死者も出たそうだ。
しかし――2030年、意思の疎通を試みた学者が居た。勿論、比較的安全そうな怪異に対して。
選ばれたのは、「人魚」。彼女らは、其の肉を喰らおうとしない限りは完全に人畜無害であったためだ。
それどころか、某人魚映画などの影響で好感度の方が高いのだ。
すると選ばれた人魚―――ビスケシアスの口からは、此方も予想だにしなかった返答が帰ってきたのだ。
「...え?貴方たちって人間だったんですか?」
こんな返答が帰ってくるとは思いもしなかった学者連中は―――どういうことかと語調を荒げて問い詰めた。
「え、いや、だってその、ココが人間界だとしたら――何で私達がココにいるか分かりませんもん。」
生放送されていた其の対話は、衝撃の形で幕を閉じた。
曰く、人間は何故彼らが現れたのか分からない。
曰く、怪異は何故ココに出現した―――いや、出現できたのか分からない。
双方、二進も三進も行かなくなり...対話は終了した。
結果。良く分からないものでも受け入れる「柔軟派(受け入れ)」
そして――前述のスレンダーマン被害などの遺族、また、影響を受けた人たちからなる。
怪異を唾棄すべきものだと切り捨てる「迫害派(ヘイト、いじめなど)」
に、分かれてしまった。
そして、前述の人魚などは良かったのだが...
目の前の少女。澄川八千流は、所謂インプなのだ。
闇の妖精。そう聞いて良い印象を抱く人はそうそう居ないだろう。
つまり。学校では理解派の友達に守られ、親しく接してもらい。
ヘイト側のクs...おっと、無理解な奴らの陰湿な攻撃を受ける。
そんな毎日なのだ。
「...はぁ。」
「?」
「如何しました?佐々宮さん。」
「いや、何でも無いよ。」
皆に理解しろとは言わないが...話を聞いたり少し受け入れたり、良く接してみてから関わって欲しいものだ。
「じゃあ、腕、出せ。」
「はーい。」
...少し色白な以外は何も人間と変わらないのに。
面白半分で騒ぎ立てたりいじめをしたりするクズ共も居るせいで一向にヘイトは良くならない。
「ほい。終わったぞ。」
注射は、長く太陽に接していなかったインプが、日の光の下に出ても大丈夫に成る薬だ。
「次、腹出せ。」
「いやん、エッチな佐々宮さん♪」
「うっさい、早く出せ。」
「はいー。」
そして...いじめの傷のチェック。確かに明るく振舞っているし、肉体的ダメージには強いのが怪異だが。
それでも...それでも、精神的なダメージと傷跡は残ってしまう。
「良し、問題無いな。良いぞ。」
「はーいっ」
傷は無かったし、きれいな肌だ。
良かった。心底そう思う。
「八千流。」
「んー?何ですか、佐々宮さん!愛の告白ですか!?」
「違うわ阿呆。...良い友達に恵まれたな。」
「――――はいっ!とっても!」
「今度紹介してくれ。俺からもお礼良いたいから、さ。」
「はい、分かりました!。」
此れで定期健診は終わり。でも。
「さてそれじゃあ佐々宮さんの今日の仕事は終わりですね!!」
「うっ。ま、まぁそうだが...」
「じゃあじゃあ、佐々宮さんっ!」
「遊びに、行きましょう♪」
ということで何時も俺達は遊んでいる。
今日は映画を見た。なんか「サバイバルサスペンスアクション恋愛ホラー」とかいう良く分からないジャンルだった。
タイトルは、「百年の恋は一瞬で冷める?」だった。
「面白かったですねぇ!佐々宮さん♪」
「そうだねぇ。サスペンスホラーの要素はすごく良かった。」
「私はやっぱりサバイバル恋愛アクションの部分ですね!!」
「まさかサバイバルアクションがああいう意味だったとは...俺も驚いたわ。」
「まあ佐々宮さんへの恋愛は私が勝ち取りますけどね!!!!」
「ははっ...そうなると良いな」
「むー、何ですか其の含みのある言い方はぁ!!」
なんて。モッシュバーガーでハンバーガーを食べたり。
そんな楽しい日々を、俺達は過ごしています。
「にしても。佐々宮さんって包容力高いですよねぇ!!」
「む、どういうことだ?」
「いやほら、背ぇ高いですしー、ふかふかですしすべすべですし!!」
ちなみに皆、この話の題材、知らなかっただろ?
「胸大きいし...美人ですし!!!!!」
「...ふっ、澄川も可愛いじゃん。」
「あう、て、照れますよ?///」
「いいさ、存分に照れな。」
「~~~~~~!!ああ~もう!佐々宮さん!大っ好きです!!」
「はいはい。...私もだよ、八千流。」
「!!は、初めて佐々宮さんが私って言ったぁ!!しかも。え、え?両想い!?」
「ふふっ...面白ぇなぁ、八千流は。」
「~~~~もう!冗談言ってると怒り...」
「俺も好きなのは、本当だぜ。八千流。」
「そ、それってつまり...」
「ああ、多分御前が思ってる通りの意味だ。...此れからまた、宜しくな。」
「...は、はいっ!不束者ですがぁ...ど、どうぞ宜しくオネガイシマス...」
ああ、私は今、紛う事無く。世界で一番幸せだ――――――!!
そう、此れは。私と彼女の、百合百合な物語。
~~~~~~~~~~~~~スーパーアトガキタイム~~~~~~~~~~~~~
ドーモ、ミナ=サン。ベレトです。
というわけで此れは私ベレトが百合大好き人間であるのを表明するための第一作なのでした。
いやー、良いですよね。百合。コミック百合姫購読してますし。
どうでもいいけど―――いや、どうでも良くないけど月間化するらしいので楽しみで楽しみで...
そんな訳で。初挑戦の恋愛小説(?)は、百合小説でした。
皆も百合の良さに触れてみよう。